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気が付いたら猫でした…  作者: 小根畑 昌平
第0章 気が付いたら

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16_俺の名前が決まりました


「それより、エルシア様。この子の名前を決めないと。」サクラが声を上げる。

『おぅ、そうだ。俺の名前だ。しかし、俺はなぁ~』俺はニャーとしか鳴くことが出来ない自分に、少し絶望感を感じる。

「そうねぇ~、なんて名前が良いかなぁ~」エルシアは手の中の俺を見つめる。


『なんて、名前になるのかぁ~』俺はドキドキしながらエルシアを見つめる。

「この際、ニャーって名前で良いんじゃないでしょうか。」サクラが提案する。

「却下!」『却下!』俺が即座に思ったことを、エルシアも口にしていた。


「ちょっと待って、今ね頭の中に、浮かんだの…」エルシアが眉間に皺を寄せて声を上げる。

『えっ、ひょっとして、通じた?サトウアキオって言ったらどうしよう…』俺はドキドキしながらエルシアを見つめる。

「うん、決めた。」エルシアがしばらく目を閉じて考えていたが、声を上げる。


『おぅ、サトウアキオか?ってか、スゲーおっさん臭い名前だな…』と俺は自分で言っておきながら、なぜか釈然としないものを感じる。

「この子は、不思議な子だ。それは、今こうして、水を怖がらずお風呂の中で、私を見つめている。」エルシアが俺を見つめて微笑む。

『あぁ、この笑顔をずっと見ていたい。』俺は心の中で呟く。


「レーニャと名付けよう。」エルシアが俺を見つめて声を上げた。

「素敵なお名前です。」サクラが同意する。

『レーニャか…、うん、なんかいい名前だ。』俺はエルシアの温かさを感じてそう思った。


「でも、ニャーにレーが付いた感じですか?」サクラが身も蓋もない声を上げる。

「サクラ、この名前はね小さな天使って、意味があるのよ。」エルシアが諭すような声を上げる。

「小さな、天使ですか。良い名前です、よろしくね、レーニャちゃん。」サクラがエルシアの手の上に乗っている俺に微笑んで声をかける。


『レーニャ、良い名前だ。』俺も心の中で呟く。

「気に入ってくれたかな?」エルシアが不安そうに俺の顔を見つめる。

『気に入ってるぞ、でも、名前までもらって…』俺は嬉しいのかせつないのか、よくわからない感情でいっぱいになる。


「エルシア様、名前を呼んで見たらどうですか?」サクラが提案する。

「サクラ、また私を揶揄うの?」エルシアが少し怒った口調で答える。

「いえいえ、そんなことは考えておりません。この子がきっと名前を気に入ってると思ったからです。」サクラの声は揶揄うような感じには聞こえなかった。


「それでは、改めて、レー」「ニャー!」エルシアが名前を呼んでくれることに緊張して、俺がフライングして鳴いてしまった。

「サークーラー」エルシアの抑揚のない声が響く。

『やっちまったい。』と思ってエルシアの手の上から後ろを振り返ると、サクラが口を押さえて肩を震わせていた。


「す、すみません。そ、その…、ダメ、アハハハハハハハハ!」サクラが大声で笑い出す。

『ほんと、サクラは笑い上戸だな。』俺は心の中で呟く。

視線をエルシアに戻すと、少し残念そうな顔をしている。


『もう一回、呼んで!』俺が「ニャー!」と声をかける。

俺の鳴き声を聞いて、エルシアが俺を見つめる。

「本当にお前は、不思議な子だ。」エルシアは俺を見つめて微笑む。


『あぁ、俺はこの微笑みが、いつまでも消えないでほしい。』と心の中で呟く。

「うん、では気を取り直して、レー」「ニャー!」エルシアが途中まで声を上げたが、サクラが続いて声を上げていた。

なんとも言えない空気が漂う。


「サークーラー」エルシアの抑揚のない声が響く。

「えぇ!なんで、レーニャちゃん、一緒にニャー!って言ってくれないの~」サクラが声を上げる。

『いや、サクラお前エルシアのこと、揶揄いすぎだろう。』と俺はサクラを見つめながらそう思う。


「レーニャはちゃんと、わかっているのです。ねぇ~!」エルシアが俺に声をかけると優しく微笑んだ。

「サクラ。三度目は無いですからね。」エルシアが、少し怒った口調で声を上げる。

「かしこまりました。」サクラはそう言うと静かに口をつぐんだ。


「フー」エルシアが小さく息を吐く。

「レーニャ、良いですか。私が名前を読んだら、返事をするのですよ。」エルシアが少し真剣な目で俺を見つめる。

『てか、よく考えたら、お前らもう俺のこと、もうレーニャって呼んでんじゃん。』と俺は心の中で呟く。


「それでは、改めて。名を与えると言うことは、家族になると言うことだ。私はお前に名を与え、そして家族として迎えよう。」エルシアが真剣な声で俺に話しかける。

『家族…』俺はエルシアを見つめて、心の中で呟く。

「お前の名は、レーニャ。私の家族だ。」エルシアが俺を見つめて声をかける。


『エルシア!』俺は「ニャー!」と答える。

エルシアは優しい微笑みを浮かべると、俺を乗せた手を胸のところに持ってきて、優しく抱きしめてくれた。

『家族として迎えてくれるって。』泣きそうだった、でも涙は出なかった。


ただ、エルシアの温かさに包まれて、これほどの幸福は無いと思った。

そんな幸せの中、気が緩んだのか俺はそのまま気を失った。


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