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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
十章 後悔噬臍
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竜騎士

 旅はレクタングルからスタートした。国同士で話し合いをした帰りに創った領域に転移し、北を目指して飛ぶ。


 アサルトの背には俺1人。他に搭乗員は居ないので、おもいっきり飛んでもらっている。時速何㎞かは分からないが、かなり早いのだけは分かる。

 アサルトの甲殻にしがみつく姿勢のまま守護者の鎧の中に埋もれて風や埃から身を護り、『風魔法』のガードも最小限に留めているので、その分スピードが出ているのだ。



 目的地と思われる場所に着いたのは、日も暮れようとしている時間だった。

 それは鬱蒼とした森から伸びていて、あまりにも不自然過ぎる。見た目は塔。しかし大きさは普通の物とは比べものにはならない程に大きかった。

 組まれる途中で建造が止まっているのか、高さはそれほどでもない。時間の経過によるものか、ピサの斜塔よりも酷く傾いているものの、コレが目的の物だろう。


 もう少し北に行けばダンジョンマスターと竜の街があるはずだが、もう直暗くなる。

 今日はここまでだな。


 このままではアサルトが着陸できないので、引き返して森が途切れている場所まで移動する。ドラゴンが居るのに寄ってくる魔物も居ないだろう。

 完全に視界が潰れるまでに枯れ木でも拾ってくるかな。

 守護者に任せない完全な野宿は初めてだ。こういうのは男心がくすぐられるよな。見張りは守護者がしてくれるとは言え、俺も仮眠を取るぐらいにして見張りに参加させてもらおう。



 眠気を誘う炎の揺らめきを眺めながら、木の枝が弾ける音を楽しむ。

 ・・・この様子なら少し薪が足らないかな。『火魔法』があるから大事にはならないと思うけどな。

 本当に酷いようなら守護者を連れて木の枝を拾いに行くとしよう。


 耳を澄まして様子を探っても、拾ってくるのは焚き木の音ばかりで何も聞こえない。

 闇が周囲を支配する中、焚き木の音だけが聞こえる。それはとても心地よくて、起きていようと思っていた俺も闇の中へと引き込まれていった。



 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・今何時だ。寝てたみたいだな。

 視線を焚き木の方に向ければ、月明りに照らされた、灰になった薪が見える。

 ここは森の木々が無い分、月が良く見える。月の位置からすると深夜0時ぐらい?懐中時計を見てみれば1時。・・・おしい。

 実家に居る時はよく綺麗な月が見えたもんだが、場所は変わっても月は綺麗だ。


 神が言うには、この星の月が蒼いのは洪水があったからだそうだ。未だに水は引かず、月には水が満ちている。

 星を覆うほどの洪水と聞けば、頭に浮かぶのは『ノアの箱舟』。人類の一部を残して洪水に飲み込まれた話しは有名だろう。


 色々イベントも出て来たし軽く年表が作れそうだ。


・アバビムとスワイヴが追放

・ノアの箱舟

・バベルの塔建造開始

・竜 対 人、ドワーフ、ホビットの戦い

・アブラムが登場し始める

・アブラム追放

・色々すっ飛ばして今に至る


 今まで出てきた重大なイベントを纏めるとこんな感じかな?

 アブラムがサラッと追放されてるけど、本当はもっと重要な立ち位置に居るんだ。知りたかったら自分で調べてみてくれ。


 他に言う事も無いな~。良い眠気覚ましだったんだけどな。

 大人しく起きておくしかないか。



 そろそろ空も白けて来る頃、空に1つの影が走った。

 生体アーマーは吸い付くように俺の身体にくっつき、鎌は俺の掌へと収まる。

 俺もアサルトの背に乗って離陸の体制を整えた。


 影の正体は何かと頭上を見上げれば、丁度俺の頭上に影が来ていた。

 鳥の様なシルエット。陽が完全に登っていないので姿はしっかりと見えないが、ここに来て飛行系の魔物なんか1つしか思いつかない。


 「離陸するぞ!」


 奇襲をしてこない事からも、相手に攻撃の意思があるとは思えない。

 俺達に敵意が無いのを知らせる為に火球を空に打ち上げれば、アサルトに離陸を促す。このまま地面に居るのは不利だ。


 数歩助走をつけて離陸。この間に相手側からの攻撃は無い。

 竜のマスターがダンジョンマスターなのか、同じ竜だからと言う理由で攻撃を控えているのか。

 取り敢えずは接触するしかないか・・・。


 宙に何度か円を描く。互いに攻撃の意思がない事は分かった。

 間合いを詰めよう。


 「ゆっくり寄せてくれ。刺激するなよ」


 そう指示を出せば体感速度が少し上がり、竜と思われる相手へと近づいて行く。

 近づけば近づいて行くほど輪郭がはっきりしていき、その姿もハッキリと視認する事が出来た。俺が知る竜で間違い。

 さっきは竜単体で俺達に寄って来たのだとばかり思っていたが、その背には人を乗せているようだ。ここから見える竜の色は灰色。4足に翼が生えた一般的な竜だ。

 ・・・人間の方はまだ詳しく見えない。声は聞こえるだろうか。


 「聞こえるか!!話しがしたい!!」


 返答は帰ってこず。届いてないのか?

 もう少し近づくか?いや、これが限界だろう。このままいけば翼がぶつかる可能性がある。


 しょうがない。相手から何も行動を起こしてこないのなら俺が起こすまでだ。


 「アサルト!バベルの塔に向かうぞ!」


 さあ、どうする。

 ここで攻撃をしてくるようならこれ幸いにと反撃をするつもりだが。領域外だから『鑑定』出来ないのが地味に痛い。

 相手が何者か分かれば動きやすくなるというのに。


 並走する様に飛んでいたアサルトは、ユックリとバベルの塔へと進路を取り始める。

 この動きは相手も気付いているだろうに、これと言って妨害をしてくる気配も無い。これは通ってもいいという事か?せめて何か動きを見せてくれ。


 バベルの塔へと向かうアサルトの後をピッタリと付いてくる竜。灰色と思っていたのは、陽が出ていなかったために俺が見間違えたようだ。本来の色は白。体長で言えばアサルトと同じ様な大きさだろうか。


 「俺の声が聞こえるか!!」


 搭乗者は無理でも竜になら聞こえるかと思っての声掛けを行う。

 言葉が違っても技能の効果で通じる筈だ。それで何も返ってこないのなら、本当に聞こえないのだろう。

 既にバベルの塔は目と鼻の先にある。相手にあまりにも動きが無いのでじれったくてしょうがない。


 「仕方ないか・・・、このまま行けば街があるはずだ。そこまで飛ぶぞ」


 指示を出せば速度が上がり、何処にあるかも分からない街を探す。

 バベルを過ぎても反応は無し。速度を上げたアサルトに負けないように速度を出して俺達の後を追う。


 (ギフト、一筆頼む。内容は「当方に敵意無し。神から状況は聞いている。案内求む」。これでファインの足に結んでくれ)

 (分かりました)


 ギフトからすれば意味不明だろう。それでも応えてくれる辺り流石ギフトと言わざるを得ない。

 準備完了の声が届いたので、俺も姿勢を整えてその時を待つ。


 ここで「お助けマント」の出番だ。

 このマントに刻んであるのは、転移の方陣。これによって俺が領域を展開していない場所でも守護者を呼び出せる。

 俺の思惑通りに方陣は発光し、ガラスで出来たカラスが一羽姿を現す。


 まずはファインを分身させ、分身体に手紙を括り付け直す。

 短い号令と共に後方へと飛ばされる様に流されて行った分身体を眺めながら様子を窺う。

 これで分身体がやられれば敵対者。そうでなければ協力者と判断させてもらう。


 最後の判断の返答は、無事に帰って来た分身体が語っていた。

 分身体の足には俺が巻いたのとは別の紙が巻かれていて、その内容は以下の通り。


 「後ろにつけ」


 実に簡単で分かりやすい。

 役目を果たしたファインはダンジョンに帰還。俺はアサルトに指示を出して白竜の後に続く。

 それを確認したのか時計の針で言う一時間分ほどの進路変更を行い、目的の場所にまで案内をしてくれる。


 目的地に着くまでは暇なので、竜に乗っている人物について考えてみる。

 とはいっても結論は見えている。彼か彼女かは知らないが、ダンジョンマスターには違いない。神がダンジョンマスターと竜の街と言っていたので、普通の人間が居る筈が無いのだ。

 俺をダンジョンマスターが直々に見に来るなんてのも考えられないんだけどな。ダンジョンマスターの子供という線が濃厚だろう。


 考えてみればダンジョンマスターって1人で完結しているよな。

 衣住食は自分で賄えるし、身の護りも完璧。理想の相手すら自分で創る事が出来る。寿命で死ぬことも無い。

 神の手から離れた状態でも生きていこうとすれば、1人で全てをこなす必要があると言いたいのか?確かに周りは敵だらけ、頼れる人間なんぞいる筈もない。そうなってくるとダンジョンマスターの能力は妥当なものに感じる。

 ん?・・・最初のダンジョンマスターが神の手から外れた者なら俺はどうなるのか。地球に神が居たとして、その神から離れた事によってダンジョンマスターの条件を得た?

 他のダンジョンマスターはどうか。俺とレイだけでは条件を絞ることは難しいものの、互いに死んだことがあるというのは一致している。


 ・・・どうしたものか。DMOの集まりがまともな物に見えてきた。

 ダンジョンマスターは神から見放された。

 孤立無援。頼れるのは己のみ。

 そんな奴らを集めたのがDMO。

 神に捨てられた彼らは、洪水によって沈んだ月へと目指している。


 本来のダンジョンマスターとは見捨てられた月の住人で、故郷に帰ろうとしているのではないか。ダンジョンマスターの能力があれば水なんて幾らでも操れる。


 そう考えると俺はなんだ?俺は彼らとは毛色が違うダンジョンマスターだ。


 頭に浮かんだ思考を振り払い、眼前の竜の尻尾を追いかけた。

計算ミスや誤字脱字が多く、申し訳ありません。

そして、ご指摘ありがとうございます。


活動報告の方にも載せていますが、更新速度が遅くなるかもしれません。


まだまだ未熟者ではありますが、今後ともよろしくお願いいたします。

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