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51 ボスドロップ


「ルリルちゃん綺麗になりましたね」

「きゅう!」


 キラキラとルリルの毛並みが水を吸って光沢を放っている。

 できる限り手ぬぐいで水を絞り落とし腕輪のマジックショットが風属性なので威力調整をしてドライヤーとばかりに噴射して乾くのを促進させてっと……。

 ルリルを洗うのが終わった。

 これで毛並みも綺麗になっただろ。


「きゅう」


 ブルブルっと僅かに残った水滴を払ってルリルは元気よく声を上げる。


「そろそろ村に戻るんだよな?」


 ルリルを洗う作業を続行していたらポータルゲートの再使用可能時間が過ぎていた。


「はい。手続きも大体終わりましたので行きましょうか」

「はいよ。ポータルゲート、村のたき火とかルアトルに火でも出して貰ってルリルを温めて貰わないとな」

「きゅー」


 そんな訳で暇な時間を使ってルリルを洗うのを終え、村へと帰還する。




「お帰り、ロネットたち。なんかあっちでまた絡まれたって聞いたけど」


 帰るなりルアトルが俺たちに事情を聞いてきた。


「ああ、あいつら俺に絡むのがそんなに好きなのかね。石を投げるのが好きなのも大概にしてほしいもんだ」


 投げられない状況ってのもある事をしれよ。

 村中の奴も好き勝手出来るからか随分と調子に乗っているみたいだ。


「なんて言うか……力を得たから俺で実験してやるって感じだったな」


 Lv86だぞ! どうだすごいだろ! って感じの態度だった。

 その割には随分とお粗末というか……なんだろうな?

 Lvよりもステータスの伸びとかが大事なんじゃないのか?

 あの聖女が大器晩成とか言っていた所を見るに、本気で弱いんだろうな。


「ルアトル、ルリルを暇な時間に洗ったから乾かすためにたき火を起こしてくれ」

「はいはい」


 薪を貰ってルアトルに火を点けて貰い、ルリルを乾かす。


「アキヒコさん、あんまりふらふら出歩かない方が良いんじゃ無い? やっぱり」

「……ルリルも居るしそこまで離れちゃ居なかったんだ」

「きゅー……」


 ぺたんとルリルが耳を下げて俯く。


「しかし……あちらさんの勇者様はLv86か、アキヒコの伸びが良いねって思ったけど、あっちはすごいね」


 俺はライムの所為でLv5まで一度下がってたの! と何度も言ってるのに反応薄いな本当。

 信じて貰えているのか激しく怪しい。

 ただ……まあ、このLvの上がりも俺が弱いから何の不思議も無いって事なんだろう。

 そもそも囚人補正の影響で経験値の大部分を没収されているしな。


「そんで、村の方はどうなってる?」

「今の所、アサシンアナグマたちの襲撃は無いね。アキヒコが移動スキルでついでに冒険者を連れてきてくれたでしょ? 彼らが討伐に出て出現率が下がっているか試している所だね」


 そんな統計的な事がすぐにわかるのかねー。

 ただ……なんかちょっと暗いような感じが大分薄まっているような気がする。

 これが問題である主を倒したって事なのか?


「水源も割とすぐに綺麗になって来てるし、ほとんどの問題は片づいたよ」

「それは何より、倒したボスの取り分の話し合いは終わったか?」

「もちろん、今回の功労者はアキヒコだからね。取り分は一番大きく貰ったよ。ドロップ品で遺品なんかが見つかったら一端献上になるけどね」


 今の俺の立場は囚人な訳でドロップ品の類いはロネットたちへ献上扱いだ。

 ただ、登録などはその適応外なので登録ボーナスはありがたく頂くとしよう。

 って事で穴の中で半分も残っているル・カルコルの死体を俺は腕輪に納める事になった。登録に必要数が間違いなく超過してるのがわかるぞ!


 ル・カルコル 3/3 ボーナス 防御+10 体力+12 水耐性+30 条件達成!


 なかなかの水属性耐性、さすがはボスを登録したって事かな。

 ドロップ品は……うん。冒険者の遺品らしき装備が多いな。あ、ミスリルソードがある……独り占めしたくなるけど献上しないといけない。

 それとル・カルコルの皮とか殻、水袋に心臓とか色々と素材がドロップに混じってる。

 後はル・カルコルのドロップ装備品かな? ル・カルコルスピアなんて槍がドロップしている。

 カタツムリみたいな魔物だから角出せ槍出せって事? しかもかなり性能が高そうだぞ。俺じゃ把握しきれない。

 とりあえずドロップ品を腕輪からどんどん出すぞ。


「こりゃあ大量だね。アキヒコは」

「半分も入れりゃそうなるだろ」

「ル・カルコルに消化されてそうなものもどんどん出てきて、ギルドに報告しても依頼以上の報酬が戻って来そうだね」

「ミスリルソードが混じってますね」

「身の丈に合わない冒険者が持っていた武器なのか上位冒険者が油断して負けてしまったのか……だね。どちらにしても報告しておこう」

「それと……ル・カルコルスピアです」

「おっと、こりゃあとんでもない値打ち物が出ちゃったね」


 こりゃあ大変だって感じでルアトルが飄々とした感じで答える。

 どんくらい値打ち物なんだ? ファナを見る。


「上級に入ったくらいの冒険者が貯金して買うくらいの品かしら? 水属性で毒スキルも使えるし一本あれば当分武器には困らないわね」


 槍の精製武器の使い手なら喉から手が出るほどの品でしょって補足が入る。

 へー……そんなすごい代物なのか。

 まあ、倒した魔物の素材で作る武器と、その魔物の力を凝縮して作り出されるドロップ品じゃ性能の違いは大きいか。

 鍛冶師だけでは賄えない運が作用する領域の品なんだなー。

 ロネットが俺やルアトルを何度も見て困ったような顔をしている。


「所有権はアキヒコの管理をしている君の物だけどどうしたいんだい?」

「相応にアキヒコさんとルリルちゃんに与えたいと思っていますが、些か多すぎて困りますね……」


 あー……なんて言うの? 子供に買ってあげた宝くじで一等を当てちゃった親の心境みたいな気持ちにロネットがなってるように感じる。

 俺の場合はなー……やってもない罪で稼ぎは没収って事になってる。

 ライムがやらかしたって事の賠償金ならわからなくも無いけどさ……俺の罪だって言うのは訂正したいんだよ!


「しかしアキヒコ、運が良いのか悪いのか全然わからないね。変な所で災難に遭うのにドロップ運は良いなんて……あれじゃない? 取られる事が決まってるから運が良くなる的な」

「きゅー!」

「うるせー!」


 本気でうるさい!

 俺だって気にしてんだから態々言うなっての!


「そういう意味じゃ運が悪いかもね。本当は俺の物になるはずだったのにって」

「余計なお世話だ!」


 不幸キャラ属性を定着させようとすんな!


「どっちにしても俺には使えないんだからどうでも良い」

「……相応分の物資にしてアキヒコさんの強化に回しましょうかね……貸し与える武具って扱いだと限度がありますし、上に目を付けられるかもしれませんからね」


 ああ、腕輪に登録する用の素材を購入してくれる形か、それなら助かる。

 ミスリル鉱石とか必要数揃えれば相応に強くなれるし。

 高額で処理されるならそれはそれで良いな。

 スキルなんかも習得出来たりするし、単純に強化にも繋がる。


「もちろん、アキヒコさんに課せられた賠償金にも充てますけどね」


 ロネットの念押しの声は聞かない。

 それでも無いよりマシの臨時収入、ありがたく物資を後で貰うことにしよう。


「大きなウサギー」


 そんな感じでロネットと話しているとルリルに村の子供たちが近づいて恐る恐ると言った様子で近づいて見て来る。


「きゅう?」


 ルリルはそんな子供たちに対して小首を傾げるように鳴いて答える。


「わーふわふわー」


 たき火を受けて徐々に乾きつつあるルリルの毛並みを子供たちは凝視しているようだ。


「撫でて良い?」

「気難しい奴だからなー……」


 俺以外に懐く気配は無いって態度が時々あるからどうか気になるが。


「きゅう!」


 良いよって感じでルリルが頭を下げて微笑む。


「良いみたいだ。あんまり乱暴にすると怒ると思うから注意して撫でてくれよ」

「はーい!」


 で、村の子供たちは代わる代わるルリルを撫で始めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 運が良いのか?悪いのか?で言えば、 冤罪と賠償金がレアアイテムより莫大に 有るので運は悪いでしょうね、、、、、、、。
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