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39 ポータルゲート


「そのシロップを売れば良い値で引き取って貰えるじゃろう。囚人ならば金銭は没収されるじゃろうから必要な品を交換で手に入れるのに良いとわしは思うがの」

「レイベルクさん、あまりそう言った悪知恵をアキヒコさんに教えないでください。アキヒコさんが円滑に活動するのに不便にならない程の金銭は持たせるつもりではありましたが……」


 ロネットがレイベルクへと注意した。

 ふむ……ルリルから採取した蜜でヒールシロップを作って店で交換交渉か……。


「ヒールシロップね。パッと思いつくんだとルリルから得た蜜を煮詰めりゃ良さそうだな」

「それは一つの作り方じゃな。正解は煮詰めた後に魔力を込めるんじゃ。じゃが、スキルによる簡易精製をその子は出来るようになっておる」

「キュー!」


 ルリルがそう鳴くとキラキラとルリルの体から光の粒が出て集まって行き、目の前に水玉が精製された。

 浮かぶ水玉を確認。ヒールシロップと出ている。

 使用済みの空き瓶を出すと、ボチャっと瓶の中にヒールシロップが入った。

 ……楽だな。


「キュキュ!」


 ほら! グイっと飲んで! って言ってる気がする。

 一気に飲むもんじゃねえよ! せめて水で薄めろよ。

 いや……汗を集めたみたいな代物に感じるから幾ら甘くても飲むのはきついぞ。

 ちなみに匂いはメープルシロップのそれだ。


「では早速ギルドに報告しておくから君たちは次の仕事に向かうと良い」


 と、レイベルクは背を向けてスピリットウルフを連れて去っていく。


「ああそうそう、君の武器は腕輪であるようじゃが、首輪でもある。使役する魔物の首に掛けることでその子はより力を発揮できる。腕輪を付けた魔物こそ、君の真の武器じゃよ」


 腕輪をルリルの首にかけて武器と認識させるってか?

 一番嫌な腕輪の運用方法だぞ。この腕輪は敵の首にかけて締め上げるもんだ。

 そうしてレイベルクは話を終えて行ってしまった。


「魔を払う聖獣へ至るか、人々の黄昏となるか……これも獣神を宿す者との因縁かもしれんな」


 小さく、先ほどの温和な口調とは違う声音で呟いて……。


「まったく……なんなんだ、あの爺さん。手が焼けるから俺にルリルを返却に来ただけなんじゃないのか?」

「キュウウ!」


 ルリルの奴は俺に頭をこすりつけるのをやめない。

 段々と支給されたローブから甘ったるい匂いが漂い始めてきたぞ。


「ルリルちゃんはアキヒコさんの仲間になれてとても嬉しそうじゃないですか」

「これで頼りなくて運が悪いアキヒコも少しは運がよくなると良いね」

「なんで?」


 ファナがなんかルリルと一緒にいると運がよくなるみたいな話をしている。

 何かあるのだろうか?


「アキヒコは知らないよね? 魔女たちの話でね。ウサギの足って幸運のおまじないに使う道具なんだよ」


 ああ、そういった話があるのか。


「ルリルの足は魔女からしたら幸運の足ね。それで俺の不運が解消したら幸いだな」

「キュー!」


 ルリルが前足を上げて俺の運がよくなりますようにって俺の頭の上で振っている。


「やめろ!」

「ははは、ともかくこれだけ早く仕事が終わったんだ。次に行こうじゃないか。それで……ルリルだったね。これだけ大きい子なんだから背中に乗せて貰って素早く移動とかしてもらえると今後移動が楽そうだね」

「移動? そんなもん腕輪のスキルでポータルゲートを覚えれば行きだけで済むだろ」


 弱体化するまでポータルゲートって移動スキルを使えた。

 最大距離は思ったより無いけど結構便利な瞬間移動スキルだったぞ。


「名前的に瞬間移動スキルかな? 凄いね。上位クラスの精製武器で使えるようになる人が時々いるってスキルなのに」

「アキヒコさんが異世界人だってこういう所で分かりますね」


 なんか感心されて褒められているような気がするけど、バカにもされているような気もする。


「そんな難しいスキルだったのか?」

「空を飛んで移動する魔法を覚える人の方が多いくらいにはね。ちなみにどうやって習得するか覚えているかい?」

「ミスリル鉱石を腕輪に入れて解放したら出たぞ」


 ここでロネットとルアトルが俺とファナ、ルリルから背を向けて小声で話し始める。


「キュー」


 バッとルリルが俺の後ろで耳を二人に向けて広げる。

 なんだその動きは?


「ロネット、アキヒコは本当の事を言ってると思うかい? ミスリル鉱石ってそこそこ値が張るよね」

「応答自体に嘘は無いので本当なんだと思いますよ。ただ、ミスリル鉱石をアキヒコさんに購入して渡すにはお財布にちょっと厳しいんですけど……」

「ミスリル鉱石で登録するのに必要な量にも寄らない?」


 おお? 音が若干大きく聞こえる。

 凄いぞ大きな耳。これが集音か。


 しかし……移動スキルをそんなにも俺に使ってもらいたいのか?

 ちなみに俺がミスリル鉱石を手に入れたのは単純にライムが欲しがったので少し溜まっていた貯蓄で購入したものだ。

 で、ライムの食べ残しを腕輪に入れたら解放されたに過ぎない。

 思えばアイツ、食い汚くなってきてたな。


「ミスリル鉱石を一欠けらくらいで出たぞ」


 補足とばかりに二人に教えておく。


「ず、ずいぶんとリーズナブルですね」

「ロネット、それならさ」


 ちょいちょいとルアトルが内緒話を継続している。

 聞こえてるんだけどさ。


「君のミスリルスタッフの先端を切り取ってアキヒコに渡せばわかるんじゃないかな?」

「あ? あー……確かに私の杖はミスリル製ですね。ちょっと削りましょうか」


 ここでケチる選択をしないロネット達はライムよりは人格が良いと判断する他ないか。

 これが看守だったら刻印が作動しないのに嘘を言うな! って殴ってくるんだろうし。

 で、ロネットが杖の先端の若干削れている所に魔法を照射して形を整えながら欠片を切り出した。


「アキヒコさん、これを使ってください」

「あー……わかった」


 実は腕輪の貴金属って感じで嵌めるのだけでも性能が上がるんだけどな。

 腕輪の輪の中に入れる。



 ミスリル 0.1/50 ボーナス 段階条件達成 ポータルゲート



 ミスリルを僅かに入れるだけで習得できるって結構リーズナブルだよな。

 最低条件を満たしたって事なんだろう。

 ちなみに次に習得するのが10個入れるとマジックショット強化と出ている。

 地味に優秀だからミスリルは集めて積み重ね強化をしたい。高いからあんまりできないのが難点か。


「覚えましたか?」

「あいよ。ポータルゲート」


 パッとスキルを発して腕輪を地面に置いて登録。

 少し離れた所に腕輪を投げてポータルゲート再度使用。今回は発動だ。

 サークル部分から淡く光が放たれる。

 俺はそのままサークル内に入ると、光が強まり最初に使用した場所に出る。


「ん」

「おお……」

「本当にできました」

「キューーー!」


 ルリルがパンパンと両手と耳で拍手している。


「アキヒコ、結構便利なスキル使えるのね」

「今にして思えばこんなスキルがあるのに船で王城に行ったのはなんでかと思ったが、珍しい方のスキルだったからなんだな」


 使い手が少ないね。

 一番の問題として刑務所に戻った際に、許可なくこれを使って移動すると刻印が作動してアウトって所だな。

 上手く出来てるって事か。


「登録できるのは一か所だけだけどな。腕輪の分マイナス1だけ出来るらしい。それと一方通行だから逆をする場合はそっちでも登録しないとできない」


 俺が使える腕輪は現在二つ。

 なので一か所登録できる。


「囚人じゃなければこれだけで食い扶持に困らないんじゃないかな? もちろん、移動スキル妨害が掛かっている場所とか多いんだけどさ」


 まあ、使い手が少ないなら稼ぎに使えるよな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 一度食われているので腕輪の本来の能力が 欠けている可能性があり、ライムを殺さないと 本来の性能に戻れないかもしれませんね。
[良い点] この腕輪、人間を入れたら、腕輪の精になったりしませんか。 [気になる点] 冤罪を晴らさないとならない訳で、真犯人を見つける必要が有りますが、専門家の爺さんは、動いてくれますのですかね。
[気になる点] やっぱりライムが腕輪喰ったことがライムが弱体化せず強い状態で再登場するフラグに感じる
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