リトル再び
「あ、あのさポワロ。 事件っていうのは、殺人とか、死体とか、そういうのが関係しているもののことなのよね~」
ポワロは一瞬、困ったような顔をしたが、分かりました、と鼻をスンスンさせ始めた。
「……こっちです!」
ポワロに連れられ、次にやって来たのは四獣学園だった。
ところが、学園には入らず、隣にある山へと入っていく。
「えー、山道歩くの……」
何の準備もしていなかったが、20分程で目的地に到着した。
祠だ。
私達は、薄暗い祠内へと足を踏み入れた。
「ご主人、ここです!」
ポワロが地面を指差した。
ここに、何かが埋まっている?
「……死体、かしら?」
何か、シャベルみたいな物が無ければ掘り起こすのは難しいわね。
私は、ポワロに触れてアームズモードを起動した。
ちなみに、アームズモードとは、霊獣を武器にして戦う戦闘スタイルの一種だ。
形状は剣だけど、これなら素手よりか、掘りやすい。
「よっ!」
剣を地面に突き立て、かき出すように土を払いのけていくと、案の定、人間の死体が姿を現した。
「うっ……」
まだ、死体は新しい。
これは、誰なの……?
警察に連絡した結果、この死体は黒髪刃、という人物であることが分かった。
更に、私はこの警察官から驚くべき事実を知らされる事となった。
「彼を殺害したのは、若草牛尾、という人物です」
「……若草、牛尾!?」
何で兄さんが人殺しを……
私は事情を説明し、兄さんが勾留されている留置所に向かうことにした。
翌朝、留置所に到着。
前日にアポを取っておいたので、スムーズに面会にこぎ着けることが出来た。
「兄さん!」
兄さんは両手に手錠をはめられていた。
「……久しぶり、だな」
「何で、殺人なんて……」
ポリポリと頭をかいた後、兄さんは話始めた。
兄さんは、四獣と呼ばれる霊獣を倒すために、黒髪刃の体に取り憑かせたらしい。
でも、いざとなると勇気が出なくて、もう一つの人格に殺させた、という経緯だ。
「……裁判で、俺のもう一つの人格がやった、と説明したが、結局負けた」
「えっ…… そんなの、証明できるの?」
「脳波計を使えばいい。 ブラックボックスを用意して、その中にリンゴを入れたとする。 俺はそれを知らない前提で、牛尾と交代。 牛尾が中身を確認して、再度俺に戻る。 裁判官が、箱の中身は? と質問し、脳波に何の反応もなければ、俺に2つの人格があることの証明になる」
それでも、人格を抑えることが出来なかったことを追求され、刑期も縮まらなかったようだ。
「……お前に、頼みがある」
兄さんは、ガラスの下のスペースから、指輪をこちらに渡してきた。