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56 剣の魔物


「ほ、ホーリーフィールド! こ、これも効果が無い!? 本当にどうなっているんですか!」


 ロネットが地面が何か光る魔法を使ったのだけど、それも効果が無いようで亡霊たちが何食わぬ顔で絡みついている。


「アキヒコ」


 パンっとファナが俺の頬を叩くと亡霊が俺から離れる。

 見るとファナは自らの腕に爪を立てて出血していた。


「た、助かった」

「うぐううう……ア、アキヒコさん。ファナさん」

「うーん……ちょっと厳しいねー」


 ロネットとルアトルにはまだ亡霊が絡みついて動きを阻害している。


「二人とも」


 パンパンとファナが二人の頬を叩くと亡霊が離れて再度取り憑こうと近づいてくる。

 とりあえず距離を取るか。


「きゅう?」


 で、ルリルはというと周囲を見渡して首を傾げていた。


「どうした?」

「きゅううううう」


 ルリルが前にロネットたちの内緒話の声を拾った時のように耳を広げる。


「――――……」


 なんだこの音? モスキート音みたいな微かにキーンって音が聞こえる気がする。


「ああ、なるほど対魔の魔法が効果が無いはずね」


 理解したようにファナが手を合わせる。

 それからすーっと息を吸い込んだかと思うと……。


「ガァアアアアアアアアアアアアアア!」


 爆裂音に匹敵する音量で声を出す。

 ウォークライだったっけ? 雄叫びを上げることで能力を上げるとかそんなスキル。

 ボシュっと亡霊たちが姿を消し、ポルターガイストで飛んでいた家具が地面に落ちる。


「こ、これは……ファ、ファナさん助かりました。何かわかったんですか?」

「いやぁ……なんて言うかどうしたら良いのかわからない所だったけど、助かったね」

「人間はともかく、リープッドである私すら気づかせないのはある意味感心するけど、種さえわかれば簡単ね。魔物であるルリルからしたらどうしたら良いのかわかったって所かしら?」

「で、原因は何なんだ? なんとなくルリルが拾った音が原因みたいだが」

「ガァアアアアアアア!」


 っと、ファナがまたウォークライをする。

 あんまりスキルを使ってると暴れ出すぞ。


「原因は単純に超音波ね。音を使って私たちに幻覚を見せて居るのよ。後は遠隔で魔法を使って家具で攻撃、結構知能犯な魔物ね」

「じゃあ原因となる魔物を見つけりゃ良いんだろうけど、どこに居るのかわかるか?」

「そこは……ガァアアアア! ルリルに任せるべきじゃない? 問題は私の雇用主は目を頼ったりしないけど耳には頼ってるみたいよね」

「耳だけじゃなく……力の流れを感じて判断してるんだけどね。ダメージを引きずっていて、ちょっときついかな」

「ルリルの背中にでも乗っけて連れて行けば良いか?」

「お願いするよ」

「なんと言いますか……聖職者では対処出来ないはずですね」


 上手く原因が特定できて運が良いって事かね。

 ルリルのお陰か。


「んじゃルリル、どこから聞こえるかわかるか?」

「きゅー…きゅ!」


 っとルリルは耳を澄ませたかと思うと行くべき道に前足を向ける。

 そんな訳で俺達は洋館内をルリルの指さす方向に進んで行く。

 すると洋館内にある武器庫にたどり着いた。まあ警備の兵士用の部屋の隣なんだけどさ。

 ガチャッと扉を開けて周囲を確認。ちなみに扉の関係でルリルは入れない。壁をぶち破れば入れそうだけど……弁償とかしなきゃ行けなさそうだな。

 ロネットに許可を得てから壊すことになるか。


「きゅ!」


 ここ! ってルリルが鳴く。


「この部屋の中に原因があるって事みたいだけど……」

「……」


 室内にはいろんな武具が納められている。とは言っても高めの物は逃げ出す際に持って行ったのかどれも安物っぽいけどさ。

 錆びたアナグマダガーなんかもある。


「んー……」

「どこに原因となる魔物がいるか……」

「鈴虫みたいな音を出す小さい虫とかか?」


 部屋の隅とか家具の合間に隠れてたりしてそうだな。もしくは安物でも鎧の中に潜んでいたり。


「そう言った魔物の可能性もありますけど……」

「気配はするけど、ぼやけて分かりづらいね。擬態が上手なのかも知れないね」

「きゅ、きゅう!」


 ルリルも近くまでは分かるけどこれ以上は特定出来ないって感じか。

 ルアトルを乗せるのがそんなに嫌なのか汗を掻いてて甘い匂いがしてきたぞ。名前似てるのにな。

 って感じで室内を物色していると、なんか俺の勘みたいな物がバッと反応して一振りの剣を掴む。

 なんでこれがそんなに気になるんだ? 俺は剣は特殊武器の腕輪の制約で使えないんだが。

 だが……握った際に何か妙な感覚が走った。

 なんだろうな……妙に手に吸い付くような、不自然なぐらい握りやすい剣だ。


「これだ」


 俺の言葉に反応したのか剣がカタカタと勝手に震え始めた。

 魔物名はモンスターアナライズが無意識に発動して分かった。

 マジックソニックソード。

 なるほど、剣に擬態する超音波の魔物はこいつか。


「……」


 少し震えていたかと思ったが寝ぼけているのかマジックソニックソードは擬態を再開するかのように大人しくなった。

 もう正体がばれてるってのによくやる!


「アキヒコさん?」

「ルリル!」

「キュ!」


 力一杯部屋の外に居るルリル目掛けて剣を投げつけるとルリルは俺の命令を察して前足を上げて剣にたたきつける。


「――!?」


 ガタ! ガタ! っと剣が抵抗を続けているがルリルの前足から逃れる事が出来ていない。

 どうして……って感じの声なき声が聞こえた気がするが……気のせいだよな。


「キュウウウ!」


 ルリルがマジックソニックソードに向かって威嚇する。


「これは珍しいです。インテリジェンスウェポンですよ」

「いいね!」

「なんか良いのか?」

「生きたまま捕縛してギルドに持って行くと高額で買い取ってくれる希少な魔物なんですよ」


 へー……高く売れる魔物ね。


「タネさえ特定出来るなら……ちょっとまだ本調子じゃ無いけど……サイレンス」


 ルアトルがルリルが押さえつけているマジックソニックソードに向かって魔法を唱える。


「――! ――!」


 マジックソニックソードはルアトルの魔法を受けて動きが静かになって、抵抗する力が弱まり始めた。


「沈黙の魔法を思いっきり魔力を込めて使ったからね。これで超音波はしばらく出せない。今のうちに布でくるんでギルドに持って行って処理して貰おう」

「倒さないのか」

「経験値や素材にするよりも生きている事に価値がある魔物って事さ」


 そんな魔物もいるんだなぁ。


「きゅ」


 ルリルが手を上げた所でロネットが剣を持ち上げて布でくるむ。


「アキヒコさん。移動スキルで町に戻って良いですか?」

「ああ……それが原因って事で良いんだよな?」

「はい。現にファナさんがウォークライを放っている間は異様な現象はありませんでしたので」

「ルリル、他に原因とかあるか?」

「きゅ? きゅう」


 俺の問いに無いとばかりにルリルは頭を横に振る。


「では報告に戻りましょう」

「仕事が終わるとすぐに町に戻れるって便利だねー」


 なんか完全に便利屋ポジションに俺はなってないか?


「思ったよりあっさり終わったわね」

「そうだな。ここに帰るためにポータルゲートの登録はするか?」

「今回は大丈夫です」

「きゅう」


 って事で俺はポータルゲートを使い、町へと戻ったのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] そっか、他者不信になってるせいで他人を受け付けないなんて事になってなかったらここで武器となる魔物を手に入れていたのかもしれないのか。 魔剣が主人として選んだっぽいし、いつか主人公の魔剣への誤…
[一言] こいつならテイムしてる魔物扱いで腕輪じゃないのに装備できる剣として戦力にできるな
[一言] これテイムすれば剣装備できるのでは?
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