14_豆が鳩鉄砲
『ごめんなさい、ついつい気になっちゃたから…』俺はアネモスに謝る。
『まぁ、そうよね。あの娘はあなたに、なにも教えないからね。うん、エルシアって娘の両親は、もう亡くなっているわ。』アネモスは俺の顔から離れて、声を上げる。
『えぇ…、死んじゃってるの…』俺は急に悲しい気持ちになる。
『そうね、生きているものは、いつかは死ぬわ。それが、生きとし生けるものの節理だから。』アネモスが淡々とした声を上げる。
『ねぇ、アネモス。死んだものは、また生まれ変わるの?』俺はアネモスに質問をする。
『…』アネモスは答えすに、ジッと俺の顔を見つめる。
『あっ、ごめんなさい…、俺ばっかり質問しちゃって…』俺はアネモスに謝る。
『フフフ、不思議ねぇ~、あなたとお話ししていると、私の方が質問詰めになっちゃうわね。』アネモスが優しく俺に声をかける。
『ごめんなさい…』俺はアネモスに謝る。
『いいわ、レーニャ。死んだものが、生まれかわるかどうかね?』アネモスが優しく俺に声をかける。
『う、うん、アネモスは知ってるの?』俺は不思議とワクワクしながら、アネモスに質問をする。
『レーニャごめんね。その質問の答えは、私にはわからないわ。だって、私死んだことが無いし、生まれかわった実感も無いもの。そういえば、昔坊やが自分は生まれかわりだって、言ってたわねぇ~』アネモスが懐かしむような声を上げる。
『坊や?坊やって、誰?』俺はアネモスに質問をする。
『そうか、坊やって言うのは、あのエルシアって娘の父親よ。』アネモスが俺を見つめて答える。
『…』俺はアネモスの答えを聞いて、言葉を失う。
『どうしたの?レーニャ、豆が鳩鉄砲くらったような顔しちゃって。』アネモスが近づいて、俺の顔を覗き込んで声をかける。
『アネモスそれ、鳩が豆鉄砲だから…、あれ?こんな会話どっかでしたな…』俺はアネモスに答えた後、よくわからない違和感を感じる。
『どうしたの?レーニャ。』アネモスが俺の顔を覗き込んで声をかける。
『なんで、エルシアのとうちゃんが、坊やなの?あっ…』俺はまたアネモスに質問をしていたことに、気が付いて言葉を失う。
『フフフ、いいわよ。私がエルシアの父親に会ったのは、坊やがまだ生まれて半年くらいのときだったわ。目が大きくて、小さくて…、人間の赤ちゃんて、ホントに可愛いわよねぇ~』アネモスが懐かしむように声を上げる。
『赤ちゃんのとき…』俺は心の中で呟く。
『うん、その日はお城の窓が開いていて、私が部屋の中に入ると小さな揺り篭の中で、坊やがお昼寝してたわ。小っちゃくて可愛くて、私坊やの寝顔をずっと見つめていたら、目を開いて私を見つめてね、「妖精さんって…」あっ!…』アネモスが手を口にあてて、俯いて黙り込む。
『どうしたの?アネモス。』俺がアネモスに声をかけると、アネモスは俺の顔をジッと見つめる。
『ねぇ、レーニャ、私のことを妖精さんって呼んでたわよね?』アネモスが俺を見つめたまま、俺に質問をする。
『うん、アネモスは妖精さんじゃないの?』俺はアネモスに確認する。
『…』アネモスは俯いて、また黙り込む。
『ありゃりゃ、どうしちゃたんだろう…』俺はアネモスを見つめて、心の中で呟く。
『う~ん、レーニャ、あなたひょっとして、坊やの生まれかわり?』アネモスは頭をかいて、顔を上げると俺に質問をする。
『えっ!坊やって、エルシアのとうちゃん…』俺が考え込むと、アネモスがジッと俺を見つめる。
『ごめんなさい、じぇんじぇん実感がありません。』俺が答えると、アネモスは少し残念そうな顔をする。
『そうか…。ごめんね、レーニャ、変なこと聞いちゃって…』アネモスは優しく俺に声をかけると、視線を外して寂しそうな表情で遠くを見つめる。
『だって…、俺…生まれたときから、猫の記憶しかないものなぁ…』俺は心の中で呟く。
『ごめん、ごめん、レーニャ、気にしないでよ。それより、私の質問に答えてくれる?』アネモスが俺を見つめて、優しく声をかける。
『うん、なに?』俺はアネモスに返事をする。
『それじゃ~、まずは…、レーニャは人の言葉がわかるのよね?それは誰に教わったの?』アネモスが俺に質問をする。
『教わった?…、教わってはいないけど、初めてエルシアに会ったときから、エルシアの話す言葉はわかったよ。あっ、その後もサクラやフレヤ、あとカゾの村の人とか…、人の言葉って、わかるもんじゃないの?』俺がアネモスに答える。
『あなた、人に飼われたことは、ないわよね?』アネモスが俺に質問をする。
『うん、エルシアに会うまでは、かぁちゃんとヒャッハーとデンチとナノしかいなかったよ。』俺がアネモスに答える。
『そのヒャッハーとデンチとナノってなに?』アネモスが怪訝な表情で俺に質問をする。
『俺の兄弟だよ!…、かぁちゃんと一緒に死んじゃったけど…』俺はアネモスに答えた後、ちょっと悲しくなった。




