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49 洗濯


「キュウ」


 ルリルは俺が寄りかかっている所為なのか機嫌が良さそうだ。

 Lv20……順調と言えば順調だけどライムを逃がして1ヶ月は過ぎている。

 解き放たれたあいつがどこでどんな成長をしているかわかったもんじゃない。

 できる限りLvを上げていきたい所だが……この調子だとどこまで行けることやら。

 何かギルド内でわかる情報は無いかと掲示板を確認する。

 少しくらいは文字が読めるぞ。

 賞金首系の依頼が張り出されていて討伐済みなのかよくわからないがスタンプが押されている物も多いな。



 達成済み

 カーバンクル 捕獲×× 賞金額 20000 目撃×× スータ草原××ダブラー平原へ××を確認

 罪状 里親に懐かず魔物使いの元から逃亡

 備考 希少な魔物××に捕獲に××賞金を払う。様々な××の力を××魔物。額の××に××。複数の××者を撃退しているので注意。ジェリームへの殺意が強く死体が××××れた場合近くに××可××あり。配下に×××××を連れている。


 達成済み

 デスラビット 賞金額 30000 目撃×× レノザ山脈××ダブラー草原へ××を確認

 罪状 ××地域外の出現××魔物

 備考 地域外出現の為××。首を刈り取る即死××を所持。複数の××者が挑み敗走、幸い××者無し。ジェリームを××台に×を試している××確認。××するので見た目に油断しないように。配下に×××××を連れている。



 なんかイラストだけどウサギ型の魔物が多いな。

 カーバンクルの日付が3週間くらい前で2週間前にデスラビットね……。

 あ……これ、ルリルの依頼じゃ無いか?


 達成済み

 ジャイアントアルミラージ 捕獲×× 賞金額 500 目撃×× 町ダブラー××ナロロ草原×隣

 罪状 里親に懐かず魔物使いの元から逃亡 ※所有者の魔物使いと共同で捕縛すべし

 備考 大型のウサギ型の魔物。ダブラーの町×隣で目撃を確認。ギルドにて××があるので匂いでの××を行う場合、配布。



「お前の依頼やっすいなー」

「キュウううう」


 安すぎて誰もやらないんじゃ無いか? ってくらい低いぞ、ルリルの捕獲依頼。

 しかも賞金首の絵というか写真がズームされた奴なんだけどドヤ顔のピースしてるみたいだし。

 ふざけているようにも見える。どこまで余裕を見せるんだ?


 なんかよくわからんがこの辺りだとウサギの魔物がよく出現していたっぽいな。

 ルナティックムーンの影響なのかねー……。

 もちろん、犯罪を犯した冒険者なんかも張り出されていて魔物だけが賞金首ってだけじゃない。

 等と思いながら何か手がかりが無いかと掲示板を確認するが……ライムらしき情報は確認出来ない。

 骨折り損か……。


「きゅううう」


 ふむ……ルリルの毛並みが乱れてるな。

 ファナにも使っているブラシでルリルの毛並みを整えるか……無駄にでかいからな。

 というかアサシンアナグマやル・カルコルとかを仕留めている訳だから返り血とかで汚れが目立ってきている。


「ロネット」

「なんです?」

「ルリルが汚れてるからそこの井戸で洗って居ても良いか?」

「きゅー」


 洗われるのわかってんのかお前?


「良いですよ。ふふ、ルリルちゃん頑張りましたもんね。アキヒコさんにきれいにして貰ってください」

「きゅううう!」


 ご機嫌に返すルリルだが、本当にわかってんのか?


「クールタイムが過ぎた頃に連れて行ってほしい奴を案内してくれ、いつでもポータルを出すから」

「はい。石鹸を渡しますね」


 ロネットから石鹸を貰い、俺はギルドの裏手にある井戸まで来てルリルに軽く水を掛ける。

 さて、これで洗われると知って暴れるかだな。


「きゅ」


 ルリルはおとなしく伏せの姿勢を維持していた。手の掛からない事で、昔の事がまるで嘘みたいな状況だな。


「本当はお湯でも用意出来ればもっと洗いやすいんだろうけどな……」

「きゅ、きゅうう……」


 俺のつぶやきにルリルが反応しがたいと声を出す。

 毛頭使う気は無いが魔物使いのスキルにも無いし腕輪のスキルにも無い、種族スキルなんて増えるか激しく謎だ。

 とりあえずルリルを洗おうと水を掛けてから石鹸で泡立てようとしたのだけど、ルリルの毛が濡らすと同時にべったりと何かが固まっていた。

 何だろうかと確認すると固まったシロップのようだ。


「お前の毛、洗おうとするとシロップが固まって難しいみたいだな」

「きゅ!? きゅうう!」


 洗ってもらえないと察したのか蜜生成を作動させて蜜を一カ所に集め出した。

 うーん……やっぱ汗なのかなこいつの蜜。

 どうも昨日から俺の匂いも甘くなってきてる気がする。

 で、集まった蜜を……面倒だから腕輪の中に直接入れておこう。


「きゅ!」


 これでどう? っとばかりにルリルは自らの毛並みを口で解いて確認してから鳴いた。

 はいはい。最低限どうにかなりそうだな。

 再度水を掛けてから石鹸で泡立てて洗う。

 さっきの蜜……アサシンアナグマとかの返り血混じってる事にならないか?

 大丈夫じゃないよな……腕輪の登録の方に使うか。


 上級メープルヒールシロップ 15/15 ボーナス 回復スキル効果向上3 条件達成!


 なーんかそこそこ優秀な能力を獲得してしまったぞ。

 ルリルの生成するシロップってどんだけ品質が良いんだ?


「きゅうきゅーっきゅー」


 ルリルがご機嫌で歌みたいに声を上げている。

 俺はそのままルリルの体を黙々と洗い続ける。

 なんかこれ、何かに似てるような気がする。この大きさ……洗う感覚……あ、わかった。

 ブラック企業故に命じられた上司の洗車業務でやった奴に似てるんだ。

 生憎、車にはこんな毛並みは無いけどこの晴れやかな空の元、水場で大きなルリルを洗うのは洗車のそれに酷似している。

 村中以外の上司の車も洗わされたっけ……本当、クソな会社だと今にして思えるな。

 しかも俺が洗ったのに村中の手柄になったんだ。


「きゅー」


 ……ルリルは俺の愛車か? 愛車なんて持てるほどの給料は無かったけどな。

 なんて考えながら黙々と洗う。

 泡立て過ぎてルリルがモコモコの泡お化け状態になってるぞ。泡立ち過ぎて何かわからなくなっている。


「きゅう……きゅう……」


 こんな洗われる状況でよく寝息を立てられるな。

 ルリルの奴、機嫌が良すぎて寝てやがる。


「ぬ! そこに居るのは犯罪者の海山じゃないか!」


 ここで聞きたくも無い声が後方から聞こえてきやがった。

 どうしてここにまだ居るんだよお前は!

 イヤイヤながら振り返ると案の定、村中がクソ聖女ことマリーゼと一緒にこっちに向けてヘラヘラした表情で指さしていた。

 ファナが俺に言った運が悪いってのが真実味を帯びてきた。

 もうファナかロネット、ルアトルのそばから離れないようにすべきか?


「なぜ犯罪者となった貴様がここにいる? 脱走だな!」

「……雇用されて刑務所から出ているだけだろ」

「貴様の言い訳など聞いていない!」

「まだこんな所にいたというの? いい加減、罪を認めて刑務所に戻りなさいよ! この世界に馴染めない邪悪な男!」


 言い訳じゃないが……一昨日あれだけ追い詰められて俺とファナの両方にボコボコにされていたにも関わらずまだこんな事をぶちかませるのかこの女……本気で頭悪いんだな。

 普通なら苦手意識の一つでも抱いて、見かけたら避けないか?

 どう考えてもトラブルになるんだし……まあ、コイツ等はトラブルを起こす側か。


「犯罪者の海山! 見ているが良い! 俺がこの世界で強くなって作り出した武器を!」


 ……ロネットに報告に走るべきか? ギルドの連中もこの状況だとコイツらの味方になりそうだな。

 なんて思いつつ、村中が腰の剣を抜いてムン……っと剣に手をかざして精製武器化を施す。

 すると元々の剣よりも折れ曲がったショボそうな波打つ剣が形作られる。

 ……精製する前の方が切れ味良いんじゃ無いか?

 フランベルジュにしたってでこぼこ過ぎて切れ味が期待できないのがわかるぞ。

 逆に不安になってきた。アレが勇者様の剣なのか?


 本当にこの世界に居て、大丈夫なんだろうか?

 世界の滅亡に巻き込まれるとか、俺は嫌だぞ。

 滅べとかいつも思っているけどさ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 達成済依頼はルリルの成長の軌跡? 最後は一気に賞金落ちたな。
[一言] ルリルちゃんは聖女(笑)と村中をボコボコにしていいと思う… いや、腕輪がダメージを受けるとルリルにもダメージが行くわけで…聖女(笑)たちがルリルにボコられる未来は確定かwktk
[気になる点] ウサギ型魔物のジェリームへの殺意がなんか凄いな
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