28_窓の外は動物がいっぱい
エルシアに抱かれながら、馬車を下りて外に出ると、アルベルタとハンゾウが立っていた。
「レーニャ!」アルベルタがエルシアの腕の中の俺を見つめて、声を上げる。
『アルベルタ~』俺もアルベルタに「ニャ~」と声をかける。
「申し訳ございません、エルシア様。」ハンゾウがエルシアに深々と頭を下げる。
「気にすることは、なにもないわよ。それより、ハンゾウ、狭い馬車だけどゆっくり休んでちょうだい。」エルシアが優しくハンゾウに声をかける。
「ありがとうございます。」ハンゾウはエルシアに頭を下げると、エルシアの馬車に乗り込んだ。
「さぁ、アルベルタ様、私たちも行きましょう。」エルシアが声をかけると、アルベルタが嬉しそうに前を歩き出す。
殿下の馬車の扉の前にサクラが立っていて、アルベルタが近づくと馬車の扉を開けた。
「お父様~、エルシアとレーニャを連れて参りました~」アルベルタが馬車の中に声をかけて、馬車に乗り込む。
「そうだ、フレヤ。ハンゾウがゆっくり休めるように、丁寧な運転をお願いね。」エルシアが御者席に座っているフレヤに声をかける。
「エルシア様、了解です!」フレヤが微笑んで答える。
「レーニャ、殿下の馬車の中でも、おとなしくしてるんだぞ!」フレヤがエルシアの腕の中の俺を見つめて、声をかける。
『がってんでぇ~』俺はフレヤに「ニャ~」と答える。
『あれ?この馬、ソウリュウか?』俺はエルシアの馬車を引いてる馬に「ニャー?」と声をかける。
「ブルルン!」と馬が返事を返した。
「レーニャ、右がソウリュウで左がウンリュウだ。」フレヤが2頭並んだ馬を指して説明する。
『ウンリュウって名前か、よろしくな、ウンリュウ!』俺はソウリュウの隣の馬に「ニャー!」と声をかける。
ウンリュウは優しい目で俺を見つめた。
「サクラ、お昼はどうするの?」エルシアが先に進んで、殿下の馬車の前に立っているサクラに声をかける。
「エルシア様は、なにかお食べになりたいものは、ございますか?」サクラがエルシアに質問をする。
「う~ん、サクラにお任せするわ。」エルシアが答える。
「かしこまりました。殿下とアルベルタ様もいらっしゃいますから、シビラキの町に着くまでに考えておきます。」サクラが答えると、エルシアが軽く頷いた。
エルシアが俺を抱いて殿下の馬車に乗り込むと、サクラが殿下の馬車の扉を閉めた。
『すげぇ~、ひろぉ~い。』俺はエルシアの腕の中で、馬車の中をキョロキョロと見渡す。
「エルシア、座ってくれ。」馬車の一番後ろの大きなベンチシートに、座った殿下が前のベンチシートを指してエルシアに声をかける。
「それでは、お邪魔いたします。」エルシアは声をかけると、殿下の前のベンチシートに座る。
「あら?」俺はエルシアの腕の中から肩に載って、ベンチシートの後ろを見る。
『カーテンがしてある…』エルシアが座ったベンチシートの後ろには、カーテンが下がっていて馬車の中を仕切っていた。
「レーニャ、どうしたの?さっきまで、おとなしかったのに?」エルシアが俺に声をかける。
「ハハハ、レーニャはカーテンの向こうが、気になるんじゃないのか?」殿下が声を上げる。
「え~、そうなのレーニャ?」エルシアが俺に声をかける。
『ちょっとだけ、気になる。』俺はエルシアに「ニャー」と声をかける。
「ガコン!」と馬車に振動が伝わる。
『あっ!動き出した。』俺はエルシアの肩から降りるとベンチシートを歩いて、馬車の窓に前足をかけて外を見る。
『ここは、なんだ、牧場かな?』窓の外には、広い緑の草原と策が見えて、牛や羊の群れが見えた。
「レーニャ、あれが昨日食べた、グランデって牛だぞ!」アルベルタが牧場を指して、俺に声をかける。
『おぉ!デカ!』黒くて他の牛よりも、大きな体格の牛が数頭見えた。
『デッケー!牛だなぁ~』俺が「ニャ~」と答えると、アルベルタが俺を見つめて、嬉しそうに微笑む。
「レーニャ、それから、あれが羊で、あっちは牛乳を採る牛なんだよ。」アルベルタが牧場の羊と牛を指して、俺に声をかける。
『羊や牛は知ってるよ。』俺はアルベルタに「ニャー」と答える。
『あっ!馬も走ってる。』馬の群れが、草原を走っている。
「レーニャは、外の世界に興味津々みたいだな。」殿下が声を上げる。
「はい、レーニャは馬車に乗ると、必ずああやって外を見ます。」エルシアが声を上げる。
「レーニャ!あれあれ!」アルベルタが声を上げて、牧場を指す。
『ん?なんだあれ?鳥?ダチョウじゃねぇかよ…』牧場の中にダチョウの群れが見えた。
「レーニャ、あれはシュトラウスだよ。」アルベルタが嬉しそうに俺に声をかける。
『えっ!シュトラウス?…』俺はダチョウの群れとアルベルタを交互に見て、心の中で呟く。




