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第2話

土屋君に告白された。廊下の真ん中で。


「俺、前から泉さんのこと良いなって思ってて…」


照れたように笑って私に告白してくる。周囲の注目の的だし、中には嫉妬して私を睨む女子も…ちょっと怖いです。というか土屋君はこんな注目されるところで告白して断られたときのこととか考えていないのだろうか。多分相当屈辱的な思いをすると思うけど。


「ごめんなさい…ちょっと考えさせて。」


森野君に恋をする前だったら一も二もなくOKだったけど、今となっては土屋君は私にとって「ただ格好良いだけの人」。憧れてるか?って言われれば、やっぱり今でも憧れはあるんだけど、好きか?って聞かれると……


「どうするの?」


告白現場から離れて、美代子に聞かれた。


「……やっぱり断ろうかな。」

「勿体なくない?あの土屋君だよ?」


土屋君は超倍率高いイケメンである。それはわかってる。わかってるけど…


「私は別に誰もが羨む彼氏を欲しいわけじゃないから。優しくて、私をいっぱいドキドキさせてくれる人が良いの。」

「森野君のこと諦めてないの?」

「……。」


諦められないよ…まだ好きなんだもん。



***

土屋君が私に告白したという噂は瞬く間に広がり、あろうことか、それを耳にした森野君に祝福されてしまった。


「良かったの。智花。智花はあの球蹴りの得意な、土屋というおのこを好いておったのじゃろ?」


優しい笑顔で祝福されて涙が出た。


「……っ!」


私は森野君の前から逃げ出した。森野君、私のことなんとも思ってないんだ…だから普通に友達として祝福してくれたんだ。私は土屋君じゃなくて森野君が好きなのに…!

私はふらふらと街を彷徨い、隣町まで歩いてしまった。こんもりとした林の中に神社がポツンとあった。そういえば美代子がここは有名な縁結びの神社だって言ってたな…。森野君は好きな女の子がいる。私のことを何とも思ってない。でも私を「い」とは言ってくれる。ずっと好きだと言い続けたら報われるだろうか。「己の憎からず思う相手に何度も好意を告げられれば堪らん気持ちになるものじゃ」って言ってたし。少なくとも嫌われてはいないはずだ。私のことを好きになってくれるだろうか。

私は神社のお賽銭箱に1000円札を入れた。


「どうか、森野君が私のことを好きになってくれますように。」


お願いをするとふわあっと私の中から大事なものが抜けて行って消えたような感覚を覚えた。


「あ、あれ?ここ隣町?どうして私こんなところにいるんだろう?」


学校にいたはずなのに…

自分が予想外の所に居てびっくりしてしまった。なんでこんな所にいるかの記憶が全くない。そういえば土屋君に告白されたんだっけ。嬉しいな。明日OKの返事を出そう!



***

「土屋君!私も土屋君が好きです!」


私は校舎裏に土屋君を呼び出して告白の返事を返した。


「本当?嬉しいな!」


土屋君が嬉しそうにはにかんだ。ああ、やっぱり土屋君は格好良い。流石女子の憧れの的!今日からは私の彼氏なんだよね。嬉しいな~…


「美代子ー!土屋君に告白OKしてきたよっ!」


早速美代子に報告した。


「えっ!?あんた昨日は断るって…」

「断る?なんで?」


私はきょとんとした。あんなに格好良い土屋君に告白されて断るとか、なんでさ?美代子は困った風に隣でいなりずしをぱくついている森野君を見た。森野君は憂い顔だ。


「智花…昨日、わしはそちを傷つけたかの?」

「え?昨日?なんかあったっけ?私昨日の記憶がイマイチ曖昧であんまり覚えてないんだけど。なんかぼーっとしてたって言うか…」


森野君と何か喋ったっけ?


「…そうか。覚えとらんのなら構わんのじゃが。のう。智花、そちは幸せか?」

「うん!すっごーい幸せ!」


憧れの土屋君と付き合えることになったし、超ハッピーだよ!


「そうか。良かったの。本当に良かった。そちは今日は誕生日であろ。贈り物じゃ。」


森野君がプレゼントの包みを渡してくれた。


「有難う!!」


開けてみると綺麗な紫陽花がレジン加工されたバレッタが出てきた。私の誕生日、6月22日なのだけど、梅雨時にぴったりの可愛いバレッタだった。


「かわいい!」

「うむ。気に入ってもらえて何よりじゃわい。」


森野君は少し切なげに微笑んだ。



***

体育。私たちのいる1クラスと土屋君のいる2クラス合同体育だった。今日の体育はサッカー。勿論土屋君は大活躍!……と思いきや、森野君の独壇場だった。土屋君がいくらボールを奪ってもその土屋君は森野君に容易くボールを奪われ、ばんばんゴールを決められてしまう。土屋君ファンは土屋君の活躍が見られなくてがっかりしていた。森野君、こんなにサッカー上手いなら、サッカー部に入ればよかったのに。

試合終了のホイッスルが鳴ると私のクラスの圧勝。土屋君は悔しそうな顔で森野君を睨み付けたが、森野君は「一等大切なものは譲ってやったんじゃ。最後にこれくらい許せ。」と悲しげに笑った。

森野君の新しい一面を見た……と思ったら森野君は翌日学校を辞めていた。転校したとか退学したとか、噂が飛び交っている。居なくなってしまった。私たちに何も言わずに。森野君と出会ってまだ2,3ヶ月だけど、私は森野君の事大切な友達だと思ってたのにな…森野君にとって私はその程度の友達だったのだろうか。紫陽花のバレッタを悲しく見つめる。


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