この二人に恵みを!
プロローグ
この世界には至高の遊戯が存在する。その名も…
【ゲーム】
だっ!!!
ゲーム、それは世界中の人々が己の頭脳と技術を駆使してミッションをクリアしたりプレイヤー同士で殺りあったりするという一種の遊戯だ。
そして、そのゲームには大きく分けて二つ、必要不可欠なモノがある。一つ目はプレイヤー、もう一つは「NPC」だ。(説明しよう!NPCとはノンプレイヤーキャラクターの略称であり、ゲームの製作者、ゲームマスターによって造られたゲームのストーリーをスムーズに進めるためのキャラクターのことだ!)
異世界転生もの、ゲームの主人公もののストーリー等、この地球にありふれている!しかし!裏でその主人公、プレイヤーを誘導しているのは紛れもないNPCだ!ということでこの場を借りて異世界ほNPCの大変さを皆さんに知ってもらおう!
案内役
レンガ造りの家々が建ち並ぶ街に多くの人が行き交う。薄い布革を着た人や厚い鎧を着た人など、いろんな人がいる。
ここはいわゆる異世界だ。RPGなどに出てくる、あの異世界だ。そして私はその異世界にいるNPC。名前も性別(見た目は女性だけど)もない。なにせNPCなのだから。そして私の上にはアイコンが浮いている。そのアイコンは「?」の形をしている。これは案内役NPCのマークだ。
「大きめの武具店ってどこ?」
「はい。大きめの武具店ですと、中央部にあります武具店 サーシャ がよろしいです。」
「OK!」
私はこんな風にプレイヤーの質問に答えるだけのNPC。正直なんの面白味もない。むしろ辛い。この世界がマスターに造られてから(マスターの設定上三万年前ということにはなっているが)四年。そして、私はこの四年間、ずっとこの場所で案内役をしている!あー!休みたい!あー!遊びたい!NPCにだって感情はあるんd
「ギルド創設の仕方ってどうするんですか?」
「はい、メニュー欄からギルドをタップして…」
こんな毎日面白いわけないでしょ!?そんな嘆きは声にならなかった。だってNPCだから。
「ふわぁ~、今日はG稼ぎのクエ行くんしょ?」
「おう、ちと強ぇヤツと殺り合うことになるぜ」
「まじかよ~、雑魚をめっちゃ倒せば良くね?」
「文句言うな」
「あーい」
「ははっ!怒られた~w」
同じギルドの三人組が朝から騒いでる。他のプレイヤーは迷惑そうだが、私はああいうものに憧れる。そんなことを考えていたらその三人組がこちらに来た。
「なー、効率良くG稼げるクエって何だ?」
「はい。G稼ぎでしたら一番稼げるのは【魔王】です。」
「「「…」」」
三人が黙った。そしてリーダーらしき人物が
「いやいや!無理だから!もっと俺のレベルに合ったヤツにしろよ!」
なるほど
「はい。でしたらこのサラマンダー族のウルフはどうでしょう。」
「あー、サラマンダーかー、いーんじゃね?弱点属性は木だし、サトがアタッカーやれば」
リーダーらしき人物が眼鏡の短剣のプレイヤーに言った。サトと呼ばれたプレイヤーは
「えぇ~、まぁやってみるか」
「「決まりだな」」
そう言って三人組は去っていった。
それから何ヶ月か経ったが、NPCなので特になんの変化もない。それでは私の苦労が伝わらないので、ここで質問コーナー!!!(いえーい!)
(まぁ、私が勝手にプレイヤーが疑問だと思うことを私が私に質問して私が私の質問に答えるというだけなんだけど)
一.トイレは行かないの?
A.NPCなのでトイレは必要としないです。
二.食事はどうしているの?
A.NPCなので空腹にはなりません。
三.趣味は?
A.趣味も何もここから移動できないので作りようがないです。
四.ずっと同じ場所にいて疲れないの?
A.肉体的には疲れないけど精神的には相当疲れます!
五.生まれ変わったら何になりたい?
A.NPC以外で!
ふぅ。これで少しは伝わっただろうか。私達NPCには一つも楽しいことがない!仕事が忙しすぎると言っているそこの君!私と変わってみるか!?三日も持たないと思うぞ!!!
街が派手にライトアップしている。青、赤、白、緑…目がチカチカする…。今日はクリスマスだ。ということで私は赤く、先端が白くて丸いニット帽と赤いチョッキのようなものを着ている。もちろん、自分が進んで着た訳では無い。これもNPCだからだ。異世界のマスターがこの世界をアップデートしたのだ。…ハズイ。なんの拷問だ…。しかしこの世界のシステムには抗えない。NPCだから。
これで私の苦労はちょっとはわかってくれただろう。これからは私のような案内NPCに会ったら少しでいいから同情してくれ…
武具店
俺は鍛冶屋のウィルド。マスターの設定上五十代男性ということになっているが、NPCだ。さっき案内役の姉ちゃんが不満を撒き散らしてたらしいが、俺も劣るようなモンじゃねぇんだな。
いいか、鍛冶ってのはな、手を込めれば込めるほど良い代物が出来んだよ。一個一個丁寧に打ってこそ、本物の鍛冶なんだ。それなのに一日に何個も何個も武具持ってくんだよ。NPCだから直ぐに強化出来るけどよ、それでも暑いし疲れるし、大変なんだよ!
「親父、コイツ、この素材で強化してくれ」
「あいよ!任せとけ!」
くそぉ!NPCだから決まった言葉しか言えねぇ!もし俺がプレイヤーだったら
「テメェ!今日だけで何個打ってると思ってんだコラ!自分でやれや!てかテメェのヤツ他に盾とバックラーもやってんだよ!今日だけで俺に何個やらせるつもりだコラァ!」
とか言って追い払うのによ!
あぁクソ!熱ぃ!あと八個もあんのかよ!
「兄ちゃん、ありがとな!また持ってきてくれよ!」
くそ!二度と来んじゃねぇ!
どうだ!俺はこんなのが毎日続いてんだ!案内役の姉ちゃんも大変だけど俺も相当大変なんだよ!てことでお前ら!武具持ってくんなら差し入れの一つや二つ持ってこいよ!
…そう。異世界のNPCはマスターに設定された言動をしているが、内心こんなことを思っている。他にも色んなNPC達が不満を感じているのだ。プレイヤーの者達よ、少しはNPC達の苦労をわかっていただけただろうか!まだNPC達の愚痴は終わらない!!!
どーも!Orangeでっす!いや~、疲れましたね~!今回の作品は二作目ですね!やっぱり異世界系は面白いです!僕が陽キャテンションで書ける!テンションアゲアゲですね~!
それは置いといて、この「異世界のNPCは大変です」は、よくある主人公が魔王討伐のために戦う的なものではなく、脇役の脇役、NPC達が主人公の異世界ストーリーとなっております!どうでしたか?これを読んだら少しゲームの見方が変わったでしょうか?続きも書く(予定な)ので、そのときはよろしくお願いします!それでは!