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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
十章 後悔噬臍
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掃き捨てよ

ファイン

 硝子がらすの烏。


ケイワク

 硝子がらすの角を持つ牛。

 あれから、モワティエのダンジョンで1日休んだ。

 そして遂に、戦いが行われている場所に3人で足を運ぶ。


 以前のダンジョン同士の戦いは神が介入していたのでアチラのダンジョンに一方的に攻め込めた訳だが、今回は純粋にダンジョン同士の戦いなので、少しやり方も変わってくる。

 ただし入場の仕方は変わらず、ダンジョン内に出来る時空の裂け目的な何かから行くことが出来る。


 形としては、モワティエとDMOのダンジョンマスター3人のダンジョンの地形が入り乱れている様な感じだ。

 デピエミックも戦いに参加しているものの、ダンジョンを失っているのでフィールドに影響を及ぼす事は出来ない。彼がダンジョンを持っていたのならどんな感じに変わるのか。聞いた話しだと水場が殆んどを占めていたようだし、水場が増えるのではないだろうか。


 「モワティエのダンジョンはどんな感じなんだ?」

 「何でもできる万能型。ダンジョンは基本的に陸地」


 万能型か。人型が多いのかな?

 俺にも参考に出来そうなら試してみるのもいいかもしれない。うちのダンジョンも万能型と言えば万能型だ。水中以外はある程度カバーしている。


 「行こうか」


 彼女の呟きに合わせて方陣が広がり、戦地へと飛んだ。


 そこは戦地にしてはとても静かだった。

 草原と水地とが無作為に配置されていて、紫蘇色しそいろの空が広がる。

 膠着状態なのか守護者の姿は何処にもなく、俺達が歩く音だけが耳に届く。荒廃した世界そのものの様な空間。

 知らず知らずのうちに俺の体温は上がり、戦闘準備を整えていく。一度ひとたび空気を吸えば肌が粟立あわだち、ココが戦場であると伝えてくれる。

 感覚が戦闘モードに切り替わっていくような感覚。鋭くなっていく五感を引き連れて更に進む。


 道中でデピエミックの守護者が合流した。

 上半身は人間の女性、下半身は虫。甲殻を身に纏い、潰れた胴をしていた。蜂の様に鋭い針を持ち、2本の細い脚で立っている。その脚の上にも同じ部位があり、補助腕の様な役割を果たしている。

 背中に透明な2対の羽を持ち、両手には歪に湾曲した片手剣を握っていた。

 活動域が水陸両用であり、薄手の服しか来ていないので、身体のラインがハッキリと分かる。彼の方を覗いてみれば、俺の方を向いて親指を立てていた。それに無言で親指を立て、守護者の名前を聞く。


 「アムフィアと言うんだ。私のダンジョンでは2番目ぐらいかな」


 構成は状態異常特化だそうで、羽を利用した高速移動での短期戦が主な戦い方だとか。水中だと羽が硬質化して、それで水をかき分けて進むんだそうだ。

 彼のダンジョン内での強さで言えば2番目に当たるらしく、主力として活動をしていたらしい。

 俺と殆んど同時期にダンジョンマスターになったようだから、俺よりも発想力があるのは間違いない。勿論守備範囲内です。


 モワティエからゴーグル越しの視線を受けつつ、何体かのアンフィアが俺達の後を付いてくるのを眺める。

 守護者が姿を見せたという事は目的地はそろそろ近いのではないだろうか。最初は、ココに入れば直ぐにドンパチするのかと思っていたが、そうでは無い様で、結構な広さがある。


 少しすると、遠目に武装した集団が見えた。

 警戒する俺を余所に、モワティエとデピエミックは涼しい顔をしている。どうやら彼等どちらかの守護者のようだ。俺が焦るから事前に教えておいてくれ、マジで。


 「どっちの守護者だ?」

 「あれは私の」


 声を上げたのはモワティエ。それじゃあアレが万能型の守護者という訳だ。

 ここから見た感じだと、人型なのは分かった。数は・・・4かな?


 「ティア、どうしてココに居るんだ?」


 俺達の元へとやって来た守護者は、開口一番そう言った。別に厳しく言っている訳では無くて、普通に疑問に思ったことをそのまま口にしただけみたいだった。

 ティアと言うのはモワティエの略称らしい。


 その守護者は、多くの腕を持っていた。人間の女性がベースになっているのは分かるのだが、その姿は修羅像ととても似ている。

 普通の腕でとは別に、肩と肩甲骨けんこうこつの辺りから腕が生えていたのだ。それぞれの手には長剣が握られており、刃は星空を映した木と同じ様な色をしていた。

 金糸で飾られた白色の服を着ていて、これから神事が行われると言われても疑いはしない。

 凛とした空気を纏った彼女たちに近づいただけでコチラが傷ついてしまいそうだ。


 「彼を案内しに来た」

 「エバノだ。微力ながら力添え出来ればと思っている」

 「そうか、協力感謝する」


 簡単な握手をすれば、戦況を教えてもらった。

 水中はデピエミックが、陸地はモワティエが、空中は竜がそれぞれ担当していて、どこも均衡状態だという。

 これもう俺が何かする必要な無いんじゃないだろうか。


 「俺に本当に何か出来るのか?十分戦えている様に思うんだが」

 「私がキツイんだよ」


 そう答えたのはデピエミック。

 なんでも、彼はダンジョンを持っていないので、領域を支配することが出来ず、敵を倒してもMPが回収出来ないとの事。戦えば戦うほどに戦力は少なくなっていく状態にあるらしい。

 じゃあ俺は水中担当かな?水中で活動可能な守護者って居たかな・・・。スライム系は出来ない事もないか。


 「水中を担当すればいいのか?」

 「すまないね。私も戦わせてもらいはするけど期待はしないでくれたまえよ」

 「了解した」


 それじゃあ俺も参戦させてもらうかね。

 まずはダンジョンをこの空間に繋げないとな。感覚としては、領域を創るのに近い。MPは消費する事は無いものの、不快感に似た不思議な感覚が俺の中に広がる。


 「シュヴァルツヴァルト、戦闘に介入させてもらう!」


 高らかに叫べば、俺が立っている場所を起点として石畳が生まれていく。

 これでダンジョンの接続は完了だ。それにしても俺のダンジョンは石畳か・・・。馬が思いっ切り走れなさそうだから街の中には石畳を引いてないんだけどな。『謁見の間』の方に引っ張られたのか?

 まぁいいか。


 動き始めて良いのかを確認すれば、俺のターンが幕を開ける。


 ファインを100羽転移。

 方陣から、硝子がらすの烏が姿を見せる。各々が『分身』を作り出し、空へと羽ばたいていくのを眺めながら、水中用の守護者を創る。


・ジャンル選択[海]

・造形『龍』

・細部設定 技能『威圧』『硬化』『再生』『身体能力強化☆』『状態異常無効☆』『熱探知』『水魔法☆』『風魔法☆』『雷魔法☆』『物理無効』『変幻自在』『魔法抵抗』『MP増加』

      器官『火炎袋』

 消費MP1,426


・名称『レヴィアタン』


 389,589(-1,426) → 388,163

 ぼくがかんがえたさいきょうのしゅごしゃ!

 伝説通り、最強の名に恥じない活躍を期待する。

 創った俺にもレヴィアタンの体長は分からない。ただ言えるのは、数えるのが億劫になる程に長いという事。その長い身体は鎧のな甲殻に覆われ、口元には鋭い牙が並ぶ。

 ギラギラと輝く目は大きく、睨まれただけで全ての時間が止まりそうだ。


 レヴィアタンは手短な水場に潜ると、本格的に動き出す。

 彼女が動くだけで水面には幾つかの渦が巻き、終いには大きな1つの渦となって敵対者を屠る。

 動きに納得がいったのか水面に飛び上がり、隣の水場へと飛び込む。

 盛大に弾け飛ぶ水飛沫を横目に、皆に先を促す。


 「んじゃ行こうか。放っておいても殲滅出来るでしょ」

 「ははは・・・、凄いね」


 デピエミックが乾いた笑いを浮かべているが何かあったのかな?モワティエは相変わらず表情が読めない。ゴーグルはともかく、ローブは脱いでもいいんじゃないだろうか。せめて口元を見せてくれ。


 さて、空の方もそろそろ接敵するのではないだろうか。どこいらに敵が居るのかは分からないが。

 『MP譲渡』しに帰って来た時に確認するとしよう。


 レヴィアタンが暴れた影響か、陸地にも敵らしき姿が現れ始めた。

 それは蛇だったり、トカゲだったりとバラバラだったが、強力そうだというのは共通して言える。


 「レイ来てくれ」

 「・・・おひさしぶりですね」

 「2日かぶりだな。会いたかったよ」


 次に呼んだのはレイ。

 久しぶりに会うと、心の中に安堵感が広がる。少し変態的になってしまうが、彼女の匂いを嗅ぐと安心できる。

 俺が安心するためだけに呼んだのでは無くて、彼女を呼んだのにはちゃんとした理由がある。


 「いきなりで悪いけどケイワクを呼ぶぞ」

 「ええお好きにどうぞ」


 彼女を引き寄せ、左手の薬指を撫でながらお伺いをたてる。

 ケイワクを呼べばアイツ等も一掃できる。


 許可をもらったので、俺の領域では無いレイの階層からでも守護者を呼ぶ事が出来る。

 ケイワクは空気が震える様な低い声で鳴くと、レイの姿を一瞥し、硝子がらすの角を白く染め上げた。間髪入れずにケイワクの口から熱線が放出され、遠目に見えていた軍勢はその殆んどを塵へと変えた。


 「これで微力・・・?」


 それは誰が呟いたのだったか。赤に染まった目の前の光景を眺めていた俺には、それがハッキリと聞こえた。


 火力に関してはレイの方が上なんだよなぁ・・・。

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