借金返済
……2つ?
ひとつは兄さんのポワロだと思う。
兄さんは実家にいた頃から、霊獣を目視するためにポワロを持たされていたから。
ちなみに、ポワロとは犬の霊獣だ。
でも、もう一つは心当たりがないわね。
「両方とも、お借りしても?」
「元から私のものではないので、受け取ってください」
校長から指輪を2つ受け取る。
これで帰ろうと思ったけど、私は一つ気になっていたことを質問することにした。
「あの、兄さんは何で捕まったんですか?」
「……それは」
結局、校長は教えてくれなかった。
事務所に到着。
とりあえず、要件は一つ片付いたけど、重たいやつが残っている。
「はあ…… どうやって100万も稼ぐのよ」
夜の蝶にでもならない限り、まともに稼いでいたら1年はかかるんじゃないかしら?
それを今月中に返せだなんて……
考えていたらうつにでもなりそうだから、ひとまず放っておいて、持ってきた指輪がなんの指輪なのか、確認することにした。
片方の指輪を左手薬指にはめて、こすって霊獣を呼び出す。
「あ、どうも」
「……」
変な生き物が私の右隣に現れた。
……白と黒のアリクイとは違う生物。
これって……
「あなた、バク?」
「はい。 他人が眠っている間に、催眠をかけて操ることができます」
……!
催眠で操るですって……
もしこの能力を駆使したら、100万なんてすぐ稼げるんじゃないかしら?
「バク、私があなたの新しい主よ。 私の命令に従ってもらうから」
「はい、ご主人」
私は、夜になるのを見計らって、ある場所に出かけることにした。
深夜0時。
ここは都内でも有名な、ホームレスの住まう公園だ。
適当な誰かを催眠状態にして働かせれば、そのお金を私のものにできると思ったのだけど、その適当な誰か、は大概家に住んでいるため、不法侵入でもしない限り接触することができない。
そこで、セキュリティもへったくれもない、ホームレスの家にやって来ることにした。
「さあ、バク、みんなを催眠で操って起こして」
「はい」
バクはブルーシートの中に入り、一人ずつ催眠で操り、公園の中央に集めた。
その数、およそ10人。
「さあ、今からみんなでコンビニに行ってもらうから、しっかり働きなさいよ!」
「ウェーイ」
まるで、ゾンビの行進のように、のそのそと各自コンビニの中へと入っていった。
私は事務所で札束を数えていた。
「よーし、丁度100万ね!」
一人が一日で稼ぐお金が大体5千円で、それをかける10して5万。
20日間かけて、100万を稼ぐことに成功した。
「これで借金はチャラ、兄さんの後を継いで、探偵事業を始めましょうかしら」
新生、リトル探偵事務所の開業よ!