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20 刑務所の日々

「……巻き込まれて異世界にきたから世界に詳しくない」

「聞いたことある。そうなんだ? ただー……まあ不満に思う人がいるけど生まれ持った職業から別系統になるって話聞いたことないなー?」


 ファナって奴が嘘を言う様子はない。

 くそ……完全転職は不可能か。

 となると何か別の手段を考えて力を着けなければいけない。

 ルナティックムーンやエクリプスを乗り越えるのは元よりライムを殺すには力が必要なんだ。


「で、昼は仕事次第だけど食事と休憩、おやつ時からは……この区画の囚人は罰時間でさっきあった拷問が行われるの」

「囚人を痛めつけて何があるんだよ。償わせるのが役目だろうが」

「アキヒコのいた場所だとそうなんだろうけど、ここだと痛めつけて反省を促すってのがある感じ、傷なんて治せるからね」


 ああ……日本では怪我したら治るのに時間が掛かるけど、ここは異世界で回復スキルや魔法がある。

 現に俺もヒーリングサークルで回復したおかげで折れた骨とかも……時間は掛かったけど治った。

 くそ世界としか言いようがない。回復手段があるからこそ、拷問なんて日課が出来るのか。


「この区画だと拷問の後に入浴が願い出れば出来るよ。回復が遅れると傷に染みるから注意ね」

「ああそう……」

「後は晩御飯でその後は部屋の清掃、それが終わったら就寝。色々と差はあるけど特に何もない場合はこんな感じ」

「何もない場合って事は何かある場合は?」

「稀にあるのは危険な奉仕任務で外に借り出されるとか、危険な魔物の討伐とかだと監理官の監視の元、出かけるなんてのもあるよ。大体みんな帰ってくるけど帰って来ないこともあるよ。大体が盾となって戦死だったりする」

「使い捨ての駒ってか?」

「うん。死は罪の免除になりうる。ただー……雇用した囚人を死なせた管理者には相応の罰金や信用を落とすからケースバイケースかな?」


 外に出る機会が無い訳じゃないのか……ただ、俺が胸の刻印を入れられた時の事を思い出すに経験値は稼いでもあまり入らない制限がある。

 それでも……力をつけるには戦わないといけないか。


「分かってると思うけど脱走は厳禁、死ぬことは滅多にないし連れ戻されて罰の多い区画に入れられる。あ、ここより下の区画は無いから気にしなくて良いけどね」


 重犯罪者用の区画……かここは。


「……過去に管理システムを破壊とかしようとした囚人が居たらしいけどそれも難しいよ。あの管理システム、刻印とつながっていてダメージが全部囚人に向かうから」


 システム破壊とか脱走を想定した作りまであるのか。


「警備が隙だらけ、ただ看守への攻撃意思とかにも刻印は作動するから、体力に自信がない限りは逆らわない方が無難だよ。死にたいなら止めないけどー貴方にはおすすめできないなー私の場合は強引に押さえつけられて死ぬことも許してくれないけどね」

「別に死にたい訳じゃない。俺は……無実の罪でここに入れられたんだから、さっさと出たいだけだ」

「そういう話をする人多いよ」


 ……その返答にイラっとした。俺をそんな犯罪を犯したのに無実を主張するようなクズだと思ってるのか!


「ま、私が死ぬまで色々とどうぞよろしくお願い」


 ここで……私が死ぬまでと言うセリフが、ファナと言う奴が死刑判決を受けた奴なんだというのが判断できた。

 何もかも投げっぱなしなのか、それとも俺が拷問されるのを肩代わりすることで反省の余地ありで死刑から免れようとしているのか……きっと後者だな。

 模範囚となって外に出ようと心掛けているんだろう。

 看守や刑務所長を挑発するところから辻褄が合わない気がするけどそう思う事にした。


「あ、あとね」


 カタ……カタ……カタ……っと音が聞こえて来て、勝手に牢屋のカギが外れる。


「この先って迷宮と繋がってて時々アンデッドや魔物が入り込んでくるからこの区画にいる囚人はアンデッドを倒す仕事が抜き打ちであるから気を付けて」


 牢屋の扉を開けて外をのぞき込む。

 キィ……と扉を開けてファナが廊下の奥から歩いてくる白骨の魔物……スケルトンに近づいて……手を使わずに足かせに付けられた鉄球を足を振るってスケルトンにぶつけてバラバラにしていた。


「この程度は雑魚だから戦闘でもなんでもないけどね」


 ファナは俺よりも重そうな大きな鉄球につながれているのに物ともしないとばかりに引きずって歩いていく。


「……掃除をしろ」

「はいはい」


 離れた所にある監視していた看守が命令してきた。

 箒でスケルトンの残骸は清掃され、ゴミとして処理された。

 こんな所でも魔物が出るのかよ……。


「この区画に入ってきたらわかるから、アキヒコは寝てても良いからね」


 魔物使いとしてのスキルを使うつもりは毛頭が無いが、スケルトンから得られる経験値は微々たるものだと感じた。

 ファナが殴って一発で仕留められるような雑魚なんだから当然なのだろう。


「後はね。時々刑務所内の命令でダンジョン内の低階層の掃除とかやらされるのが良い運動かなー?」

「そうか……」

「後ね。せっかく傷が治った所悪いんだけどね」


 ファナが俺の牢屋の前まで来て俺の手を見て言う。

 ……砕かれて治療した所為で指の骨が変な形でくっ付いてしまっていた。


「しっかりと治療をしないと元に戻らないわよ? そのために一度折りなおした方が良いかな」

「ッ!」

「一人で出来る?」


 無理だ……曲がった指を自分で折るなんて真似できない。


「じゃあ……この布をしっかりと口に入れて、出来る限り一瞬でやるからそれからしっかりと繋がるように治療ね」


 ファナの台詞に……拒めない。こんなボロボロのおかしく曲がった手でいるなんて……。

 俺は恐る恐るファナに曲がった手……指を差し出す。


「行くよ……せーの!」

「―――!!」


 その日、俺は何度目になるかわからない痛みによる叫びを押し殺して手の治療矯正を行ったのだった。

 確かにファナの骨の治療補佐は正確で助かった。小さい手なのに簡単に俺の指を折った。これがLv差って奴だろう。

 俺だけだったら間違いなく指がおかしくなったままだった。

 めちゃくちゃ痛かったが、今後の事を考えればあのままという訳にもいかない。

 ともかく、こうして俺の刑務所生活の初日は過ぎて行った。

 壺にアレをするのは……異世界に来て思うけど屈辱だ。




 刑務所に収監されて二週間が経過した。

 ファナの言う通りの刑務所内の日課をして過ごした。

 食事に関して言えば……食えなくはない程度の不味い肉を使った臭いスープと硬すぎるパンがよく出る。

 栄養を賄える最低限の食事って事なんだろう。

 食事の後の仕事に関してなんだが、俺のLvが測定されて低いと判断された結果、果物ナイフで食事に使う野菜の皮むきや街から運ばれる汚れた衣服と囚人服の洗濯なんかもやらされる。毎日やらされる仕事が変わってストレスが溜まってしょうがない。

 犯罪内容の割に弱いって看守共は俺を指さして馬鹿にしてくるが言い返そうものならサンドバッグにされる。

 俺じゃないと言っているのに誰も信じてくれない……。


 ともかく、刑務所内で低Lvの魔物使いが出来る仕事なんて微々たる物であるのが分かった。

 もう少し魔物使いのLvがあれば家畜の世話なんかを任されるそうだ。

 そもそも……この刑務所で重犯罪者区画に収監されている囚人ってのはファナ以外にもそこそこいるのだけど、どれも人相が悪く犯罪自慢をする柄の悪すぎる奴らばかりで話が通じない。

 囚人同士の喧嘩なんかも同然の様にあって、喧嘩になろうものなら看守たちが誰が勝つのか賭け事まで始める腐った場所だった。


「おらぁ! 大犯罪者様よー! お前の罪はこの程度じゃ晴れないよなー!」

「ぐふ……」


 同区画の囚人が俺の腹を力の限り殴りつけてくる。

 拷問された苛立ちを弱い囚人に向けて発散させようという算段らしい。

 抵抗するために俺も戦おうとしたけれど、なんだかんだ相手の方がLvが高いのか腕輪の魔法弾を不意打ちで放ったけどびくともしなかった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんか、無駄な話が続くね。
[気になる点] 展開的には仕方ないとは言え 主人公こと海山氏が後ろ向き・愚痴ばかりで、あまり人間的に好かれるタイプではないと思います。 [一言] 正直、海山氏が色々と参っているのは分かりますが 何かに…
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