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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
十章 後悔噬臍
99/145

ダンジョンと共に

・五階層創造(エバノの階層のみ数える)


『五階層』

規模 : 2km四方の正方形×高さ2km

内観 : 海岸

消費MP600


・1日分のMP譲渡


ファイン100体

37,100×10h

マナフライ165体

1,155×10h


MP398,299(+382,550)→780,849

 シュヴァルツヴァルトに戻ってからモワティエからのコンタクトは無い。上手くいっているのだろう。


 あれから2日。俺がシュヴァルツヴァルトを出てから4日経った事になる。

 こちらは至って平穏。事件の事の字もない。まぁ、事件が起こっても速攻で解決するんだが。


 「旦那様、今月の『金鳥宮(きんちょうきゅう)』の売上を纏めた書類が届いてますけど確認しますか?」

 「いや、レイが分かってるんならそれでいい」


 結構利益を上げている筈だが、数字を見てもいまいちピンとこない。日本円に換算するのも面倒だし、換算したところで高が知れている。


 もっと金を得ようと思えば出来ないことも無い。将棋なりチェスなり持ってくればたちまち流行るだろう。

 でもそんな事は絶対にしない。俺は、娯楽が少ないという現状を否定したくないからだ。

 娯楽が無い?それなら創ればいいじゃない。いいや、それだけはダメだ。

 人は集まり、魔物から身を守って過ごしている。俺が知っている魔物も基本的には群れを作るし、知恵を持っている。オークに関しては話せるしな。

 人間が成長するように、魔物も成長する。いつ人間が負けるか分かったものではない。

 グダグダと言葉を並べたが、そろそろ結論に入るとしよう。


 娯楽が少ないというのは娯楽を得る暇が無いという事であり、人間が考えることを止めているという事である。この大陸でニートなんぞ必要ない。各々が必死に生きているんだ。

 無から有を作り出せとは言っていない。必要なら自分等で考えて行動してくれ。

 俺はそう思う。この星に転生者が出てきて広めようものなら潰してやる。


 自分で考えて死ぬと決めた彼女はどうなっただろうか。


 ダメだ。結局はここに戻って来てしまう。

 何かある度に理由を付けてはモワティエに繋げてしまうのはどうにかならないのか。



 レイと別れた後、気持ちを落ち着かせるために、ダンジョンに憑依させる人形の稼働実験をするとしよう。

 思えばコレも随分と放ったらかしだった気がする。


 人の骨格をベースとした物に、魔力に反応する線を繋げていき、線の動きを阻害しないように肉を付けていく。

 魔力線で制御するので肉は本当は要らない。見せる筋肉と似たような感じだ。

 内蔵も必要ないので、そこら辺に主要なパーツを収める。全ての魔力線が集まる核であったり、バランサーであったりと色々ある。

 後はそこに皮膚を被せれば完成。


 「取り敢えず入ってみてくれ」


 ダンジョンにそう頼めば、無事に憑依が出来たのか、人形が独りでに動き出す。

 手を取って助けてやりながらではあったものの、上手く立つことが出来た。ダンジョンの環境維持に使われているMPを人形の方に使っているので、周囲の気温が下がるのを感じる。


 魔力線がMPに反応し、黄緑に似た色の線が皮膚に現れる。

 脚周りに多めに配線したんだが、足りなかったかな?やはり筋肉が無いと厳しいか。


 「・・・あ"、あ〜」


 喉の線が光り、ダンジョンが声を出す。

 一応声は出せる、と。魔力線で喉の空間の開け閉めをし、風を体内から送り出して声を出しているから出るには出るんだ。調節はまだまだこれからだけどな。


 傍から見るとリハビリをしているみたいだけど、これでも結構必死だったりする。


 「どうだ。話せそうか?」

 「・・・どうにか、簡た、んな、ものなら」


 合間合間にタメを作りつつもなんとか話すことは出来るらしい。

 伊達に周囲の魔力を使ってダンジョンを管理していない。(さす)ダン。


 手を引いて何歩か歩かせると、両手を横に広げて自分で歩き出した。


 「無理はしなくていいんだぞ。話せるだけでも十分なんだから」

 「だ、い、丈夫」

 「・・・諦めろ、今は無理だ。後で考えておく」


 ヨチヨチとでも歩けているだけで大したものだ。無理に動かさくても問題ない。

 歩きたがるダンジョンを多少強引に背負い、城内を歩いて回る。人形自体はそこまで重くない。普通の人間と同じか、少し軽い程度だ。


 「名前はあるのか?」


 ダンジョンさんはダンジョンさんな訳だが、ずっとダンジョンと呼んでいると言うのも分かりずらい。

 ていうか、ダンジョンに名前が有るのだろうか。シュヴァルツヴァルトという名前はあるが、あれはどちらかと言うと国の名前だ。


 「畔木(くろき)、かも、め」

 「それは俺の名前だ・・・。いや、合ってるのか?」


 俺の本名を名乗るダンジョン。

 彼か彼女かは知らないが、俺は、この星にやって来た時からダンジョンと共にある。それなら、ダンジョンが俺の名前を語るのもあながち間違いでは無いのかもしれない。

 少々強引かもしれないが、俺はダンジョンであり、ダンジョンは俺である。初期から持っていた『人宮一体』とはそういう意味だったのだろうか。


 「うーん、まぁ、かもめでいいや」


 俺の事を「かもめ」って呼ぶのは誰が居たっけな・・・。

 マインが「カモメ様」だろ。・・・後はアクルか。アイツは「カモメ」だ。

 かもめの見た目は俺とは違うから間違えようが無いんだが、一応は主要な守護者にはお披露目をしておいた方がいいだろう。


 「誰から呼ぼうか。忙しくない奴は居ないしな」

 「ギフト」


 誰から呼ぼうか悩んでいると、かもめがギフトの名を呼んでいた。

 確かに彼女は俺に使えて長い。彼女に伝えておけば勝手に広がっていくだろう。


 「呼びま、し・・・た?」

 「確かに呼んだが、どうして疑問形なんだ?」

 「あ、いえ。何でもありません」


 『人宮一体』で俺達の前に現れたギフト。俺は呼んでいないので、かもめの声に反応したんだろう。

 俺としては、ダンジョンの声に反応したというのは少し悲しい。ダンジョンの機能としては正しいんだけども。

 ギフトが戸惑っているのもその辺にあるのだろう。俺に呼ばれたと思ったら、本当は見ず知らずの奴に呼ばれていたのだから混乱して当たり前だ。最後は何か納得したような表情をしていたので、かもめがダンジョンだと気づいたんだと思う。


 「こちらの方はやはり・・・」

 「ダンジョンさんだよ。今は取り敢えずの形が出来たから呼ぼうとしたんだが、まさかダンジョンの声に反応するとは思わなかった」

 「それは申し訳ありませんでした。マスターと感覚が似ていたので」


 かもめは俺そのものだからな。間違えてもおかしくは無い。

 心境的には複雑だが仕方ない。べ、別に悔しくなんて無いんだからね!?


 その後も爵位持ちをかもめが呼び、俺が膝をつくというのを何度も繰り返した。


 「お前ら何なんだよ!親の声を間違えるとかそれでいいのかよ!」

 「マスターは父親で、かもめ様は母親と言ったところでしょうか。両方とも親ですから問題ありません」


 そんな謎理論を言われると何故か納得してしまうのはどうにかならないモノか。

 俺が情報を送り、かもめが生み出す。そう考えると、なるほどな、と思う。かもめの依り代となっている人形は男の姿をしているから・・・・・・この考えはココで止めといた方がいいな。女性型も作っておこう。念のためな。念のため。


 守護者は呼び終わったため、最後にレイを呼ぶ事にする。

 彼女は流石に俺の声だと分かってくれる筈だ。もし分からなければひきこもる自信がある。むやみやたらにMPを使ってしまうかもしれない。


 「レイ」


 爵位持ちが見守る中、かもめが声をかけた。そのの隣では、腕を組んで祈る俺の姿があった。

 頼むぞ。絶対来るなよ。知らず知らずのうちに左手の薬指に右手が伸びていたのに気づき、指輪を軽く見てから右手を戻す。


 「何かレイ様から連絡はありましたか?」

 「いや、反応しないな」


 という事はだ。俺の勝利だ、やったぜ!

 ハハハ、お前らとは違うんだよ、お前らとは。

 苦笑いをしている守護者達を尻目に、自分でも分かるぐらいに表情をほころばせる。


 「ちょっとレイの所行ってくるわ」


 嬉しさのあまり、技能を使ってレイの所へと行く。

 守護者達の表情も苦笑いから少し変化している様な気がした。あの顔はそうだな・・・、趣味に走る父親を仕方なく見守る成人した子供たちと言った感じだった。


 気が付けばモワティエの事はすっかり忘れていた。

 持つべきものは優秀な守護者と最高の嫁だな。


 ありがとな。


 □


 レイに膝枕をしてもらいながら、先程の出来事を話した。すると、彼女は少し恥ずかしそうにこう言った。


 「何ですかね・・・。自分でも分からないんですけど、エバノ様に話しかけられた時は薬指が反応するんです。私でもよく分かってないんですけどね」


 彼女は恥ずかしかったのか、俺の目の辺りに右手を置いてユックリと撫でた。

 ほっそりとした、少しだけ冷たさを残した、綺麗な指。

 その感覚を感じながら、俺はあることを考えていた。


 これはあくまでも俺の持論だ。

 指輪には、支配するという意味があると思う。

 薬指は血管が心臓に繋がっていると聞く。だからこそハートに1番近い指と考えられ、愛の印として左手の薬指に指輪をはめるのだようだ。

 今さっき説明した通り、薬指は心臓に1番に近いのだ。そこに相手から貰った物を付けることで、自分の命を相手に任せる、支配させる行為が結婚だと思っている。


 「主天使に相応しいじゃないか」

 「フフっ、そうですねー」


 持論を垂れ流す俺に、レイは優しく微笑んだ。


 「私は旦那様に支配されてます」

 「俺もレイに捕まってるよ」


 それからレイの屋敷には2人の笑い声が響いた。

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