4章 その2
二人のやり取りを見ていた晴人は、笑いを堪えていた。馨の鬼気迫るような真剣な顔と深春の怯えている顔を見ていると、可笑しくて仕方がなかった。
「何笑ってやがんだよ。」
「いてて…いや、別に?」
馨は、晴人を小突きながら言う。晴人はずっとニヤニヤしている。
「なんで笑ってるんですか。天宮さん」
晴人は、深春からも突っ込まれるが晴人のツボに入ってしまったらしく笑い続けていた。
ひとしきり笑った晴人は、話題を切り替えた。
「じゃあ、そろそろ行こうか。…ブフォ」
真面目に言ったつもりだったのだが、どうやらこれくらいしょうもないネタが、晴人のツボらしい。馨達は、笑いの沸点高いなと思いながら、移動する準備を始めた。今回は友里も同行するらしく、軽く化粧をしていた。
「有間も行くのか?」
「はい。助手として同行します。」
「そりゃ、心強いな。…だがな一つ条件が…」
「煙草なら、離れて吸って下さいね。」
「わかったよ…」
この探偵事務所には、馨以外の喫煙者はおらず肩身を狭い思いをしていた。マスターが昔、吸っていたらしいのだが、喫茶店をやるに当たってやめたらしい。
とはいえ、喫茶店には喫煙スペースはある為喫煙者に理解があるというのが、この喫茶店の良いところの一つなのだろう。三人の姿を見ていた深春は、いつしか自分もここに混ざってみたいという気持ちになった。
「森山さん、もう一度聞くけど来るよね。」
「行きたいです。一緒に。」