ニート的天才
真夏の夜の日、俺は寝転がりながら本を読んでいた。
「いやぁ、相対性理論おもしれぇなぁ」
俺は分厚い相対性理論の本を見ながら呟いた。
おっと、紹介がまだだったな。
俺の名前は熊谷裕氏。今年で二十一歳になる。
高校卒業生、ハーバード大学に入学するも一年で退学し、帰国。
その後、ニートとして暮らしている。
「おい! クソ兄貴。いい加減働け!」
今年から高校生になる妹の熊谷燈が俺の背中を蹴ってきた。妹の方を見ると、なんとまぁ、イキってるのか茶髪気味の髪を整え、ばっちりメイクまでしていた。中学までガサツだったのに。
帰国後、燈と二人暮らしをしていたが、燈はいつまでも働かずに家にいる俺を鬱陶しく思っている。まあ、当然か。
「明日からやる気だす」
「もう30回くらいそのセリフ聞いたんだけど」
燈は俺を睨みつけてきた。おぉ、怖い。思わず防御力がガクッと下がりそうだ。
「ほ、本当だって! 実はこの前、すっごい発明品を作り出したんだ!」
「発明品?」
燈は訝しんだ様子で俺のことを見た。
「ああ、これだ......!」
俺は押入れから巨大な卵型の金属の機会を取り出した。
「な、何それ?」
「これをだな......ポチッとな!」
すると、ばちばちと機械は電流を放った。
そして、パカっと卵型の機械が開き、中から人型の人形が出てきた。セクシーな体型の人形である。
「兄貴、こ、これは一体......?」
燈は感動してるのか肩をフルフルと震わしている。
「ははは! 驚いたか。妹よ。これは『ラブドール製造装置』だ!」
説明しよう! ラブドールとは男性の擬似性交、愛玩、観賞、写真撮影等に使われる、セクシーな人形である。高いもので一体、百万近くするものもある。
それを低価格で作れるのである。
「アホかーーーーーー!」
燈は俺の顔面に思いっきりパンチした。
「あべし!!!」
俺は痛みで思わず、変な声を上げてしまった。
「こんな変態的な機械の何が役に立つっての!」
「いいか? よく聞け。妹よ。ラブドールは一体高いもので百万近くするんだ。それを一体たったの一万円後で作れる。これを使えばうちは黒字だ。わっはっは!」
すると、燈は表情が少し明るくなったように感じた。
「ほ、本当にこんなのが百万近くで売れるの?」
「ああ。信じろ」
「じゃ、じゃあ。少し、様子を見ようかな」
げんきんな奴だ。金が入りそうとなれば機嫌がよくなりやがった。まぁ、俺の天才的な発明品でぼろ儲けしてやろう。
それから一ヶ月後。黒字額が五十万になった。商売は軌道に乗ったと確信した。きっとこれで俺は安泰である。
「見ろ! 黒字額が五十万になったぞ! これで贅沢して来月も暮らしていけるぞ!」
俺は金が入って、大満足だった。
「そ、そうだね......でもさ......」
燈は不満そうな顔をした。
「この人形、なんとかならない?」
燈は俺たちの周りに立っているラブドールを指差した。ラブドール製造機の改良を加えるべく、何体化試し作りした。また、多く作りすぎて捌けなかったラブドールが残っている。
「ただでさえ、狭い家なのにさぁ......」
燈はやれやれという顔をした。
「安心しろ。ラブドール業がもっと上手くいけば、もっといい部屋に暮らせるようになるさ」
「そうかもしれないけどさぁ......それにしても男の人ってこんな不気味な人形欲しがるんだね。本当、意味が分からない」
「現実の世界で満たされない恋愛感情を埋めてくれるのがラブドールなんだよ」
と、知人が言っていた。
「てかさ、こんなの作らなくても現実の恋人作ればいいと思うんだよね。ぶっちゃけ」
「まぁ、正論かもだが。偉そうに言うが、お前は恋人いるのか?」
すると、燈は顔を赤らめた。
「わ、私は別にいらないもん! 今は欲しくないんだもん!」
「つまりいないということか......」
ハーバード大学に通っていた時、金髪のアメリカ人彼女と付き合っていたが、正直あまり楽しくなかった。一緒にシアトルに行ったり、ニューヨークに出向いたりと刺激的な生活をしていたが、いまいち、ピーンと来なかった。
一人で研究や勉強していた方が、よっぽど有意義な時間だと思う。
「まぁ、あれだ。もう少ししたら、この家からも出ていくよ。迷惑かけたしさ」
そう言うと、燈が無表情になった。
「え?」
「なんだ? 燈、どうした?」
「出て行っちゃうの?」
燈の肩がプルプルと震えている。
「ああ。俺がいても邪魔だろ? だからさ......」
「そう、勝手にすれば?」
明らかに怒気を含んだ声になった。
「な、なんだよ。何を怒ってるんだ?」
すると、燈はテーブルをバンと叩いた。
「うるさい! バカ兄貴! いつもいつも勝手なことして! 兄貴がアメリカに行くときも急にさ。もう知らない!」
そう言うと、燈は家から飛び出してしまった。
俺は突然のことに天井を仰いだ。
あいつ、俺がアメリカに行く時、寂しかったのかな。全然、気づかなかった。
燈は俺のことをあまり好きじゃないと思っていた。きっとすぐに出て行って欲しいのだろうと。勝手にハーバード大学をやめて、親から怒られ、仕送りを止められ途方にくれていた時、連絡してくれたのが、燈だった。
それ以降、俺と燈は二人暮らしを始めた。燈はもともと、高校に通うに当たってアパートで一人暮らしをする予定だった。
「バカだな......俺は」
俺があいつに恩を返す方法は金を渡して、家から出ることじゃないわけだ。
さてと、燈を追いかけに行こうか。