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41 ドロップ

 そんな訳で俺達は目的の村へ向かいながらアサシンアナグマ達を倒して行った。

 道中でウォリアーハクビシンと言う突進が強力な魔物も現れたが仕留める事が出来たぞ。

 なんて感じに順調に進んで本日4度目の遭遇をしたアサシンアナグマを腕輪に入れた所でピコン! っと腕輪が反応した。


「ドロップだ」

「おや? アサシンアナグマでは珍しいね」

「そうですね」

「キュウ」


 俺はロネットに向けて腕輪を見せてどうするか尋ねる。

 ルリル、お前には言ってない。

 魔物を腕輪に収めると時々、音と共にドロップ品が反応するのだ。


「アサシンアナグマから精製されるのは……クリティカルアナグマダガーでしたよね」

「出すぞー」


 腕輪に手を突っ込んでドロップ品を提出する。

 一振りの短剣が出て来た。

 クリティカルアナグマダガーの様だ。

 文字通り急所に当てると必殺効果のあるらしい短剣なんだそうだ。攻撃力は……アサシンアナグマといい勝負が出来る冒険者からするとやや高めなんじゃないだろうか?


「ちょっと鑑定しますね……あ、品質や効果が良いです。クリティカルアナグマダガーの中では高値で売れますよ」

「へー……」


 そういわれても俺は腕輪縛りで使えない。

 ロネットもルアトルも魔法使いって感じだから護身用に使うとかその辺りか?

 ルリルは魔物だし、爪か角兜とか装備させる感じか?


「ファナが使うか?」

「私が使うと折れちゃうよ? その程度の武器じゃ」

「初心者上がりの冒険者が持ってる程度の武器だからね」


 Lv10前後の冒険者が使うには丁度良いって理屈なんだろうな。


「一応所有権は雇用主の私の物になりますけど……」


 ああ、やっぱりそうなるか。

 せっかくの収入も奉仕って事で毟り取られて手元には何も残らない。

 着服するのが良いって発想は無くはないけど短剣なんて俺には使えないんだから無意味だ。

 素材として腕輪に再度吸わせる程度か。物が物だから1個でボーナスは得られるだろう。

 クリティカルアナグマダガーを入れた場合、アサシンアナグマ5匹相当入れた扱いだったっけ。


「しかし……なんで魔物を武器に入れたらドロップが出てくるんだか」


 村中じゃないけどどんな物理法則でそんな代物が出てくるのか全くわからん。

 まあ、グレートマッドサラマンダーの時は胃袋にあった物が入っていたって思えば不思議じゃないけどさ。

 漠然とRPG的なドロップ品と認識していた。


「アキヒコさんはやっぱり異世界人だから知らないのですね。ドロップがどういった原理で得られるのか」


 そんな俺の疑問をロネットが知っているとばかりに答える。


「何か理由があるのか?」

「アキヒコさんが今持っている腕輪と関わりがあります」

「これと?」


 ルアトルも説明に参加するように口を開く。


「正確には特殊武器と精製武器だね。原理的に言えば……ドロップと言うのは倒した魔物の中で生成された力が魔物の中で形となり、武器に収めた際に異物として吐き出された物なんだ」

「……所有者の死と同時に精製武器は固定化されて大抵の力を失うけど、それでも形を成すの。この短剣は落としたアサシンアナグマの生きた証、それだけ力を貯め込んだ個体だったって事……」


 つまり……ドロップ品って魔物たちの精製武器と……。


「んじゃ俺が死んだら腕輪をドロップするって事か」

「キュウウ!」


 ルリルが何やら声を上げて不満そうに足踏みをしている。

 なんだ? 不謹慎とでも言いたいのか?

 お前の場合は……ヒールシロップか?


「そうなるね。ただ、アキヒコが生きていた頃のような能力は失われ普通の腕輪となるかな。生前のような力は無いよ」


 なるほどね。


「じゃあこのクリティカルアナグマダガーは剣の精製武器を使う奴が扱うとどうなるんだ?」

「良い所に気づいたね。武器の相性の関係でアサシンアナグマが使う急所狙い技能が使えたりする」


 そういった要素もこの世界にはあるのか……奥が深いつもりか?

 俺は腕輪だぞ? 使いづらいわ!

 それより加工したり店売りの腕輪を使った方が楽だろ。

 ともかく、この世界の仕組みな訳か。


「……死んでも武器として使われるってかわいそうよね。生きていても武器だけ使われるのもどうかと思うけど、便利だからって頼りすぎるのは甘えよね」


 ファナがポツリと、そうつぶやく。

 そういえばファナって滅多に精製武器を使わない、元がシャーマンだったんだっけ?

 俺の治療をする際にマリーゼの奴が落とした杖を変化させて魔法を使っていたからおそらく間違いない。

 バーサーカーだけど杖が精製武器って事なんだろう。


「人間も死んだら武器をドロップするってか? 武器に収める奴がいるかは知らないけど」

「人の場合は死んだらその場で落ちる。基本的には棺に共に埋葬される……例外もあるけど」

「遺言とかで家族の元に届けるとかもあるね。代々媒介として始祖の武器を修理しては使ってるって家系なんかもあるそうだよ」


 異世界独自の文化か……それもある意味継承なのかねー。

 聖剣とかもこの世界だと過去の勇者様って奴の生きた証として保管されてるんだろうなー。


「教えてくれてありがとう。んじゃさっさと次行こう」




 そんな訳で俺達は増えすぎたアサシンアナグマを倒しながら夕暮れ時になった頃、目的の村に到着したのだった。


「本当、随分と増えていたみたいですね」

「異常繁殖って次元ね」

「俺には良い経験値だったけどな」


 道中だけでLvが2程上がったぞ。

 次のルナティックムーンまで時間が無い分、1日でこれだけ稼げるなら大収穫だ。


「キュウ」

「では村の方と話をしてきますね」


 ロネットが代表で先頭に立って俺達は村に入る。

 村人たちは若干暗めで俺たちの様子を遠目に見ている感じだ。

 相変わらずこの世界の連中ってのは感じが悪い奴等ばかりだな。

 とは思ったが、村人が表情を明るめにルアトルに向けて声を掛ける。


「アンタたち、外からやって来たのか?」

「そうだよ。道中、随分とアサシンアナグマたちと戦ったけどね」

「そりゃあ助かる。どうも異常出現しちまって厄介な魔物だから対処に困ってたんだ。本当に助かるよ」

「で……」


 村人は俺とファナの……胸元に視線を向けて眉を寄せる。

 ああ、囚人の刻印が気になるのか。

 囚人に人権は無いってな。

 そこからさらにルリルへと視線が向かう。


「キュー」


 何? って感じにルリルが小首を傾げる。


「よく村に来てくれた。受けてくれた依頼はアナグマ共の討伐だけかい?」


 俺達は無視の方向で行くようだ。

 楽っちゃ楽な対応だな。

 絡んできて妙な因縁を付けられるのはごめんだ。


「それと一緒に水源を占拠している魔物の討伐も受けているよ」

「そ、そうか……それは助かる……」


 なんだろう?

 それだけじゃないみたいな反応だな。


「何か他にもあるのかい? 場合によっては対応してあげようと思うけど」

「い、いや……さすがに図々しすぎるさ。アナグマ共がいなくなったんだ。アンタたちはそっちの依頼をお願いするぜ」

「そう? とはいえ気になるから何を頼もうとしたのか位は聞いていいかい?」

「いやな……アナグマ共の所為で商人の交流が途絶しちまっていて買い出しの護衛を依頼してたんだ。食料はギリギリどうにかなってるけど他の必需品まで無くなってな。しかも、定期的にアナグマ共が村に来やがってけが人も増える一方、回復魔法が使える僧侶様もお疲れになってるくらいなんだ」

「こりゃあ色々と都合が良さそうだね。アキヒコ」


 うえ……ここで俺の出番かよ。


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[一言] くそ聖女がてできそうだな
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