表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付いたら猫でした…  作者: 小根畑 昌平
第5章 5日目
202/896

40_街道の守り人


「しかし、この肉はなんなのだ。豚肉のようでもあるのだが、しつこくない。それにこのスープ、黒いのに肉の油が溶けて、とても美味い。」殿下がお椀の中の汁を飲みながら、声を上げる。

「はい、この肉は猪でございます。」コタロウが説明をする。

「猪か、ほう~、初めて食べたぞ。」殿下が嬉しそうな声を上げる。


『へぇ~、俺の食べてるこれも、猪の肉なのかな~』俺はお椀の中の肉を咀嚼しながら、心の中で呟く。

「そういえば、お前たちは、なぜこんな山奥に暮らしておるのだ?さきほどハンゾウから、聞いたのだが、ここにはお前たち家族しか住んでいないそうでは無いか。」殿下が質問をするとコタロウが困った表情をする。

「それに関しては、私からご説明させていただきます。」エルシアが声を上げる。


「なんだ、理由があるのか?」殿下がエルシアに声をかける。

「はい、ここは帝国とつながる唯一の街道です。今から150年ほど前になりますが、この峠に山賊が住み着きました。山賊は私とシビラキ、カバカリヤの町の兵士団によって、壊滅させましたが…、また山賊に住み着かれては、困りますので、コタロウの一族に、この街道を守って貰っているのです。」エルシアが説明をする。


「コタロウの一族には、このような場所での生活を強いてしまって、すまないと思っている。」エルシアがコタロウに声をかける。

「と、とんでもございません。私は、エルシア様から命を受けた先祖を誇りに思っております。」コタロウが声を上げると、フジもスモモもコゲンタもエルシアを見つめて、力強く頷く。


「それに、4年一度の帝国からの行き帰りの際に、エルシア様が必ずここを訪れていただけることで、我々一族、これほどの誉はございません。」コタロウが声を上げると、フジもスモモもコゲンタもエルシアを見つめて、微笑んで頷く。

「コタロウ、フジ、スモモ、コゲンタ、ありがとう。」エルシアが4人を微笑んで見つめる。

『うわ~、女神様だぁ…』エルシアの笑顔には清楚感と透明感が漂っていて、俺はボーっとエルシアを見つめる。


「アルベルタ、どうしたのだ?食べるのが、止まっているぞ。」殿下がアルベルタに声をかけたので、俺が振り返るとアルベルタが口を開けて、エルシアをボーっと見つめていた。

「あっ!お父様、エルシアが、今、凄く綺麗に見えて…」アルベルタが殿下に説明する。

「こらこら、エルシアはいつでも綺麗だぞ。」殿下がアルベルタに声をかける。


「殿下、おやめください。お戯れが過ぎますよ。」エルシアが頬を赤くして、殿下に声をかける。

「ううん、エルシアは綺麗だ。」アルベルタが嬉しそうに声を上げる。

「アルベルタ様まで、そのようなことをおっしゃらないでください。」エルシアはアルベルタを優しく諫める。

「アハハハ、エルシア、アルベルタは正直に申しておるのだぞ。」殿下が笑いながら声をかけると、エルシアが困った表情をする。


「そうか、先祖代々、この街道を守ってきたのだな。街道の守り人か…、コゲンタと申したか、いくつになる?」殿下がコゲンタに声をかける。

「あっ!はい、10になります。」コゲンタが驚きながら、殿下に答える。

「ほぉ~、ブリッツと同い年か…、将来はコタロウの後を継いで、この街道の守り人となるのか?」殿下がコゲンタに優しい声で質問をする。


「は、はい、そのつもりであります。」コゲンタが元気よく殿下に答える。

「えっ!あんた、前に兵士団に入りたいって、言ってなかった。」スモモがコゲンタに声をかける。

「な、な~に~、コゲンタ、その話は本当か?」コタロウがコゲンタに声をかける。


「い、いや…、ねぇちゃん、余計なこと言うなよ!」コゲンタがスモモに声をかける。

「コゲンタ、ちゃんと聞かせなさい。」コタロウが怒った顔で、声をかけるとコゲンタが困った表情となる。

「あなた、スモモ、コゲンタ、殿下の御前ですよ、言葉を慎みなさい。」フジが3人を窘める。


「あっ!こ、これは、お見苦しいところ、お見せしてしまって、誠に申し上げません。」4人が後ろに下がって、殿下に向かって平伏する。

「アハハハ、よいよい。それより、コゲンタ、私に先ほど、この街道の守り人となると、答えたのは嘘なのか?」殿下がコゲンタに質問をする。

「いえ、嘘ではありません。将来は、お父さんの後を継いで、街道の守り人となります。」コゲンタは真っ直ぐに殿下を見つめて、元気に答える。


「そうか、ならば私も一安心だ。コタロウ、良い子息を持ったな。」殿下が微笑んで、コタロウに声をかける。

「で、殿下…、ありがたきお言葉、感無量でございます。」コタロウが涙を流しながら、殿下に向かって平伏する。

「こらこら、コタロウ、面を上げてくれ…」殿下が慌てて、コタロウに優しい声をかける。


『エルシアもそうだけど、殿下も人の心を鷲掴みにするな~』俺は殿下を見つめて、心の中で呟く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ