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44 キリングアナグマ


 嘆いていたって始まらない。

 降りかかる火の粉は払うまで!


「行くぞ!」

「キュウウウウ!」


 ルリルは近くに転がっている石を口に含んでプッ! っと狙いを定めるスナイパーアラヤマに向けて放ち、眉間に命中させる。


「グギャ!?」


 たまらずスナイパーアラヤマは悶絶して転がる。


「ギャギャ!」


 そんなルリルの狙撃を余所にキリングアナグマが村人に向かって鋭い爪を振りかぶる。


「うわぁああああああ!」

「セイフティーサークル!」


 村人を守るように結界を生成、結界は即座に砕けるけど一撃だけ受け止める。


「ホーリーボール! プロテクション!」


 ロネットの魔法がキリングアナグマに命中してキリングアナグマがわずかにダメージを受けて距離を取って再度飛びかかった。

 その間に魔法障壁が作り出された魔法障壁に爪がぶつかり火花が散る。

 が、魔法障壁はびくともしない。

 プリーストのロネットが作り出した魔法防御の壁だ。

 俺の展開するセイフティーサークルなんかよりも強固な壁であり、攻撃から人々を守っている。


「早く下がって! アキヒコさん! あなたの手に余る相手です!」

「ギャギャ!」


 今度は俺たちが獲物だとばかりにキリングアナグマが俺が乗るルリルに狙いを定める。


「キュウウウ……」


 ルリルはキリングアナグマに向けて姿勢を低くして唸る。やる気は十分って感じだな。

 いけるかどうかの判断だが、ルリルの足の動きからしてまだ速度は上に感じる。

 腕輪を装備させた所為か、より機敏に動いている。

 キリングアナグマの狙いは……背中に乗る俺か、そう易々と狙われてたまるか、姿勢を低くしてほぼルリルの背にひっつく姿勢で俺は片手はルリルの首に掛けた腕輪を握り、もう片方の手で狙いを定める。


「キュウゥウゥウウ」


 いや、なんか機嫌の良い声を出すなよ。

 気が抜けるだろ。


「ギャギャギャ!」


 高速ステップで分身するような残像を出しながらキリングアナグマはこっちに突撃してくる。

 三つに分かれた!

 ヤバイ! そう思ったところでルリルの耳がピクッと動き、分身したキリングアナグマの一匹に狙いを定め、飛びかかってくる高さより上にジャンプ、大きく口を開き……ガブリ! っとキリングアナグマの首根っこにルリルは歯を突き立てた。


「ギャ!? ギャ! シャアアア!」


 首根っこを咥えられたキリングアナグマは体をくねらせて反撃しようと爪を立てるのだが、直後――。


「ギュ――」


 ザシュッと言う音と共にブシュウウウ! っと鮮血がルリルの顔を染める。

 ルリルの噛む力が強かったのかキリングアナグマがやりたかった急所狙いの一撃をルリルは身をもって味合わせた。


「キリングアナグマがあんなにもあっさり……!?」


 ロネットが声を上げる。

 ルリルの様子から見て、わずかな足音でどれが本物なのか見抜いていたって事だろう。

 速度も速くはあったがルリルの方がまだ早かったし、下がるにしても一度いなさなきゃ距離をとれそうもなかった。

 そのまま流れるように刈り取ったキリングアナグマの頭をブンとソルジャーハクビシンに向けて投げつける。


「ギャ!?」


 仲間のあっけない最後と斬首された頭部をぶつけられてソルジャーハクビシンは目を白黒させている。

 隙だらけだぞ!

 マジックショット連続発射でウサギ型の魔弾がソルジャーハクビシンとスナイパーアラヤマに飛んでいく。

 ドスドスと命中して二匹は体勢を崩した。


「今だ! 一気にたたみかけるぞ!」

「あのジャイアントアルミラージと魔物使い、すげーな!」


 なんて声がしつつ隙を見せた二匹へ戦える村人が追撃を仕掛けた。

 数が多ければどうにかなるとばかりに村人たちの猛攻を受けて残り二匹はまともに動けず制圧される。

 もちろんアサシンアナグマたちもいるので現場は戦場と化しているけれど、将軍だったキリングアナグマたちがやられた光景を目の当たりにして一匹、また一匹とウサギを前に脱兎如く敗走を始めた。

 それもあって上手いこと倒せた形だな。


「アキヒコさんにルリルさん……」


 ロネットがそんな魔物共の敗走に目を向ける俺たちの所にやってくる。


「けがはありませんか?」

「俺は無い。ルリルがキリングアナグマより動きが早くて助かった」

「ルリルちゃんの動きがとてもよかったですね。まさかキリングアナグマをあんな簡単に倒せるなんて」


 俺の体感だと格上って感じる魔物なんだが、実際の強さはどの程度なんだ?


「ルリルが勝つとおかしい相手って事か?」

「アキヒコさんの力でルリルさんの能力が引き出されたと考えたら勝てるのかもしれないと言った所でしょうか……」


 そんな返答をされてもな。


「アサシンアナグマの上位であるキリングアナグマは即死攻撃を狙ってくる危険な魔物でして、アサシンアナグマに勝てるからと侮ると命を持って代償を支払う事になりかねない相手です」


 当然、強さも数段上だとロネットは教えてくれる。

 まだ経験が未熟な個体だったか、進化して日が浅かったのかもしれないとも補足される。

 どちらにしても追い返す事ができたのだから良いとするか。

 村人たちも襲撃が終わった事を安堵している。


「新しいけが人はこちらへ、手当をします!」

「ああ、助かる!」

「アンタたちが来てくれたおかげで本当、助かった!」


 などと礼を言われた。


「キュウ」


 手で口元を拭うルリルが答える。

 さて……俺もルリルの背から降りるか。

 戦闘結果に関してだけど……お? 上位モンスター共を倒した際に結構良い感じに経験値が入ったようだ。

 Lvが3も上がっている。それだけ経験値をため込んでいたんだな。

 今日は合計Lv5も上がったのは大収穫だ。


「っで、ロネット。魔物の死骸はどう処理するんだ?」

「そうですね……皆さん、倒した魔物の処理をしたいのですが、キリングアナグマはいただいてよろしいですか? ウォーリアハクビシンとスナイパーアラヤマは山分けで」


 ロネットの提案に村の戦える奴らが顔を見合わせながら頷く。


「そうだな……正直、死人が出るかもしれないって位のヤバイ魔物の襲撃だったけど、一番の手柄はそこにいる魔物使いとその魔物だしな」

「ああ……あっさりキリングアナグマを倒したお陰で襲撃を切り抜けられたんだし、倒したやつのもんで良いだろ」


 という話が進んでいるけど、中には囚人なんだから分け前なんて不要だとか意見する村人も混じっていた。

 けれど、俺とルリルが治療した村人が強く前に出て囚人関係ないだろと話をした結果、キリングアナグマは俺たちのものとして処理するのが許可された。


「分け前はどうする?」

「私はキリングアナグマから村の方々を守るだけでしたし、アキヒコさんとルリルさんに譲りますよ」

「キュー!」


 それじゃキリングアナグマは俺が貰うって事になるのね。

 一応、上位個体……ここじゃプチボスって感じになるのかな。

 ありがたく頂くとしよう。

 腕輪にキリングアナグマの死体を入れて。



 キリングアナグマ 1/20 ボーナス 攻撃+7 素早さ+5



 まあどこかで本来の生息地とかあるんだろうからボーナス取得はこの際期待はしない。

 それより毛皮とかにバラして腕輪にするなり加工するのが良い……はず……?


「ドロップ品は……キリングアナグマの毛皮と、キラーアナグマポイズンダガー、それとムジナハット」

「アキヒコさんドロップ運良いですね。防具まで出るなんて、進化する際に力を消費するでしょうからドロップは期待できないかと思いましたが」


 ああ、栄養的な側面で考えると成長する際に大きくカロリーを消費するだろう、と。

 魔物にちなんだドロップ品は魔物のため込んだ力が形になるわけだし。


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― 新着の感想 ―
[一言] >>中には囚人なんだから分け前なんて不要だとか意見する村人も混じっていた。 でも、その囚人を連れてきた主人には分け前は必要では? そして主人公達に分配された物を、その仲間内でどう分けようが…
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