事件
……と、息巻いて見たものの、事業は全く軌道に乗っていなかった。
今、パソコンの画面と睨めっこしているのだけれど……
「兄さん、ホームページも作ってないみたいだし」
リトル探偵事務所、と検索をかけても、ぼっち探偵リトル、という誰得ネット小説がトップに出てきてしまう。
「ホームページの作成、30万かぁ……」
生活費もかかるのに、そんなお金をひねり出すことは出来ない。
そもそもここ、家賃高いのよ……
「最初は自力で探すしかないか」
私は観念して、左手薬指の指輪の表面をこすった。
すると、犬の霊獣ポワロが現れた。
「何でしょうか?」
「人海戦術よ。 事件、探しに行きましょ!」
ポワロは、事件の匂いを嗅ぎつけるという、探偵よりはむしろ記者とかが喜びそうな能力を持っていたのだ。
ポワロは玄関をすり抜けて、そのままマンションの廊下へと出て行った。
「ま、待ってよ!」
ポワロを追ってやって来たのは、商店街の串カツ屋の前だ。
結構列が出来ており、中々の人気店みたいだ。
「まさか、ここの主人が浮気してるとか?」
そんな予想をしながら列に並んでいると、先頭に辿り着いた。
「何にします?」
「あ、じゃあ…… チョコレート串カツ2本で」
「あいよ」
店員のおばちゃんが串カツを2本渡してくれた。
値段は240円で、片方をポワロに渡す。
「ハフハフ、ご主人、これは……」
「こ、この美味しさ、まさに事件ね!」
……うん?
「はい! 僕もそう思います!」
いやいや、事件って、そういう意味の事件じゃなくて……
「あ、ポワロ。 もっと大きな事件、探してくれない? 確かにあなたにとって、これは事件かも知れないけど」
「分かりました!」
次にやって来たのは、デパートの東北料理フェスだ。
「ご主人! ここは事件で溢れていますよ!」
私達は、東北料理の試食を片っ端から回った。
……って、私は一体何をしているのかしら?
「あ、ポワロ。 私ら、漫才コンビじゃないし、ツッコミとか、出来ないからさ」
「僕がツッコミをやりましょうか!?」
……いい加減にしろ!