07 王城追放
「ですのでノリスケ様、あなたは伝説の救世主と同じ運命を授かったも同然なのです! どうぞ我らが国レイブルグをお救い下さい!」
マリーゼは腕を絡ませながら村中に頼み込んだ。
村中がそんなマリーゼの様子に鼻の下を伸ばしてマリーゼを見ていた。
「そうかそうか! そんなに俺に頼りたいのか! そういわれたら悪い気はせんな! なるほど、このステータスは素晴らしいものなのか!」
先ほどの激怒とは打って変わって機嫌がよくなった村中はマリーゼの尻を揉み始める。
「もう、ノリスケ様ったらー」
マリーゼの方は尻を触られているってのに不快にもせず心からの笑顔で村中の機嫌を取り続けていた。
なんだこの展開……。
「さしあたってノリスケ様には王様への謁見をして頂く手続きをしますわ! ほら、早く準備なさい! ノリスケ様、まだまだ説明することが多いですが、どうか耳を傾け続けてくださいね」
「当然だとも、幾らでも説明するが良い!」
ご機嫌な村中にイラっとはするけど……まあ、これで少しは静かになるなら良いか。
「次に皆様の中でこの世界に来た時に見覚えの無い武器を手にしていた方がいらっしゃるようですね」
「ああ、この世界に来た時に身に覚えの無い武器を持ってたんだけど」
と、槍や剣を持っている職場仲間が尋ねる。
「それは特に力を上げずとも稀に所持している者がいる特殊武器という代物です。この武器を所持する者に特別な加護や力を授けてくれる……ステータスの力の結晶と言われています。基本的に破壊不可にして盗難不可な代物です」
おお……初期装備にして色々と加護を授けてくれるって奴なのか。
「俺は持っていないぞ! どうなっているんだ?」
それはなんか持っていない村中より有利なポジションに立っているような気がする。
ちょっと優越感。
「ただし……」
マリーゼさんはやや声のトーンを下げながら発する。
「戦闘を意識した際、この特殊武器以外を使用することは出来ません。例外として魔法ならば使用することができます」
「それってどういう?」
「では試してみるのが良いでしょう。貴方……この剣を持ってこちらの用意した者と戦おうと剣を向けてください。ご安心してください。反撃などはしませんししっかりと攻撃を見切れる腕に覚えのある者ですので」
槍を持った職場仲間に剣を手渡し模擬戦とばかりに軽い戦いが始まろうとしていたのだけど……槍を持っていた職場仲間の手にあった剣がバチっと音を立てて弾かれ、剣は地面に落ちる。
「っ! な、なんだ! いきなり弾かれたぞ!」
「お分かりになったでしょうか? 特殊武器を所持している者はその力故に枷を持つことになるのです。そして……」
マリーゼさんは木のタクトみたいなステッキを取り出して手をかざすと淡い光と共にステッキの形状が変わる。
「特殊武器を持たない者でもしっかりとLvを上げ、一定Lvを超えると所持した武器に力を凝縮することで少し劣りますが同様の力を持つ精製武器という物を作り出せます。ですのでノリスケ様、ご安心を」
ああ、持っていない人も劣るって訳じゃないのね。
「なるほど! 大したことないんだな!」
よくわかってないって顔に書いてあるぞ。
「はい! むしろ持っていない方が最初から所持している人とは異なり、自分で精製する武器種を選べます。持っていなかったとしても何の引け目を感じる物ではありませんわ!」
Lvを上げれば似た代物を手に出来るし、自由に選べると……選んだ訳ではなくいきなり授かった俺とかは選択の自由が無い訳ね。
え? ちょっと待って、俺……持ってる武器と言うか謎の所有物が腕輪なんだけど……。
腕輪って武器なのか?
「あの、俺は腕輪なんですが……」
腕輪を外して説明を求める。
するとマリーゼさんは俺を不快そうな視線を向けて答える。
「腕輪ですか……戦う術の無い特殊武器等はあり得ないので、形状からして魔法系の武器か腕輪を拳に嵌めて殴るなどが出来る武器かと思います」
ああ、そういった使い方をしても良いのね。
何かできないかな?
ゲームとかだと魔法の触媒って感じだよなーと思って腕輪を付けた手を前にかざすと腕輪が淡い光を放つ。
「杖などでも使用できる魔弾が出そうですね。そちらに的を用意したので試しに放ってみてください」
「あ、はい」
腕輪を付けた手を引いて前に出すとポン! っと光の玉が放たれて用意された的に命中した。
木製の的で当たった所から煙が出ている。
「おー」
こんなことも出来るのか。かなり便利な腕輪だぞ。
その腕輪を拳で……ナックルダスターって感じで握ると……お、形状が変わったぞ。
ただー……拳と言うよりも大きな輪っかみたいな感じで持ち手の部分以外が鋭くなってる。
「ジャマダハル……か?」
ファンタジーの武器とは学生時代にカッコいいなと思ったおかげで変わり種の武器に関しちゃそこそこ知識がある。
携帯性の高い円形の刃が付いた武器だと思うと中々悪くない武器だ。
「弓の方の方が性能が高そうですね。近接も出来そうですが器用貧乏そう。正直、期待外れも良い所だわ」
村中に取り入ってから露骨に俺への当たりが悪くなってきたなマリーゼは。
「そうだぞ海山、お前の方が俺よりも全てにおいて劣るんだ。来るべき時に役に立たないお前なんぞどこぞで野垂れ死ねばいいのだ! 既に首にすることを決めているんだからな! 因果応報とはこのことだ! ハハハハハハ!」
くっそ、なんだこの状況、会社とか関係ない状況を考えろって村中に言った俺が馬鹿にされている流れになってんぞ。
「ははははは! 世界を救えるノリスケ様に逆らう凡夫な腕輪しか持っていない魔物使い等、国は何の期待もしませんわ。ノリスケ様、この者をどう致しましょう?」
「先ほども言った通り解雇だ。保障など与える必要はない。さっさと追い出せ」
「承知しましたわ! 皆の者! この凡夫な魔物使いを追い出しなさい」
マリーゼの言葉に、仕事だからしょうがないって顔の僧侶数名が俺に詰め寄り、肩を掴んで連行していく。
「な、なんだよそれ! ふざけんなぁあああ!」
「ピィイイイ!?」
なんという理不尽だ! ポンコツニートが当たり職業とかふざけすぎてんだろ!
勝ち誇った村中と自称聖女のクソ女の蔑んだ目をしり目に……部屋から出された。
ともかく、こうして俺は、異世界人としての招待から一転して説明の場から追い出される羽目になったのだった。




