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09 罪人の少女

「テイムカラーとマジックショットが腕輪の武器スキルみたい」

「テイムカラーは……すいません。私は魔物使いじゃないのでわからないですが、マジックショットは魔力を弾にして放てるスキルですね」


 ああ、練習で放った玉がこれなのか。


「形状が近接にもなるんだよね」


 腕輪を握ってジャマダハル形態にしてロネットさんに見せる。


「変わり種の武器種みたいですね。近接に遠距離……武器スキルから、どちらかと言えば遠距離寄りみたいです」

「そうだね。接近されたらこっちで殴るって感じで良さそう。種族スキルってのは? 連携って奴」

「それは私たち人間種が誰しも持っていて開花する種族専用スキルです。連携はパーティー活動をすることでステータスに補正が掛かるスキルです」


 パッシブスキルって奴かな? パーティー行動することでそんな補正まであるのか。


「後は……特殊武器や精製武器の運用で気を付けないといけないのは、無理に扱って壊すと所持者に大きなダメージを受け、下手をすると死ぬ危険があるという事です」

「え?」


 武器が壊れると死ぬ!? ものすごく危ない話だぞ。


「特殊武器は所有者の戦う力が凝縮して作り出される代物ですので……」


 俺自身の生命力で作られた代物が壊れたらそりゃあ俺に多大なダメージが入るのは当然か……。


「死ぬほどに壊れるというのは滅多にありませんし、死んでいない限りは治療すればどうにかなりますので安心してください」

「それでも怖いな……」

「大丈夫ですよ。武器が傷ついても持ち主の生命力がある限り、修復しますので普通の武器より便利なんですよ」


 あー……普通の武器は使っていると損耗していずれは使い物にならなくなるのは当然だよな。

 特殊武器は体の一部で勝手に修復される……そう考えると壊れない限りは継続戦闘も出来るので便利って事なのか。

 なんて話をしながらギルドへと歩いていると……大通りでなんか人だかりが出来ていて、みんな揃って何かを見ている。

 何を見てるんだろ?

 そう思ってのぞき込むと……驚くべき光景があった。


「さっさと歩け! おらぁ!」


 っと馬車に引かれた手枷と重りを科せられたボロボロの衣服を着た人たちが鞭を打たれながら無理やり歩かされていたのだ。

 目出し帽を被った……執行人みたいな人が鞭を持って、ビシビシと鞭を打って歩かせる光景……これは、なんだ?


「――カハッ!」

「何休んでるんだ! さっさと歩け!」


 鞭の痛みで悶絶して転びようなら起き上るまで何度も鞭で叩かれているその光景……鞭打ちの所為で傷が痛々しく、所々に血が滴っている。


「あの……アレは一体……」

「……アレは罪を犯した囚人です。市中引き回しの刑でしょう」


 あまり見たくないと言った様子でロネットさんは述べる。

 市中引き回し……馬車にはそれぞれ誰が何の罪を犯したのか書かれている様でみんなその光景に納得しているようだ。

 そんな中で異彩を放つボロボロの衣服を着た中学生くらいだと思われる女の子に目が言ってしまった。

 異彩を放つ理由として凄く汚れ、ボロボロでも凄い美少女であるという点と……執拗に執行人に鞭打ちされても我ここにあらずと言った虚空を見つめるその瞳だろう。


「……」


 なんだろう、その瞳を交差している訳でも無いのに恐ろしく感じてしまう。

 この世のすべてに絶望し、虚無の中にあるような……ここまで生き物の目は冷たくなるのだろうか、死人の方がまだ感情があるだろうという位の、暗い瞳の少女が歩かされていく光景だ。


「……許されたくない……私は…………私は……」


 ブツブツと呟く声すらも何か負の感情が宿っている。

 現代日本で甘く育ったからこそ、これは酷い事なのではないかと思えるけれど、これがこの世界の刑罰って事なんだろう。

 あの子は一体……なんの罪を犯したのだろう。


「ピー……」


 物々しい状況にジェリームが怯えている。


「ロネットさん。あんな若い女の子も罰を受けるんですね」

「……そのようですね。えっと……どうやら貴族を殺した罪で捕まったようです。本人も自供しているようです。貴族殺しなんてしたら即刻処刑になると思いますけど……」

「あんな女の子に……」

「見た目がすべてではないですから……どうやら人間種では無い様です。処刑人の趣味でしょうか……悪趣味です……」


 まだ見続けるんですか? とばかりにロネットさんが少し眉を寄せている。


「そろそろ行こうか……ごめん。俺の居た所じゃあんな刑罰は無くてさ」

「はい……では切り替えていきましょう。武器スキルの説明をしていたのでしたよね」


 こうして市中引き回しの列から離れて俺達はギルドの方へと向かった。


「ありがとう。武器スキルに関して教えてくれて」

「どういたしまして、詳しい魔物使いの詳細はギルド経由で魔物使いの訓練所へ入る方法もありますけど……そこそこ学費が必要になりますね。それで全て学べるかと言いますと人それぞれですが……どうします?」


 ロネットさんに尋ねられて考える。ちなみに学費は……貰った金銭では全然足りないとロネットさんが教えてくれた。

 職業訓練校みたいな国が補償してくれる訳じゃないのかよ……こっちは巻き込まれた側なんだけど……とは思うだけど、身分も何もあったもんじゃない国への忠誠心も無い怪しげな奴を金も無いのに学ばせるなんてさせてくれないか。

 本来はマリーゼ辺りが斡旋までするはずだったけど、村中の命令で俺だけ補助が外された……って事か。

 近々起こる災害に備えて力を着けろって話で、そのためには学ばねばならないけどしばらくの生活費が辛うじてあるだけで学費は稼がねばならない。


「私や仲間が保証人になってあげることも出来るのですが、それも多少審査に時間が掛かりますね……」

「気を使って下さってありがとうございます。ただ、ロネットさんはどうやらお忙しそうな様子ですよね」

「……はい。実はこれからしばらく遠くに出かけなければならず、事が片付いたら戻ってくる予定なのですが……アキヒコさん達の身を考えますと、私用を優先できませんよ」


 そんな忙しい状況で俺に色々と教えたりしようとしてくれているのだからこれ以上ロネットさんに甘えるのもな。


「少しの間、自分で何とかやってみようと思いますので気にしないでください」

「本当に申し訳ないです。私と親しいお店の方々への紹介状と店の地図を今、書きましたので上手く活用してください。色々と贔屓にして下さると思います」

「何から何まで、ありがとうございます」

「いえいえ、用事が終わった後に様子を見に来ますので本気で困ったらその際に……次のルナティックムーンは城下町に居れば何かあっても強い方が守ってくださると思いますので無理せず生き残る事だけを優先してください」

「ええ」

「ピー!」


 それでは、と言う訳で俺はロネットさんにギルドまで送って貰い、手を振って別れてギルド内で仕事を探すことにした。


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