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67 キングラーヴァジェリーム


「なんだ? お前は行きたいって面をしてるな」

「そりゃあな……ジェリームはぶち殺さないと気が済まないんでね」

「きゅっきゅっきゅ」

「大物ね。それじゃ行きましょうか」

「……こっちは臆病者共だけで問題ない様だ。所長の許可を受けて行け」


 俺とルリル、ファナはその足でダンジョンから出て刑務所内の作戦司令部へと看守と一緒に向かう。

 看守が所長に近づき、ボソボソと話をすると俺とファナへと顔を向けた。


「ったく、志願者はこいつ等だけか、他の囚人共には聞いたのか!」

「はい! 聞きましたがどいつも臆病風に吹かれて持ち場を離れようともしません」

「チッ! とはいえ、数が多くて手が回らんのも事実か。お前ら、手が余ったら増援を寄こすかもしれんが先に行け! お前らの命は街の者より低い。その身を賭して戦え! 以上だ!」


 とまあ、刑務所所長のありがたいお言葉を承って俺達は刑務所から出て近くの街を目指して出発することになった。


「ポータルゲートは使えないって話だけど、本当なのか?」


 町は一応拠点として使っていたので登録済み……一発で行けるはず。


「やってみれば? アキヒコは使えるかもよ?」

「ポータルゲート」


 っと、ポータルゲートを使って見た所、なんか穴が赤い靄に包まれていてしかもスパークしてしまっている。

 すぐに消えてしまった。


「無理ってのは本当みたいだな」

「ええ」

「んじゃ、急いで行くぞ。ルリル、ファナを載せて行けるな?」

「きゅうううう!」


 ファナと一緒にルリルに乗り、俺達は刑務所から出発した。

 空には相変わらず二つの満月と不気味な赤い空……夜はまだ明ける様子はなくルナティックムーンはまだ続くとばかりの様相を見せていたのだった。




「喰らえ!」


 道中で現れる魔物、クリムゾンアイレギオンとか言う浮遊する複数の目玉を持つ魔物をマジックショットを放って撃ち落としながら俺達は進んで行く。

 地面すれすれまで下げるだけでファナが飛び掛かって鉄球で叩き落してトドメを指してくれるから楽なもんだ。

 やがて丘を登り街が遠くで見え始めたのだが……。


「随分と派手な明かりを灯してんだな」


 煌々と街並みが遠めでもわかるくらいの明かりと煙を上げていた。

 見た所……火砕流が街を通り過ぎている真っ最中に見えなくもない。

 街の外では避難した人々が無数に湧いてくる魔物を相手に戦えないものを庇いながら集まっているように見える。

 兵士とかいろんな連中が戦ってんな。

 ……俺に石を投げた連中共がああして困っている様を見た際に、ざまぁみろって気持ちが湧くかと思ったけど全く湧かないな。


「こりゃ随分と大きなキングラーヴァジェリームがいるみたいね。ほかにも魔物がたくさん」


 言われて空を確認するとクリムゾンアイレギオンって魔物は元よりドレインバッド、イビルガーゴイル……ブラッドサッカーやポイズンビー……暴食イナゴなんて魔物まで集まっているようだ。

 さらにポイズンジェリーム、バブルジェリーム、アメージェリームまで出てきて混乱を極めている。


「まさにパレードって感じだな。ルナティックムーンってこんなに大変だったんだな」

「さすがにここまでオンパレードなのは私も覚えが無いわー」


 ほう、これが来るべき災害の序曲って事なのかね。まだ三つ目の月が満月でも無いのにこれだけの災害とか。


「そんじゃ行きますか」


 そうして俺達は丘を降りて街へと向かったのだった。




「ぐあああ! 熱い! 熱い!」

「落ち着いてください! 今、火を消して回復魔法を使いますから!」


 ラーヴァジェリームに飛び掛かられて火だるまになって転げまわる戦士らしき出で立ちをした男にロネットは近寄り火を布で叩いて消して回復魔法を施し始める。

 背後には避難中の逃げ遅れた町民が我も我もと駆け足で逃げている最中だった。


「ビビビビ!」


 ケタケタと笑って無数のラーヴァジェリームがそんな避難中の町民は元より回復魔法で応急手当をしているロネットと大やけどを負っている戦士に飛び掛かろうとしていた。


「アイシクルエッジ!」


 ルアトルが氷の魔法でラーヴァジェリーム達を攻撃をして弾いたりしているが一部のラーヴァジェリームがその攻撃をすり抜けてロネットの方へ行ってしまう。


「く……」


 ロネットが我が身を盾にして前に出て背中を向けて守ろうとした、その時。


「セイフティサークル」

「ビビ!?」


 バキっと一瞬で放ったセイフティサークルが砕け散るが同時に黒い影がラーヴァジェリームに向かって行き、バシュっと衝撃音が響く。


「ビ――」


 一瞬でぶち抜かれ、飛び散るラーヴァジェリームだった物。


「え……」

「怪我はしてない?」


 同時に足元にヒーリングサークルを展開してロネットの治療のサポートを行う。


「苦戦してるって所か? ロネット」

「アキヒコさんにファナさん!? ルリルさんもどうしてここに?」

「大物が湧いたから応援に」

「ジェリームが湧いたって聞いてな」

「きゅうう」


 俺の問いにロネットが笑顔半分呆れ半分と言った顔で見て来た。


「ファナさんはともかくアキヒコさん! ワザワザ危険な所に来てどうするんですか!」


 ああ、ロネットは俺に死なれると後味が悪いから色々と気を使ってくれたんだしな。

 ……手当てしてる奴の傷がそんなにも深いのか?

 俺は手持ちのヒールシロップをついでにぶっかけてやる。


「いだだ! 回復痛! 痛い!」


 ロネットに手当てをしてもらっていた奴が飛び起きて背中に手を回しながら跳ね回る。

 痛みに弱い奴だ。その程度で痛がっていたら刑務所の拷問なんて耐えられないぞ。


「治ったろ。戦闘するならさっさと戦え」


 何時までも横になってたら守れるもんも守れないぞ。


「アキヒコさん。怪我人にはもっと優しくですね」

「怪我人? 怪我なんて無いだろ?」

「さっきまで怪我人だったんですから気を使ってやってください」

「そこまで面倒みられないぞ。それともロネットの膝枕でもしてもらって優しく撫でて貰わないと戦えませーんとでもいう気か?」

「く……俺だってなー! やってやるぞ! うおー!」

「君はラーヴァジェリームじゃなく他の魔物と戦ってくれ!」

「うおおおおお!」


 なんか治した奴ら半泣きで他の魔物目掛けて駆けて行った。

 元気が有り余ってるじゃないか。


「ワザワザ危険な所と言ってもな。刑務所の方は囚人共で賄えていてやることが無くなった所でジェリームと聞いたら来ない選択は無いだろ? 不謹慎を覚悟で言うけど俺は強くなりたいんでね」


 この機会を利用して一気にLvアップを図りたいんだよ。

 道中の魔物も戦えない相手じゃなかったのと蓄積していた経験値で26になった。


「きゅっきゅ!」

「何処まで徹底しているんですかアキヒコさんとルリルさんは」


 ロネットが助けたって言うのにため息をしている。


「ま、ぶっちゃけ石を投げた連中みんな苦しめとは思ってるけどさ」

「アキヒコさん!」

「夢見が悪いから傍観をしないで来てるんだろうが、ピーピー騒がないでくれ」

「はぁ……アキヒコさんが汚れてしまったのか、世間が悪いのか……」


 そんな事言われても知らん。


「そうだ! ファナさん! ラーヴァジェリームを殴ってましたよね! 大丈夫なんですか!?」

「えー?」


 ファナがなんともないとばかりに殴った手を見せると見事に大火傷した手を見せていた。

 おいおい……痛くないのか?


「こんなの放っておけばすぐに回復する」


 徐々にだけど火傷の部分が薄皮になっているのが見て取れる。

 ビーストバーサーク・シャーマンってのは中々便利なスキルを所持しているみたいだなー。

 恐ろしいほどの回復速度。それでも気になるのでルリルの蜜とヒーリングサークルを重ね掛けだ。

 すっとファナの傷があっという間に完治した。


ちょっと作業が立て込んでいるんで少し休載します。

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― 新着の感想 ―
続きを首を長くして待ってます!
[一言] お待ちしております。 槍や棺桶、釣竿などありますから…。 ご無理なされませぬように。
[一言] 楽しく読ませていただいておりますので、連載再開を楽しみにお待ちしております。
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