21_可愛い子には、旅をさせろ
『ん?』俺を撫でていたアルベルタの手が止まる。
『どうしたんだろう?あっ!寝てる。』俺が膝の上で後ろを振り返ると、アルベルタが瞼を閉じて、スヤスヤと寝息をたてていた。
アルベルタはそのまま、隣に座っているエルシアに体をあずける。
「アルベルタ様、眠ってしまわれたのですね。」エルシアが自分の体に寄りかかったアルベルタを見つめて、優しく微笑む。
『ん?』エルシアが急に無表情になり、俺がサクラを見つめると、なぜか嬉しそうにニヤニヤしている。
「フレヤ!」エルシアがフレヤに声をかける。
「はい、エルシア様、なんでございますか?」アルベルタの寝顔を見つめていた、フレヤがエルシアに確認する。
「席を代わりなさい。」エルシアがフレヤに声をかけると、嬉しそうだったサクラの表情が無表情になる。
「わかりましたが…」フレヤがサクラを見つめる。
「エルシア様がおっしゃってるんだから、代わってさしあげなさい。」サクラがフレヤに答える。
フレヤは嬉しそうに立ち上がると、エルシアの傍に来る。
「アルベルタ様を起こさないように。」エルシアがフレヤに囁くように声をかける。
「はい、わかっております。」フレヤも囁くようにエルシアに答えると、アルベルタとエルシアの間に手を差し込む。
エルシアが静かに立ち上がると、フレヤが代わってエルシアの座っていたところに静かに座る。
「レーニャは、こっちに来る?」アルベルタの膝の上の俺を見つめて、エルシアが囁くように声をかける。
『あっ!そういうこと!行きます~!』俺は「ニャ~!」とエルシアに声をかける。
エルシアは口に人差し指をあてると、優しく微笑んで俺をアルベルタの膝から抱き上げるて、フレヤが座っていた場所に座る。
フレヤはアルベルタの体をゆっくりと寝かせて、頭を自分の膝の上に載せると、優しくアルベルタの右手を左手で優しく握る。
「エルシア様、なぜフレヤと席を代わられたんですか?」サクラがエルシアに質問をする。
「えっ!それは…、アルベルタ様は、フレヤが大好きでしょう。」エルシアがサクラに答える。
サクラはしばらく、エルシアを見つめていたが、溜息をついて前を向く。
フレヤが優しい表情でアルベルタの寝顔を見つめていた。
「あっ!そういえば、良いのですか?エルシア様。」サクラがベンチシートの隣に座っているエルシアに声をかける。
「えっ!なに?席代わったこと?」エルシアがキョトンとして、サクラに確認する。
「そうではありません。アルベルタ様のエスト国へのご訪問を、殿下にお願いすることです。」サクラがエルシアに説明をする。
「あぁ~、お願いするとは、言ってないわよ。ご相談すると、言ったのよ。」エルシアがサクラに説明をする。
「いや…、そんな言い分が、アルベルタ様に通じますか?」サクラがエルシアに質問をする。
「うん、まぁ、頼むだけ、頼んでみるということで、後は殿下次第でしょ。」エルシアが答えると、サクラは難しそうな表情で俯く。
「サクラ、なにを心配しているの?大丈夫よ、直ぐには、お許しは出ないわ。」エルシアがサクラに声をかける。
「そうでしょうか…、あの殿下ですよ。」サクラがエルシアを心配そうに見つめる。
エルシアはサクラを見つめていたが、視線を外して前を向くと、フレヤの膝の上に頭を載せて、スヤスヤと眠るアルベルタを見つめる。
『アルベルタ、よく眠ってるな。可愛いなぁ~』俺はアルベルタの寝顔見て、ホッコリする。
「可愛い子には、旅をさせろか…」エルシアが呟くように声を上げる。
「殿下がおっしゃりそうでは、ありませんか?」サクラがエルシアに声をかける。
「まぁ、確かに言いそうだけど、でも帝都に戻ったら、1年以上は殿下は帝都から離れられないわ。アルベルタ様も、当然…」エルシアが、サクラを見つめたまま固まる。
『ん?どうしたんだ、2人とも…』エルシアとサクラは、無表情のまま見つめ合っている。
「まさか…」エルシアがサクラを見つめたまま、声を漏らす。
「はい、殿下のことです、それじゃ、よろしく頼む!とか、おっしゃりませんかね?」サクラがエルシアを見つめて、声をかける。
「ありそうね…」エルシアはサクラから視線を外して、またスヤスヤ眠るアルベルタの顔を見つめる。
「まぁ、そのときは、そのときよ…。アルベルタ様のお供を致しましょう。」エルシアが溜息をつきながら、声を上げる。
「エルシア様、アルベルタ様をエスト国にお連れすんですか?」フレヤがエルシアに質問をする。
「うん、殿下にお願いされたらね。」エルシアが微笑んで、フレヤに答える。
『おぉ~、次はエスト国に行くのか…、どんなところなんだろう。』俺はワクワクする。
「あっ!エルシア様、森を抜けましたよ!」フレヤが馬車の窓から外を見つめて、声を上げる。
「もう直ぐ、カーマの町ね。」エルシアも馬車の窓から外を見つめて、声を上げる。




