4章 その5
そして、間中の務めていた出版社はもう存在せず、自分の務めている会社にもないとの事だった。
しかし、間中はコレクターの田辺以外にもう一人絵本を所持している可能性のある人物を晴人達に教えた。その人物は数万冊の本を所持しており、かなりの屋敷に住んでいるという。晴人達は、間中にその人物と会って話ができるか聞いてみた。間中は、その人物とは頻繁に会っているらしく、その人物の自宅に電話をする。
「あれ?おかしいな…」
「どうしました?」
「いや、いつもならすぐに電話に出るんだけどな。」
その人物は、間中からの電話に出ないようだった。普段は、少なくとも三コールくらいには出る人間らしい。間中は、もう一度かけ直してみた。
「やっぱり出ないか…」
「携帯は持っていないんですか?」
「はい。あの人は、携帯を持ちたがらないんですよ。…留守という事はないと思うから、読書中か作業をしているか…」
「…そうですか。」
「何でしたら、直接訪ねてみますか?彼には私の方からもう一度電話をして伝えておきますから。」
「アポ無しで大丈夫ですかね?」
「ええ。そこまで気難しい人じゃないので大丈夫ですよ。ないとは思いますが、万万が一何かあっても困りますしね。」
「分かりました。」
「家までの住所と電話番号を教えておきます。貴方なら、悪用の心配はなさそうですから。」
「ありがとうございます。こちらで責任をもって個人情報を取り扱います。」
「では、メモをお願いします。」
こうして、晴人達は、その人物の住所を聞いて直接訪ねる事になった。