3章 その5
「被害届は出しましたか?」
「ええ。しかし、所在が全く分からなくなってしまいました。」
晴人達は、絵本の手がかりを失い、落胆の色が見え始めた。しかし、田辺は晴人達にある可能性を伝えた。
「もしかしたらなんですけど、絵本の行方を探せるかも知れません。」
「え?」
「私と古くから付き合いのある出版関係の方でその人なら、絵本の所在を知っているかも知れませんよ。」
「本当ですか?」
「ええ。ちょっと連絡してみましょうか?」
「はい。是非。」
晴人の意思を確認した田辺は、一度自分の書斎に行き、黒い手帳を持ってきた。この手帳に出版関係の人物の連絡先が書いてあるらしい。田辺が、手帳のページを目的の所まで捲り電話をかけた。田辺とその人物はかなり親しい関係であったことが、電話口からでもわかった。
そして、絵本の所在を知っているかもしれないその人物と、会って話せるようにアポを取った。
「ありがとうございます。田辺さん。」
「いえいえ。大した事はしてませんよ。手がかりが掴めるといいですね。」
「はい。」
晴人達は、田辺からアポを取ってもらい、その人物とは、三日後にカフェで会うことになった。晴人達は、田辺に礼をして田辺邸を後にした。