39_本能に負けました…
エルシアはベットに上半身を起こすと、辺りを窺うようにジッとしている。
『なんだ、なにかあるのか?』俺はエルシアの動作で、少し緊張する。
「よし、大丈夫ね。」エルシアが囁くような声を漏らす。
『えっ!なにが大丈夫なの?』俺がエルシアを見つめていると、エルシアは優しく微笑んで俺の頭を撫でてくれた。
「レーニャは眠っていて、いいからね。」エルシアは俺に囁くように声をかけると、ベットから下りて書斎の方に歩いて行く。
『なんだろう?』俺はエルシアの行動がわからず、エルシアの後をトコトコと着いて行く。
エルシアが寝室と書斎の間の扉に耳をあてている。
『書斎に誰かいるのか?』俺はエルシアを見つめて、心の中で呟く。
エルシアは静かに扉を少しだけ開けると、書斎に顔だけ入れて辺りを窺って、ゆっくりと書斎の中に入る。
『なにやってんだろう?エルシア…』俺はエルシアの不可解な行動を考えながら、エルシアに着いて書斎の中に入る。
エルシアは書斎に入って、大きなテーブルの椅子に座ると、「カ!」と声を上げて、指をパチンと鳴らす。
『えっ、なんだろう?』俺は机の上を見ると、ほんのり明るくなった。
『なにしてんるのエルシア?』俺は椅子に座ったエルシアに「ニャ?」と声をかける。
「えっ!あらやだ、レーニャ着いてきちゃたの?」エルシアが、俺を見て驚いた声を上げた後、慌てて口を手で押さえる。
『だから、なにしてるの?』俺はエルシアに「ニャ?」と声をかける。
「レーニャ、だからシー。しょうがない子ね、いらっしゃい。」エルシアは囁くように俺に声をかけると、椅子の下の俺を優しく抱き上げて、大きな机の上に載せた。
『あぁ、明るくなったのはこれか。』大きな机の上には、ほんのりと明かりを灯すランプが1つ置いてあった。
「レーニャ、ちょっとおとなしくしているのよ。」俺はエルシアに囁くような声をかけられて、大きな机の上で横になった。
「うん、えらいわよ、レーニャ。」エルシアの声は囁くような声で、机の上で横になった俺の頭を優しく撫でる。
「さて、仕上げないと…」エルシアは囁くような声を上げると、机の中からペンとインク壺を机に置いて、次に紙を取り出した。
「えっと、どこまで書いたんだっけ…」エルシアが囁くように呟いて、取り出した紙に目を通す。
『ん?ひょっとして、報告書出来上がってなかったの?』俺はエルシアを見つめて、心の中で呟く。
「レーニャ、危なかったわよ。サクラに報告書渡せって言われたときは、ちょっとビックリしちゃった。」エルシアは俺を見つめて、優しく微笑んで囁くように声をかける。
『しょうがねぇな~、エルシアは。』俺はエルシアに「ニャ~」と声をかける。
「レーニャ、静かに…」エルシアは人差し指を口にあてて、俺に囁くように声をかける。
「よし!」エルシアが机の上に紙を置くと、インク壺に入れたペンを紙の上で走らせだした。
『おっ!書き出したのか、綺麗だなぁ~』ほんのり灯る明かりの中で、真剣な顔でペンを走らせるエルシアの顔を見つめて、俺は心の中で呟く。
『ん!なんだこれ?や、やばい…』俺の視線はエルシアのペンの動きに釘付けとなる。
『やばい、やばい、落ち着け俺…』俺はエルシアの動くペンを無性に掴みたくなる。
『あぁ~、ダメだぁ~』気が付くと俺はエルシアのペンを持つ手に飛びついていた。
「あぁ~、なにをするのレーニャ…」エルシアがペンを持つ手に飛びついた、俺を見つめて困った表情で俺を見つめる。
『ご、ごめんなさい…』俺はエルシアの手から前足を外して俯く。
「フフフ、レーニャは私を手伝おうとしたのかな?」エルシアが俯く俺に優しく声をかける。
『いや、すいません。本能に負けました…』俺は俯いたまま心の中で呟く。
『あっ!ヤベー。』俺はエルシアがペンを走らせていた紙を見つめると、ペン先で紙が破れていた。
「レーニャ、いらしゃい。」エルシアが俺を持ち上げて胸のところに抱きしめる。
『ごめんなさい…』俺はエルシアを見つめて「ニャ…」と声をかける。
「フフフ、レーニャには、まだ私の仕事を手伝うのは、早すぎたみたいね。」エルシアは俺を見つめて優しく声をかける。
『エルシア…』俺はエルシアを見つめて、「ニャ…」と声をかける。
エルシアは俺を抱いたまま、立ち上がると寝室の扉に向かって歩き出す。
「レーニャ、直ぐに戻ってくるから、先におやすみなさい。」寝室の扉を開けて、俺を寝室の中に入れるとエルシアが、優しく俺に声をかけて扉を閉めた。
『エルシアに悪いことしちゃった…』扉の前で俺がうな垂れる。
「よし、やるか!」扉の向こうから、エルシアの囁くような鼓舞する声が聞こえた。




