性別の壁 6
少し憂鬱なシーンが入ってきます。
そんなある日、遠足という行事があった。
なぜだか僕はどうしても行きたくなかった。
母親に背中を押されて家を出て、真理ちゃんの家に迎えに行き学校指定の場所まで辿り着く頃にはお土産は何を買って帰ろうとか、どこを見て回ろうとかそんなことを考えていた。
遠足はあまり楽しくなかった。
だけど、お土産がいいものを買えて母親がきっと喜んでくれると思っていた。
真理ちゃんと別れて家路に着く僕は心が踊っていた。
どんな反応をしてくれるだろう?
喜んでくれるだろうか?
そんなことばかり考えて家まで走って帰った。
僕が家に着いたのは4時頃。
二番目の姉が泣きながらバイトの面接に向かう途中だった。
「詳しい話はお姉ちゃんに聞いて」
その言葉だけ残して行ってしまった。
僕は気が気ではなくてお姉ちゃんに連絡を取った。
お姉ちゃんは「あの子が帰ってくるまで待ってて。」と言った。
何だかすごく嫌な予感がした。
両親の離婚だろうか?
だから母親は僕を遠足に行かせてその間に家から去ろうとしていたのか?
そんなことが脳裏を駆け巡っていた。
父親が帰ってきたのは8時。
二番目の姉が帰ってきて家族会議が行われた。
父親は何が何だか分からない様子だったので離婚ではないと、なんとなく察していた。
「ユウキはあっちの部屋にいて」
と姉に言われ部屋でパニックを起こしている頭を必死に落ち着けた。
「おいで。」
そう姉に呼ばれリビングに行くと呆然としている父親と泣きじゃくった姉が座っていた。
僕は状況が飲み込めず何があったのかを聞いた。
だけど大人は誰も僕には教えてくれなかった。
「これから、3人で頑張らなくちゃいけないから。協力してね。」
そう姉は僕に言うとまた泣き出した。
僕は泣いちゃいけないと思いとびきりの笑顔で「きっと大丈夫だよ!なんとかなるって!」と笑い飛ばしてみせた。
いつもは頑固な父親が、泣くことの少ない姉が泣いている。
僕がしっかりしなくてはと思った。
泣きたくても泣けなかった。




