12 狼退治
さて……まずは俺が覚えたスキルを復習するとしよう。まずはテイミング、これは俺自身のLvが上がった影響でより詳細が分かるようになった。
このテイミングは魔物との契約で、主人である俺の知識を魔物に貸し与えて魔物に世の常識を理解させる。そして見えない絆のような力があって主人の命令に従うようになる基礎スキルだ。
Lvが上昇していくと連れ歩ける魔物を増やすことが出来るようになる。
今の俺だと……3体くらいは使役できるだろうな。ただ、ライムの世話をするのに追われていて機会が無いって感じだ。
そろそろ増やしても良いかもしれない。
ここ一週間と二日でパーティーを組むよりライムと一緒活動してて……魔物以外で仲間とか必要なのか? って思っているくらいだ。
で、オーラボールは言うまでもなく狙った場所に投げる……んじゃなくてボールを意のままに飛ばせるのが分かった。
しかもこれ、俺とライムにしか見えないっぽくて浮かべた場所をライムが通ると強力な一撃を放てる。クールタイムが10秒くらいあって連発はし辛いのが難点だ。
次がバインドウェブってスキル、これは蜘蛛の巣みたいな魔法陣を地面に設置できる。これを敵が踏むと魔法陣が光って足を縫い付けて動けないようにしてくれる。
拘束時間は俺の強さに依存するっぽい。相手の動きを止めるのに便利だ。
モンスターヒーリングは言うまでもなく回復でモンスターパワーアップは使うとしばらくの間、ライムの能力を増加させられる。
モンスターアナライズは魔物がどんな攻撃をしてくるのかわかるようになる魔法って感じだ。失敗することもあるから検証が必要だ。
種族スキルの連携は……ライムと一緒に居るから作動してるのかな? 料理反映はロネットさんと親しい宿屋や武具商人に教えてもらった所、食べた料理で上がる料理バフ効果を増加する代物らしい。
食事でも能力が左右されるんだなこの世界って。
次が武器スキルなんだけど……テイムカラーはテイミングと同じスキルでマジックショットは新たな発見があった。
どうやら俺が契約している魔物の力をマジックショットに乗せるという事が出来るようで、ライムの力をセットするとジェリームの形をした魔法弾が飛んで行って相手を倒してくれる。
結構ホーミング性能が高くて使いやすい。もちろんセットを外すと普通に魔力を放つ魔法弾になる。
外す意味は無いみたいだけどさ。
で、次がヒーリングサークル。まあ何となくわかるだろうけど回復スキル。
これは使うと指定のサークル……腕輪が大きな輪になって地面に張り付き、円形範囲全ての俺を含めた味方だと思う相手の傷を癒す効果がしばらく発生する。
しばらくって表現の通り、この範囲内にいるだけで傷が徐々に回復するのだからなかなかに便利だ。
難点は発動中は俺が腕輪を使えずに攻撃できない……はずだったけどLvが上がったお陰なのか腕輪がもう一つ出てきて問題は解消された。今、俺が持っている腕輪は二つなんだ。二刀流も出来るぞ。
セイフティーサークルってのはヒーリングサークルと同じく地面に腕輪が張り付いて円形範囲のバリアを展開するスキルだ。
これは武器に素材を色々と入れたら出た。
最後はポータルゲート、これは……なんと登録した場所に発動させて広がる輪を通るだけで戻れる瞬間移動スキルだった。
これで街に登録してそのまま出かけ、目的を達成したらすぐに戻るという便利な活動が出来るようになった。
ライムの方は言うまでもなく捕食でいろんなスキルを無数に手に入れて連戦連勝で、どんどん強くなってきているぞ。
「俺たち順調に強くなって来てるな」
「……ピ」
最初の依頼は軽く達成し、周辺の魔物や物を片っ端から捕食してスキルを得たライムと一緒に躍進している真っ最中だ。
なんていうか、最初はどうなるもんかと思ったけど一週間と二日でここまで上がると拍子抜けというのが正しいかな。
宿屋のおかみさんに経過を報告したら成長がとんでもなく早いって驚かれていたっけ。
俺と同じくらいの日数を冒険した普通の冒険者は精々、Lv5行ったら順調だって話だ。
ライムが途中で習得した急成長の恩恵なのかな?
まあライムは勇猛果敢というか、突撃癖があるから……俺の静止を無視して格上相手に突っ込んでいく事があるし。
そんな感じ順調な俺達は、とある農村で何人もの冒険者たちを集めて増えすぎたチェイスウルフって魔物の群れの駆逐って依頼を受けて現地に向かった。
現在俺達は城下町から離れ、とある村へ依頼でやってきた。
村へと向かっている最中の事……。
「ピ!」
ライムが何かを感知して走り出したので急いで追いかける。
すると道の先で15歳くらいの女の子が走って来るのに気づいた。
「はあ……はあ……はぁ……だ、だれか――」
「ヴァウヴァウ!」
女の子の後ろに狼の魔物の群れが追いかけてきていて、飛び掛からんとしている。
「ライム! 行くぞ!」
俺はオーラボールを女の子を守りつつ狼の魔物たちへと丁度当たる部分に飛ばしてライムの攻撃を誘導する。
「ピイイイ!」
ライムが素早く飛び上がってオーラボールを受け取り狼たちへ踏みつけを行う。
「ギャン!」
ズシンと今まさに女の子に飛び掛かった狼の魔物……チェイスウルフの一匹にライムの踏みつけは命中し踏みつぶす事に成功した。
「ピイイイ!」
さらに追撃にライムがファイアブレスをチェイスウルフ達に吐きつけ焼き尽くす。
「キャイ――」
炎に焼かれてチェイスウルフ達を倒すことに成功し、経験値が入ったのを確認する。
よし! 戦闘は終了だな。
「大丈夫? お嬢さん」
振り返って唖然としている女の子に声を掛けると、女の子は俺に気づいて頷く。
「あ、危ない所をありがとうございます。まさかこんな所にまでチェイスウルフが居るだなんて思わなくて……村への道をあのチェイスウルフ達に遮られて……助かりました」
「大事が無くてよかった。村は近いのかな? そこへ俺たちも向かってたんだ」
「はい。すぐそこです。よろしければ……その、村までご一緒してよろしいでしょうか?」
「当然、送るよ。俺の名前は海山明彦、明彦って呼んでほしい。この子はライム、俺の相棒さ」
「ピー!」
「ありがとうございます。私の名前はリレイアと申します」
リレイアね。あ、ぱっと見でもわかったけど結構かわいい顔をしてる子だ。
ここでお近づきになれたりしないだろうか?
「アキヒコさんとライムちゃんですね。よろしくお願いします」
「よろしくね。それで……チェイスウルフが増えて困っているんだっけ? 依頼で来たんだ」
「はい。被害が多くて、戦える方々を集めている状況です……」
依頼内容は近隣で増えて、周辺住民に危害を加えるチェイスウルフという魔物の群れの討伐だ。
「ピー」
俺がリレイアちゃんと話をしている間にライムが倒したチェイスウルフの死体を包んで捕食する。何かしらのスキルを得られるだろう。
「先ほども言いましたがこの辺りは大丈夫だったはずでしたのに……」
「勢力が増しているって事みたいだね……こりゃあ早めに討伐しないと大変そうだ」
という訳でリレイアちゃんを連れて村に着いた。
俺以外の冒険者もチェイスウルフの討伐に集まっているようだ。