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64 ダンジョン清掃

「貴様! まだそんな態度なのか!」

「そうよ。ほら、ルナティックムーンでも先にやって置かなきゃね!」


 なんかファナの方が騒がしく看守が騒ぎ始める。

 ジャラ……ジャラ……っとファナが拷問に連れられていく。


「アキヒコ、ちょっと行ってくるね」

「あ、ああ……」

「無駄話をするな!」


 ルナティックムーンが始まるまでには戻ってくるとは思うけど……ファナは刑務所に来たら相変わらずと言った様子だ。


「なあ……」

「なんだ?」


 ファナが連れて行かれた後、俺は看守に声を掛けると高圧的な態度も無く、答えてくる。

 なんだ? 少しLvが上がってるからとかルリルをコールモンスターで呼ばれたら困るから警戒でもしてるのか?

 悪いが使う気は無いぞってそうじゃなく……。


「ここでのルナティックムーンに初参加なんだが、一体何をすれば良いんだ?」


 一応多角的に情報を仕入れなきゃ始まらない。


「この区画の囚人はダンジョンの掃除、余裕が出来たら周囲の草原に出現する魔物の討伐だ」


 やっぱりその辺りは想像の範囲だな。


「ただ……報告だとお前は……移動スキルを所持したそうだな」

「ああ、二カ所ほど登録して30分おき位に飛ばせるぞ。事前に何か伝達でも来るか?」

「いや……ルナティックムーンの時は移動スキルは使えないと聞くぞ」


 ふむ、なんか看守の対応がやっぱり高圧的では無くなっている。Lv23程度じゃ容易く押さえつけると思うんだがなぁ……。

 しかし……ルナティックムーンの時は使用不可とは厄介だな。


「おい……」


 なんか疲れ切った表情をした……べっちょりと蜜塗れの看守が助けを求めるようにルリルを引き連れてやってきた。


「いざって時に備えて貴様は魔物と共に待機しろ!」


 ルリル? 俺はルナティックムーンまで大人しく待ってろと言ったよな?


「きゅう」


 大人しくしてたもんとばかりに鳴いてるけど、間違い無く怪しい。

 ……なぜかルリルが腕輪に入れたはずの壺を背負っている。


「ルリル、その壺はどこで手に入れたんだ?」

「きゅう?」


 背中に乗せた壺をルリルは体をひねって掴んで俺の前に置き、片耳を上げて耳の穴のある場所に押し込んだ。

 スルッと壺は何事も無く入る。

 どんな構造してるんだお前は!

 くそ! ロネットもレイベルクの爺さんもここには居ないぞ! こんな所で正体を現したのか!

 しょうがない! 看守に通報だ!


「俺の魔物が妙な真似をしたぞ! レイベルクの爺さんを呼んでくれ!」

「妙な事?」

「腕輪に入れて隠したはずの壺を耳から取り出したんだ!」

「それって……食料搬入をする魔物使いから聞いた事あるぞ、魔物使いと魔物の共有収納枠なんじゃないか?」


 え? これって標準搭載な代物なのか!?

 腕輪の中に入れた物はウィンドウで確認出来るのだけど背景の色が違う所がある。そこに壺があった。


「きゅう」


 満足げなルリルに血の気が引いていく。

 この変態ウサギをどう処分したら良いんだろうか……はぁ……。


「どうでも良いことで聞いてくるんじゃないぞ!」


 看守に叱られてしまった。

 とんでもない誤解だ。




 そうして夕方になった頃、刑務所内の中庭に囚人たちは整列させられて待機となった。

 空にはゆっくりと日本では見ないような満月がゆっくりと二つずつ上がり始めている。

 まるで空に二つの目玉が俺たちを見つめているかのような不気味な空だ。


「囚人の諸君」


 ここで所長が用意された朝礼台に立ち、俺達へと声を出す。


「前回も参加していた者、今回が初参加な者、双方聞け。お前たちはこんな所にぶち込まれ、罪を償う為に居るゴミ共だ。そんなゴミ共が社会の為、人々の為に尽くす時間がやってきた! 存分のその力を振るうが良い! この災害の夜を……民の盾となって戦う夜がやってきた!」


 おおー! っとなんか歓声が上がる。

 暴れられる絶好の機会だって雄々しく呼応してるって感じか?

 戦いたくないって面をしている奴もいるけどな。


「お前らの命は外の連中よりも遥かに低い。その身は罪無き民たちの盾とせよ! その償い次第で貴様らは減刑もあり得るだろう。大物を仕留めた者には相応の報酬を約束する。頑張るが良い! 以上だ!」


 なんか色々と他にも前口上を述べていたけど所長はそう言って朝礼台からの激励の言葉を終えた。

 刑務所の外へ続く門が開け放たれ、看守たちが囚人たちを大雑把に周辺地域への派遣を命じる。

 言われた通りの場所へ移動しないと刻印が作動して痛みを発するので囚人たちは命じられた地域へと移動する。


「アキヒコとルリルもこっちみたい。まあ、私たちの区画はダンジョン担当なんだけどね」

「重犯罪者は苛烈なダンジョンで戦えって事ね」

「きゅう」


 俺はルリルの背中に乗ってる。最近戦う時はずっとこれだけど近接も出来るんだぞ?


「みたいねー」


 やがて……夜だというのに空が血の様に赤く染まり、どこからか獣の雄たけびが聞こえ始める。

 初ダンジョンとばかりに同じ区画の囚人連中と一緒にダンジョンへと足を踏み入れる。

 そこはカタコンベと呼ぶのにふさわしい壁には棺が納められた通路が延々と続いているようだ。

 カタカタ、ドスンドスンと音が反響しながら通路の奥からアンデッド達が群れを成してやって来る音が聞こえた。


「よーし行くぞお前ら! 今回はバーサーカーリープッドなんかに後れを取らず突っ込めー!」

「おう」

「ついでに新米に負けるわけには行かねえぞー!」


 これは俺の事かな? なんか視線が俺に集まってたし……そりゃあルリルがでかいからか。


「おおー!」

「ヒィイイイ! バーサーカーリープッドの近くになんか居られるか!」


 なんか悲鳴を上げる囚人も揃ってダンジョンの奥へと走り出して行ってしまう。

 ファナ……お前、前回のルナティックムーンでどんだけ暴れたんだ?


「アキヒコは行かないのー?」

「よくわからん」

「きゅう」

「あーじゃあここでの戦いを教えるね。1、遭遇する魔物たちは残さず仕留める。月の魅力に憑りつかれて襲ってくるから。2、身の丈に合わない相手からは逃げる。勝てない相手と戦っても死ぬだけだし、今夜はそれこそ群れを成して襲ってくる」


 そして……と、ファナが続けようとした所でバタバタバタと無数の物音が聞こえて来て、ダンジョンの奥から何十匹もの四つん這いで駆けてくるブラッドサッカーと言う赤い機敏の動く人型の魔物がやってくる。


「3、私には近寄らない」


 鉄球を足枷に付けたままファナはブラッドサッカー達の群れの中に飛び掛かって拳を握りしめて叩きつけを行う。

 ズシンと音を響かせてブラッドサッカーたちはまるで無双ゲームで出てくる雑魚の如く薙ぎ払われ壁に叩きつけられる。


「おおおおおお!」


 右から左、どんどん駆けつけてくるブラッドサッカーやシックルアンデッドと言う手が鋭い刃物みたいになったゾンビやスケルトン達をファナは氷細工を砕くかのように蹂躙して行っている。

 俺も負けられないとルリルに騎乗したままマジックショットで応戦しながら戦う。


「きゅううううう!」


 ルリルが縦横無尽に壁を足場にして突進や蹴りを行ってシックルアンデッドをなぎ払う。

 腕輪に着けたライトダイヤモンドの効果もあってシックルアンデッド達はあっさりと砕け散る。

 普段出てくるスケルトンより遥かに強いアンデッド……なんだろう。

 アンデッド達も俺のマジックショットであっさりと砕けていた。

 数日前から考えると劇的に強くなったと錯覚してしまう。

 これもすべて腕輪の性能が上がっているお陰か。


ちょっと更新頻度落とします。

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