08 特殊武器と精製武器
「申し訳ありません」
説明の場から追い出された俺だったが、俺を連行した僧侶たちは俺に対して一応の謝罪をしてくれては居た。
ただ、あの自称聖女のクソ女マリーゼはここでの発言権は強いらしく、追い出された俺に異世界人に対する補償を授けるのはかなり手間が掛かるとの話だった。
せめてもの詫びとしてこの世界で生きるためのLvの低い魔物使いが装備するローブとか色々と譲ってくれた。
武器は言うまでもなく腕輪な訳で……それと戦うための情報を教えてくれたのが救いか。
教えてくれた情報は、この世界で強くなるための術と金銭の稼ぎ方等々の基本的な事だ。
俺も過去に読んだ漫画とかアニメ、小説とかの知識と照らし合わせて聞くことである程度は把握することができた。
どうやらこの世界では魔物等を倒すことで経験値が入ってLvが上がって強くなるって仕組みであるそうだ。
そして職業によっては一定Lvになると上位職業に転職……クラスチェンジも存在する。
クラスチェンジすれば当然、能力が上がりルナティックムーンの時にも生き残れる可能性が上がる。
「ひっでえな……」
「ピー」
愚痴る俺に抱きかかえているジェリームが落ち込むような声で答えてくれる。
……もう俺一人って状況じゃ無いし、あんまり実感出来無いけど、備えて置いて損は無いか。
問題は装備と言うか衣服と少量の金銭を持たせられたけどどうやってこれから生きていくのかって所か。
金稼ぎは様々な職業の者たちに仕事を斡旋してくれる、総合依頼役場……分かりやすくギルドって所で出来そうな仕事を達成すれば報酬として金銭が貰えるって話だ。
しかし……街並みを見ると確かにここは日本じゃないってのを感じさせてくれる。
これまでの道中や城の中でもそうなのだけどどう見ても人間とは異なる部位……耳がとんがっていたり角が生えていたり、二足歩行をする動物みたいなのが衣服を着て当たり前のように言葉を話しているのだ。
あれだ、亜人とか獣人って類の人種って奴だろう。
獣人達の表情筋も豊で笑っているのが分かったりする。
少なくともここを見るだけで日本じゃないってのはわかっていた。
村中は着ぐるみのふざけた連中だって思っていたっぽいけどさ。
「あれ? アキヒコさん? と、ジェリームちゃん」
ギルドの方へとトボトボと歩いていると通行人の中からロネットさんが俺を見つけて声を掛けて来た。
「どうしたんですか? こんな所で? まだ異世界人の方は話を聞いている最中かと思ったのですが……」
「ああ、村中に追い出された……ってだけじゃわかんないだろうけど、聖女って名乗ったマリーゼって女が村中を持ち上げて、一緒に俺を追い出しやがったんだよ」
「え? それは一体……」
俺はロネットさんに城でのやり取りの詳細を説明した。
すると嘆かわしいとばかりにロネットさんは頭に手を当てて嘆くように頭を振った。
「マリーゼったら……伝説に憧れてそんな真似をしちゃうだなんて……はぁ……わかりました。それでアキヒコさんは何処へ行こうとしていたんですか?」
「ああ、Lvを上げて強くなるにしてもお金が必要だし仲間とかも必要になるでしょ? ギルドって所でそういった仲間とか仕事を探そうと思って向かってた所」
場所は教えてもらっていたし、村中やあのクソ聖女なんか考えていてもしょうがない。
わからない事を恥じたりせずに臆せず聞いていけばどうにかなるって心持で行こうと思った。
「なるほど……私も忙しくてすぐに出発しないといけないんですけど、せめてもの謝罪として私も知っている範囲でアキヒコさんの質問に答えますね。それとギルドまで案内します。なんだかんだ物騒な所もあるので騙されないように注意してくださいね」
「うん」
「それで……どこまでアキヒコさんは把握してますか? 異世界の方って事なんで、私も説明不足な所があるかもしれないので教えて下さい」
「この世界にはLvという概念があって、魔物を倒してLvを上げると強くなり上位の職業に転職できる。俺の持っている武器は特殊武器って類の代物で、近いうちにルナティックムーンって言う災害とエクリプスムーンって大災害が迫っているから身を守るために力を着けろ」
「後はギルドでお仕事を受けるって所でしょうか?」
「うん。この国の簡単な地図は貰ったって所。魔物使いってどんなことができるのかってのがわからない所かな?」
「よくわかりました。私もそこまで詳しい訳じゃないのですが、魔物使いには基礎スキルとしてテイミングというスキルがあるそうです。スキルの確認方法は把握してますか? ステータス欄でそのスキルに意識を向けるとどんなスキルなのか感覚でわかるはずです」
言われて自身のステータスにあるスキル、テイミングを意識する。
あ……ぼんやりとどんなスキルなのか理解できるような気がする。
どうやらこのスキルが魔物使いとして最も基礎的なスキルで魔物と何かしらの繋がりを持つスキルみたいだ。
「詳細は同職業の人に詳しく教わったり使い込んだりするとより理解が深まります。Lvが上がると使えるスキルの資質が発露して取っ掛かりのような物が感じ取れるので独学でも一応どうにかなる人は多いです」
ふむ……Lvさえ上げれればある程度は直感でも戦えるって事で良さそうだなぁ。
テイミングに関しても感覚的に出来るかできないかが備わっているような謎の自信みたいな感じがある。
不思議な感じだ。
「次に武器スキルという所持する武器に内包されるスキルがあるのですけど……アキヒコさんの場合は腕輪が特殊武器でしたね。アキヒコさんの強さに合わせて強くなる特性があるので便利といえば便利ですね。倒した魔物の素材なんかも取り込んで強化も出来ますし、精製武器を作れるようになるまでは一歩有利です」
「うん。武器スキルって何?」
「武器に内包された固有のスキルです。例えば私が持っている杖なんですけど、この杖にはマジックブーストという武器スキルが内包されています」
そう言ってロネットさんは俺に杖を見せてくれる。
あ、ステータスの項目で確認できるのね。
ミスリルスタッフ+5 高品質
専用効果 魔力増幅 聖属性強化 治療効果増加
武器スキル マジックショット マジックブースト ジョブシナジー(???)
今の俺が扱うのは難しいくらい性能の高い武器だって言うのはわかった。
「武器スキルと言うのは、使う武器によって変わるスキルですね。魔法なんかも同様に武器スキルとして扱われますが……そこはジョブシナジーが関わってきますのでアキヒコさんが確認できるスキルとはきっと違いますね」
「同じミスリルスタッフでも武器スキルで違ったりする感じ?」
「そうなりますね。基本的に品質や付与された属性なんかで使えるようになる武器スキルが増えたり減ったりします」
「うん……となると特殊武器ってすごく使いづらいんじゃない?」
特殊武器って所持者の成長に合わせて強くなるそうなのだけど
「マリーゼが杖の形を変えたってアキヒコさん説明してくださいましたよね?」
「そうだけど……」
「同様に対応した武器種に特殊武器を重ねて一時的に合体させることができます。アキヒコさんの場合は腕輪を重ねられるという事になるかと」
え? そんなことができるのか。
「じゃあ実質特殊武器と精製武器の差って誤差みたいなもんなんだね」
「そうですね……精製武器が作り出せるようになるのにクラスチェンジするくらいまで力を付けないといけないですが、最終的な差は無いと言えばそこまで無いです。最初に有利だった分、武器種が絞られるのが特殊武器持ちの難点ですね」
一長一短であるのは何度も確認しているのでわかっている。
で、俺は腕輪に内包されている武器スキルを確認してみる。
特殊武器 腕輪
媒体 無し
武器スキル テイムカラー マジックショット