金策
夜の蝶なら何とかなるかしら? と、思ってみたものの、はした金程度ではどうにもならないことに気が付いた。
「もう、宝くじしか……」
その時、脳裏に電流が迸った。
宝、くじ……!
「……ゴクッ」
私は指にはめられている指輪を見て、生唾を飲んだ。
(もし、このウサギの作り出す仮想空間が限りなく現実に近いものだとしたら……)
宝くじじゃすぐにお金を調達できないけど、他のギャンブルなら……
私は慌てて指輪をこすった。
現在、私は事務所の最寄りから2駅で行ける、割と何でも揃っている駅前にいる。
確か、ここにウインズ (馬券を買えるとこ)があるはず。
ウロウロしていると、案の定、駅からすぐ近く、パチンコ屋の隣にそれはあった。
二十歳じゃないから、ギリギリ馬券は買えないのだけれど、よっぽど幼く見えない限り、止められはしないだろう。
建物の中に入る。
(オッケーオッケー!)
警備員を素通りし、馬券を購入できるフロアにやって来れた。
午後、最終の第十レースが始まる。
私は、おじさん達に紛れ、結果を見守った。
「一着、オイシイカーチェイス、二着、ヨワムシバトン、三着、リバウンドオウ」
私はこの結果をメモして、現実に戻った。
週末、私は今度は実際に馬券を買うために、ウインズへとやって来た。
用紙に必要事項を書き込む。
「えーと……」
買うのは第十レース、三連単で、仮想空間で勝った通りの並びだ。
この馬券、倍率は1万倍で、それを1万円分購入した。
確実に当たる保障がなかったし、手持ちのお金が1万しかなかったので、この額を賭けた。
それでも、当たれば1億円だ。
隣のおばちゃんが覗き込んで来る。
「それ万馬券? 当たったらいいわね~、ぷぷぷ」
「……この馬券、買っといた方がいいですよ?」
レース終了後、私は心臓発作かってくらい、ドキドキしていた。
「当たった……」
私は、一億を手に入れた。