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気が付いたら猫でした…  作者: 小根畑 昌平
第5章 5日目

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06_久しぶりだな!


『ここは、屋敷の屋根の上か…』俺がエルシアの腕から下を見ると、屋敷の屋根が左右に下に伸びていて、その頂点の幅が10cmも無いところをエルシアが、歩いている。

『なるほど、こんなところから、落ちたら…、やべーじゃ済まなそうだ。』エルシアが俺に、真剣な表情で声をかけた理由に納得する。

『ん?なんだあれ?』屋敷の屋根の上に、小さな小屋が見えてきた。


小屋の扉を開けて、エルシアが中に入るとサクラが部屋の端にしゃがんでいた。

「サクラ、アルベルタ様の様子は、どんな感じ?」エルシアが声を上げる。

「はい、眠っているような感じですかね。」サクラが答える。

「そう、後は私が見るから、サクラはハンゾウたちを手伝いに行って。」エルシアが声をかけると、サクラが立ち上がる。


「それより、エルシア様、お着替えを。」サクラがエルシアに声をかける。

「えっ!なに?」エルシアがキョトンとして、声を上げる。

「ご自分の手を見てください。賊の返り血で、ベトベトですよ。」サクラが呆れた感じで、声をかける。

「あっ!ホントだ。」エルシアが右手を開いて、声を上げる。


「あっ!サクラ、アルベルタ様は?」エルシアがサクラに声をかける。

「ご心配ありません。血が付いたところは、拭きとって、寝間着も新しい物に、お着かえさせていただきました。」サクラが答える。

「ありがとう、サクラ。」エルシアがサクラに声をかける。

『流石です、サクラ様。』俺はサクラの手際の良さに感心する。


「それでは、先ずはレーニャちゃんから、綺麗にしていきましょう。」サクラは声を上げると、しゃがんで木のバケツから布を出して絞る。

「エルシア様、レーニャちゃんを床に置いてもらえますか。」エルシアがサクラの前に俺を下ろす。

「レーニャちゃん、ちょっと冷たいけど、我慢してね。」サクラは声を上げると俺の体を濡れた布で拭いて、その後乾いた布で拭いてくれた。


「レーニャちゃん、綺麗になったわ。」サクラが俺を見て、優しく微笑んで声を上げる。

『ありがとう、サクラ。』俺はサクラに「ニャー」と声をかける。

「さぁ、次はエルシア様の番ですよ。」サクラがエルシアに声をかけて、立ち上がる。

「うん、よろしく頼む。」エルシアがサクラに声をかける。


サクラが手際よく、エルシアの寝間着を脱がすと、いつものようにエルシアがスッポンポンになる。

「体にも血が付いていますね。」サクラが声を上げると、しゃがんで木のバケツの中から、布を出して絞る。

「エルシア様、少々冷たいですが、我慢してください。」サクラが声を上げると、エルシアの顔や体、手に着いた血を優しく布で拭き取って行く。


「キャ!冷たい!」サクラがエルシアのお腹の辺りを拭いているときに、エルシアが声を上げる。

「もう少しですから、我慢してください。」サクラがエルシアに声をかける。

サクラはエルシアの体を今度は、乾いた布で優しく拭いて行く。

俺がエルシアたちから視線を外すと、部屋の端に毛布に包まれたアルベルタがいた。


『アルベルタ…』俺はアルベルタの傍に駆け寄って、毛布の中から出ている顔を覗き込む。

瞼を閉じて、スヤスヤと寝息が聞こえる。

『ごめんな、アルベルタ。怖い思いさせてしまって…』俺はアルベルタの可愛い寝顔を見つめて、胸が締め付けられるような感じを受ける。

『しょうがないだろう、あのとき、お前が魔法を使わなければ、この子は殺されていた。』聞き覚えのある声が聞こえてきた。


『えっ!コイケヤ…』俺が顔を上げると、目の前に小さな赤いフワフワが浮いていた。

『久しぶりだな、レーニャ。なにを、そんなに落ち込んでいる。』コイケヤが気さくに俺に声をかける。

『だって、この子にとっては、トラウマになっちゃうかも知れない…』俺はアルベルタを見つめて、心の中で呟く。


『いいか、レーニャ、人はな脆くて弱い者だが、その脆さや弱さも克服できる強さを持っている。今日、この子が感じた、驚きと恐怖は、お前の言うトラウマになるかも知れない。でもな、それを克服するのは、この子自身だ。レーニャよ、この子を信じろ!この子は、きっと強い子だ。』コイケヤの言葉が、俺の気持ちを和らげる。

『コイケヤ、ありがとう。』俺はコイケヤを見つめて、「ニャー」と声をかける。

『私と話すときは、いちいち鳴くなと言ったはずだぞ。』コイケヤが呆れた声を俺にかける。


「ねぇ、サクラ…、レーニャが…」エルシアの声が聞こえた。

『あっ!やべー!』俺が慌てる。

『なにが、やべーなのだ?』コイケヤが俺に質問をする。


「きっと、アルベルタ様のことを心配しているんですよ。」サクラの声が聞こえた。

「そうね、レーニャはホントに優しい子ね。」エルシアが声を上げる。

『あぁ、良かった…』俺は心の中で呟く。


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