追求
その日の夕方、磯山先生の住むマンションのエントランスにやって来た。
インターホンを鳴らす。
「はい、磯山です」
出たのは先生本人だ。
「あ、先日お伺いしたリトルです。 あの、スマホを忘れちゃったみたいで、中に入って探してもいいですか?」
「スマホの忘れ物ですか。 分かりました」
自動ドアが開き、中に入ることが出来た。
エレベーターで9階に向かい、呼び鈴を鳴らす。
「どうぞ、上がって下さい」
「失礼しまーす」
先生が自室に入っていき、私も続く。
「……? こっちには多分無いですよ」
「……先生、実はスマホの件でここに来たわけじゃないんです」
「……」
私は先生を見据えて、こう告げた。
「アイカワさんを殺した犯人は、磯山先生、あなたではないでしょうか?」
「……」
しばらく沈黙があった後、磯山先生は少し引きつった表情で、口を開いた。
「何で、そんな風に思ったんですか?」
「順を追って説明します。 まず、先生には動機があります。 キッカワさんの証言で、あなたは日常的にアイカワさんから嫌みを言われていた。 それが積もりに積もって、今回の殺人に至った、そう私は考えています」
「……僕はアイカワさんに恨みなんか抱いていませんでしたよ。 先輩だし、よくあることです」
やっぱり、素直に認めるわけないわよね。
それなら……
「……警察犬がアイカワさんの自宅で、あなたの匂いを特定しました」
「け、警察犬? 匂いで犯人を特定するなんて、聞いたことないですよ! 毛髪や指紋なら分かりますけど…… それに、僕にはアリバイがあるじゃないですか!」
明らかに動機している。
身振り手振りが大きくなって、慌てている風だ。
「先生は深夜0時、この自室でネームを書いており、担当者は別室にいました。 玄関に向かうには、その別室を通る必要があり、担当者にバレてしまいます。 しかし、ある方法を使えば、バレずに外に出ることが可能です」
私は、一旦玄関に戻り、空気入れを拝借してきた。
「……」
「マンションの向かいにある御神木に、ペットボトル付きのロープもありました。 このことから、先生はペットボトルロケットで、御神木にロープをかけたと思われます」
「……!」
「ロープをかけ、ベランダの手すりに反対側のロープを結び、傾斜を利用して、ハンガーか何かを使って滑るように木に飛び移った。 アイカワさんを殺害した後、編集者に何か買ってくるよう連絡を入れ、その隙に部屋に戻った、違いますか?」
ペットボトルロケットというアイデア。
これは、磯山先生だから思い付いたものだ。
まるで、作者がエレンになって宙を移動したかのように。
「……先生、自首して下さい」
「……ぐっ」
先生はうめき声を漏らし、その場に崩れた。
「せっかく、漫画家になるって夢が叶ったのにっ…… 何で、我慢出来なかったんだっ……」
先生の目には涙が滲んでいた。
……先生の漫画には、何者かに対する憎しみや、苦しみといったものが多く描かれている。
理不尽な仕打ちに対する自分の気持ちを、登場人物に投影させていたのかも知れない。
後日、先生は警察に出頭した。
認めるの早っ




