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06 ポンコツニートが勇者に!?


「スマホみたいなのが目に見えない空気に含まれていて、特定の動作で出てくるって思ってください」

「海山! 貴様には聞いてない!」

「ピ!?」


 本当、どうしてこんなに物分かりが悪くて俺に噛みついてくるんだか……いや、一番話しているのが俺だからなのかもしれないがいい加減ウザいんで村中を無視して 話を続けよう。

 マリーゼさんに説明をどうぞと手で合図を送る。


「そこに表示されている事が皆さんそれぞれの能力という事になります。そしてこの力は魔物等を倒すことで高めることが出来、今は無理でもいずれ強大な魔物、魔王でさえも皆さんは戦う術を身に着けることができるのです」

「どういう意味だ? 訓練して戦えるようになるという事なのか?」

「あのミミズは無理でももっと弱い魔物を倒して強くなればあのミミズも簡単に倒せるという事ですよ。村中課長もゴルフやボーリングをやってましたよね。それで何度も好成績を収めると体が軽くなって無駄なく大きな力が出せるようになるようなもんです」

「なるほど! つまりこれで簡単に倒せるようになるんだな!」


 俺以外の職場仲間が村中に説明する。

 しかし……職場仲間の言った事をそのまま言って纏めた体裁を取るのは相変わらずなんだな……。

 話の半分も理解出来て無さそう。


「異世界人の皆様は私たちよりもこの力の伸びが良いだろうと言われています」


 へー……なんかどこかで聞いたような設定だ。ただ、それくらい無いとこの世界の人たちに追いつくなんて難しい。

 元々戦いとは無縁の場所に居て、これから戦う力を身に付けないといけないって話なんだし。

 マリーゼさんが周囲にいるみんなに期待に満ちた表情の笑みを浮かべる。


「次に皆さん。自身のステータスにある職業に関してご確認ください。後ほど分かる者に確認を取らせますが教えて下さると幸いです」

「えーっと……魔物使いですね」


 俺が答えるとマリーゼさんは俺にサッと視線を……なんだ? いきなり目つきが悪くなったように見えるぞ。


「別段珍しくもなんともない職業ですね。通りでジェリームを連れてる訳ですね。魔物使いなら当然でしょうか」


 何なんだよその態度、勘に触る言い方をするな。

 っと……気にしても始まらないか。

 なるほど、ロネットさんが気に入ったなら連れてって良いって言っていたのはそんな意味があったのね。

 魔物使い、文字通り魔物を使役して戦う職業なんだろう。

 つまりこのジェリームが俺の魔物1号って感じで仲間として一緒に行く感じ。

 ちょっと夢が広がる。


「俺はー精霊弓手って職業みたい」

「あら……すごく希少な職業ですわ。自然に調和する力を宿しつつ弓による狩りが行えるというお話を聞いたことがあります。将来性も抜群ですよ。何せ成長性の高い初期職業ですから」


 俺の時とはずいぶんと対応が違くないか?

 なんかこのマリーゼって人、人の職業でどう対応するか物差しで測っているのが分かって来たぞ。

 他にもどんどん聞いてはそれぞれ返事をしていき、よくある職業の相手にはそっけなく、珍しい職業を引いた相手には丁寧と言った様子で答えていく。


「ふざけるな!」


 ここで村中が怒鳴り始めた。

 いやなんでだよ。


「俺はこんな代物を信じんぞ! 調子に乗るんじゃない! お前たち俺を馬鹿にするのも大概にしろ!」


 顔を真っ赤にしてぶち切れている村中……お前、何の職業引いたんだ?


「どうかしましたか? 何かご不満が?」


 俺はあるけどマリーゼが村中に一体どうしたのかを尋ねる。


「どうしたもこうしたもない! 何がステータスだ! お前たちは人を馬鹿にしているんだろ!」

「そんなつもりは毛頭ありません! これはこの世界の理……あなたは何の職業の方なのでしょうか?」


 ここで村中は日本での会社名と役職を大声で怒鳴りながら言い切る。


「そ、そのような職業でよろしいので?」

「えー……日本での役職で、こちらではどうかは分かりませんが城の魔法使いの隊長みたいな職業ではないポジションをこの村中課長は言ってます」


 職場仲間が言葉を選んで説明する。いや……たぶん違うだろ。


「違いますね。不快かとお思いですがどうか教えて頂けたら幸いです。あなたの認識する職業とこちらの知る職業に齟齬があるかもしれません」

「ぐぬぬ……じゃあはっきり言ってやろう! 俺の項目に乗っているふざけた職業はポンコツニートと書かれているんだ! 馬鹿にするのも大概にしろ!」


 うわ……ポンコツニートって、ポンコツって学習力から何まで能力が低いって意味で使われる言葉だろ?

 そこにニートと来たもんだ。

 本来ニートって15歳から34歳までの若年無業者を指す言葉で村中をそれに入れるには微妙にずれているけど、読み取れる語呂からして無能な無業者って事で間違いない。

 確かにそんな職業がステータスに乗っていたら腹が立つのもわかる気がする。

 村中はニートって年齢でも無いし日本に居た頃は会社員だった訳だから完全に別と思うべきだな。


「なんと……」


 絶句するマリーゼだったが……先ほどの村中に対して距離を置きたい態度から一転、なぜか村中の手を握ってぐいっと身を乗り出して豊満な胸を強調するポーズで詰め寄る。


「素晴らしい職業を授かっていますわ! その職業名は過去にこの世界を救った勇者様が最初期に授かったと言われる職業です。あなた様のお名前は!?」


 激怒していた村中だったが詰め寄る美少女のマリーゼの満面の笑みと豊満な胸に押されて唖然とした表情で呆気に取られた表情になった。


「む、村中典助だ」

「ノリスケ様ですね! よくぞこの世界にいらっしゃいました! 世界はあなた様を求めてこの世界の招いたのでしょう! どうか私共をお助け下さいノリスケ様! そのためなら私、マリーゼはどんな命令であろうと従い、共にある所存です!」


 マシンガントークでマリーゼは村中に向かって力になると詰め寄り、その手をそのまま胸に当てて祈り始めた。

 おい……どこをどうしたらそんな話になる訳? まさか俺たちがこんな事に巻き込まれたのは村中の所為だって言うのか?

 勘弁してくれ……。


「ど、どういう事だ?」

「大変失礼いたしました。説明しなければわからないでしょうね。まずお話しなくてはいけないのですが過去にあったエクリプスムーンの伝説でのお話です――」


 マリーゼは先ほどの笑顔だけど何処か事務的な所があった説明から心から村中に対しての誠意を込めた懇切丁寧な事情を話し始めた。

 過去にエクリプスムーンという災害が起こる年になった際、やはり異世界から迷い込んできた者たちが居て、当時の国は優秀な職業を所持した者を抱え込んで決戦に備えさせた。

 が、ここで村中が授かった職業であるポンコツニートという何の取り柄も無い職業を得た者を無一文で放逐したんだそうだ。

 そこで話が終わる訳ではなく、このポンコツニートの職業を授かった者は、低い能力にめげずに鍛錬を積んで力を蓄えたところ、強靭な力に目覚め、放逐した国と抱え込んだ者たちがエクリプスムーンによって現れた魔王に滅ぼされて窮地に陥った世界を救う勇者となったんだと。

 追放からのザマァな感じの出来事がこの世界にはあるのな。

 一発逆転が歴史に記されているってある意味夢があるのかねー……。


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