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61 明日に備えて


「アキヒコの腕輪に宝石が着いたわね」

「貰った。魔力がかなり上がったぞ」


 Lv20でもかなり攻撃力が上がったのではないだろうか。


「こりゃあ随分と値打ち物を貰ったね。それに見合うほどの活躍はしてるから良いんじゃないかい?」

「刑務所に戻った際に没収されそうだからその辺りは色々として貰うけどな」

「そうですね。その辺りはしっかりと口添えしておきます」


 ま、後は刑務所に戻ってからって事で今は少しでも地力を上げて行くのを優先すべきだな。

 色々と登録が出来て全体的に能力強化が出来てきているけど……やっぱりまだ心許なく感じてしまう。

 考えすぎかと思うが……何にしても最終目標はライムを仕留める事なんだ。この程度じゃ序の口だろう。

 なんて調子で登録をしている間にロネット達は良さそうな討伐依頼を見繕ってくれた。


「ではそろそろ行きましょうか。近場でLv上げに適した場所を見繕いましたよ」

「あいよ」

「きゅう!」


 っと言うわけで次の依頼である討伐依頼を達成するために出発したのだけど、こう……ロネット達からすると苦戦をするような相手でもなくファナも余裕で戦えた挙げ句、強くなった試しが出来るかとマジックショットを使ったのだけど、弱い魔物だったので今一つよく分からなかった。

 それでもLvが3上がった。やはり俺は基本的に弱いって事なんだと思う。

 日が暮れたのでそのままポータルゲートで帰還した……。


「明日の夜はルナティックムーンが起こりますね」

「アキヒコとファナは刑務所の方で指示があると思うから明日の朝には刑務所に戻って貰うよ」


 街に戻りった所でロネットとルアトル言った。


「分かってる」

「うん」

「きゅう」


 返事をするルリルに顔を向ける。

 お前は刑務所だとどんな扱いになるんだ? 家畜魔物区画にでも行くのかね?


「きゅうううう」


 そんな見つめられると照れちゃいますって顔をするなよ気色悪い。


「アキヒコさんにルリルさん、ファナさん。今日までよく頑張ってくださいました」

「頑張るって程じゃないさ、まあ……得られる物は多い日々だったな」


 色々と密度の高い日々だった気がする。

 ファナとルアトルに連れ出された後、指輪探しをしてグレートマッドサラマンダーと戦って、ギルドでクソ聖女に絡まれて……ロネットと再会して依頼でルリルを再度テイミングして……魔物の脅威にさらされている村を救ってボスのル・カルコルを倒して……。

 村中共に絡まれたのを追い返して洋館で魔剣を見つけて……うん。色々とあった。

 Lvも5から23まで上がったんだから及第点だろ。


「本当によく頑張ってくれたのは間違い無いです。お二人がしっかりと働いたと報告しておきます」

「私はいらないわ。敢えて頼むとしたら血の気が多くて反省の余地なしとでも提出しておいて」

「そんな恩知らずな事をするはずないじゃないですか、わかっているのですか? 何耳を寝かせているんですか、聞いてないアピールをしたからと言って――」


 ファナが聞いているふりして耳を完全に寝かせている。間違いなく聞いてないぞ。

 終いには顔まで洗い始めた。猫そのものな態度だなー。

 ルリルも似た感じで人の話を聞いてないってやるんだよな。


「まあまあ、今はその辺りは置いて置こう」


 ルアトルがロネットをなだめる。


「雇用期間はルナティックムーンまでと言いましたけど今着用している装備は貸し出していると言う扱いにしておきますでの自由に使っていてください」


 ああ、ルナティックムーンに備えた装備の貸し出しを続けて置く扱いなのね。

 まあ……あの刑務所じゃルナティックムーン中でも囚人服で活動させそうだし、これまでの装備が使えるのは助かるね。

 貰った物を没収されないように色々としてくれる手はずだし。


「ファナ」

「なに?」

「刑務所ってルナティックムーン中は何するんだ?」

「地下ダンジョンで活性化して出てくるアンデッドの処理とか、近隣の街へ戦闘の手伝いに派遣させられたりするよ。囚人たちは思いっきり暴れられるから待ち遠しいって人もいるね」


 囚人の社会貢献はルナティックムーン中でもやらされるのか。

 そうなるといざって時に気休めでも今装備している類の品が使えるのは助かるか。


「ではアキヒコさん。ルリルさん。ファナさん。明日に備えて英気を養って下さいね」


 と、最後の晩餐とばかりにロネットが俺たちへ柔らかいパンと脂身が多めのベーコンとウインナー、それとしっかりと火を通した骨付き肉、それをスープを定食屋から購入してきてルアトルが温めて出してくれた。


「ありがとう。素直に礼を言う」


 ただ、ロネットは俺に償う機会を与えたいって態度が時々見え隠れするので結局は俺の言い分を信じてくれている訳じゃないのが理解できる。

 だからこっちも完全に信用を置くことは出来ない。

 ルナティックムーンを乗り越えた後がどうなるか……か。


「どういたしまして」


 と、ルナティックムーン前日の晩餐は豪勢な食事で終わり、宿屋の馬小屋で就寝することになった。

 ルリルが居る所為で部屋で寝られない。

 素直に馬小屋で寝てくれれば良いのだけどルリルの奴、俺の服の襟を咥えて離れないんだからしょうが無い。

 まあ……ベッドよりこいつの背中が柔らかくて寝心地は悪く無いんだけど。


「ふわぁ……」


 ファナがあくびをしながらうつらうつらとし始める。

 後は寝るだけか……明日はルナティックムーン。

 もっとロネット達を振り回してLv上げをしながらライムを探すべきだったと後悔ばかりが脳裏を過る。

 恵まれた環境だったのは分かってる。けれど思うのだけは自由だろう。

 まだ出来る事があるんじゃないのか? 何か無いか?

 何もせずにこのまま終わりたくない。


「んー……」


 ふらふらとファナが俺に寄りかかってくる。


「はぁ……明日はまた刑務所か……ったく、なんで俺がこんな事で憂鬱にならなきゃならないんだ」


 口にして改めて不快になる。だってそうだろ。やっても無い罪で収監されて、しばらく外に出れたけどまた刑務所に戻るんだぞ。

 やっても無い罪で投獄されるとか溜まったもんじゃない。

 ニュースで冤罪で収監された人物の話とかを昔見聞きしたことが脳裏をループし続けている。

 俺の無実を証明するにはライムをボコボコにして捕まえて公衆の面前で暴露させねばならない。

 それから殺してやると決めているのに……Lvも少し上がったけど全く進めている気にならない。

 口惜しい……もっと力が欲しい。

 ルリルやロネットやルアトル、ファナとの日々を思い出すとまだ気が楽……だったのかもな。


「……ねえ」


 寝転んだファナが上目遣いで俺に声を掛けてくる。


「なんだ?」

「アキヒコの腕輪さ、一つ余ってるよね」


 三つ出せる腕輪でルリルの首に掛けている腕輪が一つ、一つは俺が武器として使っていて、もう片方はサブというかマジックショットを連射する時とかスキルを維持する時に使っている。

 余っていると言えば余っているが……。


「一つ、明日のルナティックムーンの時、私の首に掛けて良い?」

「なんで?」

「きゅう?」

「暴れていたら締め上げてほしいのよ。そうすれば少しは理性が戻せそうじゃない」


 ファナが痛みで幻覚を無効化させた出来事を思い出す。

 まあ……確かに出来そうだけどさ。


「良いけどさ……」


 出来たら怪我とかしてほしくない……けど、ファナの戦う意思は変わらないのは分かってきた。

 ルリルに掛かる腕輪の加護……どうかファナにも掛けて力となってくれ……。


「暴れたら首に掛けた腕輪で抑え込んでやるよ」

「ふふ、それは素敵な返事ね。思いっきり締めたら冷静になれるかもしれないわ」


 俺の返答にファナは儚げな笑みを浮かべていた。


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