4章 その4
「ありえないし」
「あん?」
「だって、三本目ですよ!?」
「ああ…まだ三本目だ。」
「まだって…」
そういうやり取りをしているうちに、晴人達は待ち合わせの喫茶店へと、到着した。晴人が事務所と兼用で、使っている喫茶店とは違い、都会的な雰囲気のする喫茶店だった。おしゃれな扉を開けると、客も賑わっていた。
「混んでんな…」
「確かに。これじゃ出版者の人を探すのが大変かも」
喫茶店の中をぐるりと見回す。店内は老若男女問わず客で溢れかえっていて、誰が誰だかわからない状態だった。晴人は、出版者の姿、人相、特徴を聞いておくべきだったと後悔した。
しかし、友里は、あらかじめネットで顔を調べていたらしく、目的の人物を探し当てると、晴人達を案内した。
「すみません。元〇〇出版の間中さんでしょうか?」
「え?あ、はい。間中です。」
間中という出版者は、びっくりしたような目で見ていた。髪の長いモデル系の美人に顔の整っている若者数人を引き連れた美人がぞろぞろ揃って自分のところに来ているのである。一体何の目的で話しかけてきたのかと、思うのは当然だった。
「申し遅れました。私、天宮探偵事務所秘書をしております有間と申します。そしてこちらが…」
「探偵の天宮です。」
「あ、ああ。探偵さんでしたか。田辺さんからお話は伺ってます。どうぞ。」
「ありがとうございます。」
晴人達は席へ着いた。晴人達は、さっそく田辺に会った経緯と、深春の依頼について、間中へ説明した。間中は、目を瞑り黙って話を聞いていた。