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プロローグ2

 目を覚ました。しかし、どうしたわけか辺りは真っ暗で何も見えなかった。

 起き上がって見ても変わらず何も見えない。自分の姿すら見えないほどの完全な暗闇である。そして、俺はふと自分が手ぶらであることを感じとった。夜明けまで二度と離すまいと決意していた紙はいつの間にか失われていた。あの紙が夜明けまでになくなってしまうと、呪術を試みた人間は異世界に飛ばされてしまうという噂だ。すっと背筋が冷たくなった。空気もどこかしら重く息苦しい。


 夢なら早く醒めてくれ!


 びくびくしていると、突然暗闇の彼方から声がした。彼方から聞こえたのに、すぐ近くで囁かれたようにも聞こえる、遠近感のない声だ。深く、重い。

基徳もとのりよ』

「はい」

 小さく返事をする。どこか威厳を感じさせる深い声であった。ひどく恐ろしい。これは夢だろうか? 現実だろうか。

『暗いか、何も見えないか』

「はい」

 闇の声は続けて言う。

『汝が落とされたのは陰府よみである。死者の行く場所である』


 えっ!!! ヨミと言ったらあれだ。よく知らないが確かに死んだ人が行くイメージがある場所だ。嘘だろう? 死んだことを自分が信じられない幽霊などをよくフィクションで見かけるが、俺は本当に死んでないんだ。信じられるわけがない。


「あの……あなたは誰ですか? どうして俺はここに来たんですか?」

 死者の場所に。

『問うな、人間よ。従え。』

 声はやたら偉そうであった。年齢性別不詳の声にも聞こえるし、30歳ぐらいの男の声のようにも聞こえる。闇からの声は続けて言った。

『お前は現世で償いきれぬ罪を犯したのだ。怠惰、暴食色欲、傲慢。それに不敬。どうして陰府にまで落とされぬと思ったか。引き上げられるとでも思ったか』


 何を言っているのか分からない。引き上げられるって何のことだよ。これは夢か?


『明言しよう、これはうつつである。お前は自分のことを死んでいないと思っている。しかし、何を以て死んでいないとするのか。臓器の活動か。お前が死者の国に落とされたのはお前自身の報いによる』


 なんだか本当にやばい雰囲気だ。ちょっとガチっぽい。本格的に怖くなってきた。


『恐れても遅い。お前は自身の徳によって落ちたのだ。しかし、赦しの機会をお前に与える。行って悔い改めよ。行って広めよ。行って赦されよ。明言しよう。お前が改められるなら、お前は誰よりも光に近い存在となれる。郷田ごうた基徳もとのりよ』


 すると突然、今度は目の前に白い光が現れた。闇の一か所から生じた光が、爆発するように辺りを覆っていく。さらに、光の世界の中で俺は上方から巨大な舌のような炎が降りかかってくる幻覚を見た。

「うわああああああああ!?」

 なんだこれはなんだこれは!?

 炎が怖くて思わずぎゅっと目を瞑った。やはり幻なのか不思議と熱さは襲ってこなかったが、俺は怖さの為にそのまま目を閉じ続けた。



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