05_レーニャ、ちょっと照れる。
「フレヤ、よく聞きなさい。その位置では、食事中に私がレーニャちゃんを見ることができません。」サクラが無表情でフレヤに声をかける。
「だって、そっち側だと、私が見れないじゃん!」フレヤが口を尖らせて、サクラに答える。
『エルシア、どうすんのこれ?』俺がエルシアを見ると、無表情のまま正面を見つめている。
「だって、昨日はこっちに持ってきていいって、言ったじゃん!」フレヤがサクラに声をかける。
「昨日は昨日です。昨日はエルシア様とフレヤ、2人だけだったでしょう。」サクラがフレヤに諭すように声をかける。
「パン!」エルシアが急に手を叩いて、サクラとフレヤが驚いた顔でエルシアを見つめる。
『あぁ~、ビックリした。』俺も驚いて、エルシアを見つめる。
「今後、食堂でのレーニャが食事をするところは、そこにします。」エルシアがテーブルの真ん中を指して声を上げる。
「いけません、エルシア様、猫を食事のテーブルの上に載せるのわ。」サクラがエルシアを窘めるような声を上げる。
「サクラ、レーニャは確かに猫です。けれど、その前に私たちの家族です。それにフレヤは、昨日キッチンのテーブルで、一緒に食べてたじゃない。」エルシアがサクラを見つめて声をかけると、サクラが渋い顔で口を塞ぐ。
「フレヤ、レーニャをテーブルの上に載せて。」エルシアがフレヤに声をかける。
「はい!」フレヤが元気に声を上げると、俺を小さな机から持ち上げて、テーブルの上に載せた。
『おぉ~、この上広いな~』俺はテーブルの上でキョロキョロする。
「サクラ、なにか言うことはある?」エルシアがサクラに質問をする。
「いえ、ここはエルシア様のお屋敷です。エルシア様が決めたことであれば、私はそれに従います。」サクラがエルシアに答える。
「レーニャは普通の猫ではありません。賢くて、優しくて、それからちょっとお転婆さんだけど、不思議な子です。」エルシアが俺を見つめて声を上げる。
『いや、そんな賢いとか…、なんか恥ずかしいな…』俺は少し俯いて、前足の肉球を見つめる。
「なんか、レーニャ、照れてるように見えるんですけど…」フレヤが俺を見つめて声を上げる。
「フフフ、レーニャちゃん、ごめんなさいね。」サクラが優しく声をかけて、俺の頭を優しく撫でた。
『気にしてないよ、俺は猫だから。』俺はサクラに「ニャー」と声をかける。
「サクラ、それじゃ朝ご飯の準備を進めてちょうだい。」エルシアがサクラに声をかける。
「かしこまりました。」サクラはエルシアに返事をすると、ワゴンから大きな板をテーブルの上に載せる。
「あぁ!フラムクーヘンだ!」フレヤが嬉しそうな声を上げる。
『えっ!これってピザじゃないの?』大きな板の上には、四角いピザのようなものが載っていた。
「それから、こちらになります。」サクラは今度はワゴンから、お皿を出してエルシアとフレヤの前に置く。
『あぁ、これムニエルだ~、あぁ~、いい匂い。』テーブルの上にチーズとバターの香りが漂う。
「レーニャ、美味しそうだろう。」フレヤが鼻をクンクンさせている俺を見つめて、声をかける。
「レーニャちゃん、ちょっと待ってってね。」サクラが俺に声をかけると、キッチンに姿を消す。
『これが、フラムクーヘンってやつなのか。生地は薄いんだ。上にトマトは載ってないな~』俺はフラムクーヘンと呼ばれた料理をジッと見つめる。
「レーニャ、フラムクーヘン食べたい?」エルシアが俺を見つめて声をかける。
『えっ、いや…、食べたいわけじゃなくて…』俺はちょっと戸惑う。
「エルシア様、ダメですよ。レーニャは、たぶん猫舌ですよ。」フレヤがエルシアに声をかける。
「はい、こっちがレーニャちゃんの朝食よ。」サクラがキッチンから戻ってきて、小さなお椀を2つ俺の前に置く。
『あっ、これムニエルだ!バターの匂いが~』俺は目の前のお椀の中の小さく、刻んだ物を見て鼻をクンクンさせる。
「ねぇサクラ、レーニャのこれってソウギョ?」フレヤがサクラに質問をする。
「大丈夫よ、レーニャちゃんの分も含めて、小骨もちゃんと取ってあるから、そのまま食べて平気よ。」サクラがフレヤに答える。
『おぉ、小骨の処理まで、サクラは流石です。ところでソウギョって魚?』俺はお椀の中の刻んだ物を見つめて、心の中で呟く。
「それじゃ、サクラも早く席に座りなさい。」エルシアがサクラに声をかける。
「はい。」サクラが返事をして席に座る。
『おぉ~、ここだとみんなの顔が見える。』俺はエルシア、サクラ、フレヤの顔を見て、嬉しくなった。
エルシアが目を閉じて両手を前で合わせると、サクラもフレヤも同じように両手を前で合わせる。
俺も腰を下ろすと、前足をピンとして、目を閉じる。




