02_馬のは大きくて長い
「お父様、知っておられますか?」アルベルタが殿下に声をかける。
「ん!なんだ、アルベルタ?」殿下がアルベルタに確認する。
「馬の後ろに立っては、いけないのですよ。」アルベルタが殿下に答える。
「ほぉ~、馬の後ろには立っては、いけないのか。それは、どうしてなのだ?」殿下がアルベルタに質問をする。
「はい、馬は後ろに気配を感じると、後足でそいつを蹴るんです。」アルベルタが殿下に答える。
『あぁ~、そういえば、そんな話聞いたことがあるなぁ~、えっ!どこで?…』俺はお椀の中の肉を咀嚼しながら、心の中で呟く。
俺たちは囲炉裏を囲んで、朝食を食べている。
「サクラ、コタロウとコゲンタは?」エルシアがサクラに質問をする。
「はい、もう既に街道の方の見回りに行ってます。」サクラがエルシアに答える。
「朝から、見回りとは大変だなぁ~」殿下が声を上げる。
「殿下、お気遣いありがとうございます。ですが、もう毎日のことでございますから、主人も息子も苦には思っておりません。」フジが殿下に頭を下げて、声をかける。
「それより、殿下、もう一杯いかがですか?」フジが殿下に声をかける。
「おぅ、すまぬ。もう一杯いただこう。」殿下が空になったお椀をフジに渡す。
「しかし、このウドンというものは、スルスルと体の中に入るな。それにこの鍋は、昨夜食べたものと一緒か?」殿下がフジに声をかける。
「これは、昨夜の残り物をお出しして、大変申し訳ございません。」フジが殿下に頭を下げる。
「フジ、あなたが謝ることではありません。」エルシアがフジに声をかける。
「殿下、今朝これを食べたいとフジにお願いしたのは、私でございます。お気に触られたのであれば、私が謝罪いたします。」エルシアが殿下に頭を下げる。
「いやいや、そんなことは、気にしておらん。それより、昨晩食べた時より、スープが美味しくなっている。これは、なにか魔法でも使ったのか?」殿下が嬉しそうに声を上げる。
「殿下、お鍋というものは、次の日の朝が美味しいのです。」エルシアが殿下に声をかける。
「そういうものなのか、これはまた1つ勉強になったな、アルベルタ。」殿下がアルベルタに声をかける。
「はい、勉強になりました。」アルベルタが殿下に嬉しそうに答える。
『そうそう、鍋とかカレーはね、次の日の朝が美味しんだよなぁ~。えっ!カレー?…、まぁ、いいか。』俺は心の中で呟く、
「そういえば、アルベルタ、さっきの馬の話は、誰に教わったのだ。」殿下がアルベルタに質問をする。
「フレヤに教わりました。」アルベルタが元気に答える。
「そうかそうか、フレヤはアルベルタにいろいろなことを教えてくれるな。フレヤ、ありがとう。」殿下がフレヤに声をかける。
「い、いえ、め、滅相もございません。」フレヤが顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに答える。
「そうだ、お父様、馬のは大きくて長いんですよ。」アルベルタが殿下に声をかける。
「ほぁ~、なにが大きくて長いんだ?」殿下がアルベルタに確認する。
『ほぉ~、なんだろう?』俺が顔を上げて横を見ると、エルシアとサクラが体を固くして、表情も硬くなっている。
「それはねぇ~」アルベルタが可愛く声を上げる。
「ア、アルベルタ様、そのお話は、後でお話されては、いかがですか?」エルシアが硬い表情で、アルベルタに声をかける。
『ん?どうしたんだ、2人とも?』なぜかサクラは絶望的な表情をしている。
「どうしてなのだ、エルシア?」アルベルタが、不思議そうにエルシアを見つめて声をかける。
「はっ!えっ…と、他意はございませんが、あの…、その…」エルシアが視線を泳がせながら、しどろもどろに答える。
『あん?馬の大きくて長いもの…、あれ?殿下笑ってる。』殿下が口を塞いで、俯いて肩を震わせている。
「エルシアは、答えを知っておるのか?」アルベルタがエルシアに確認する。
「い、いえ、存じておりませんが…」エルシアがアは相変わらず、しどろもどろに答える。
「ならば、エルシアも聞くが良い。」アルベルタが得意げな感じで、声を上げる。
「お父様、あれ?お父様、なんで笑っていらっしゃるんですか?」アルベルタが殿下に声をかける。
「すまんすまん、ちょっと楽しいことを思い出してな。それで、アルベルタ、答えはなんなのだ?」殿下がアルベルタに確認する。
「はい、それは目です!近くで見ると、すごく大きくて、それからまつ毛が、すっごく長いんですよ。」アルベルタが身振り手振りで、殿下に答える。
「そうか、馬の目はそんなに大きいのか。」殿下がアルベルタに嬉しそうに声をかける。
「はい、目が大きいのは、フレヤに教わりましたが、まつ毛が長いのは、私が発見したんですよ~」アルベルタが得意気に答える。
『あっ!魂抜けちゃった。』エルシアとサクラが呆けた表情で、アルベルタを見つめていた。




