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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
十章 後悔噬臍
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硝子の烏と撃たれた流行り病

 アクルが方陣を刻んだ「お助けマント」(アクル命名)はきちんと効果を発揮した。

 効果については実戦の時に説明するつもりだ。


 俺と「お助けマント」があれば、この作戦は殆んど準備完了と言っても過言ではない。今ある戦力で俺が考えている全ての事は出来るし、死角も無い。

 死角が無いと言っておきながらこれから守護者を創るのだが、その守護者の技能を見てもらえばソイツが必要になる理由も分かると思う。


・ジャンル選択[陸]

・造形『人型』

・細部設定 技能『隠密』『風魔法』『気配察知』『視力強化』『身体能力強化☆』『熱探知』『弓術☆』

      目『千里眼』

 消費MP835


・名称『シーゼン』


  MP 443,424 → 442,589


 シーゼンは、スナイプアーマーの難点を補うために創った。

 これで、『弓術☆』を『身体能力強化』が無い状態のまま本気で矢を射ると反動で腕が吹っ飛ぶという状況は防ぐことが出来る。

 弓兵なので『千里眼』を付けたのだが、消費MPが500とそれなりに高い。それでも日緋色金ひひいろかねが1,000だったので妥当ではないだろうか。千里を見ようと思えばこのぐらいしても構わないと思う。

 彼女には戦闘中ぜひ袴を着てもらいたい。和弓っぽいのも商人から購入済みだ。


 彼女の髪の色は群青で、少し長めのショートヘア。髪の隙間から見える瞳は『千里眼』のせいか、ほんのりの光を放っているかのように見える。元の紫紺色の瞳と合わさって何とも幻想的な雰囲気をかもしだしている。

 身長は低く、155ぐらいだろうか。


・ジャンル選択[他]

・造形『鳥』

・細部設定 技能『風魔法☆』『硝子がらす体』『硬化』『全魔法吸収』『分身』『MP吸収』『MP譲渡』『MP増加』

      MPブースト+12

 消費MP530


・名称『ファイン』


 ファインは硝子ガラスのカラスだ。MPにかけたブーストは端数を合わせるためのもので、そんなに意味は無い。

 見てもらったら運用方法は分かりやすいと思う。『分身』からの特攻、『MP吸収』でMPを増やし、俺に譲渡。

 本体は俺の近くで大人しくして貰っていればそれでいい。

 『分身』は自らのMPを消費して分身を作り出す技能だ。分身がいる間もMPは問題なく回復するので、上手く動作すれば全面制圧なんて作業になり果てる。


 MPがあるので調子に乗って100羽創造。

 442,589(-5,3000) → 389,589


 シーゼンは城壁に、ファインはシュヴァルツヴァルトの西側の森に回した。

 普段はそれぞれギフトとシュテルの守護域に入る事になる。


 やる事やったし、そろそろ『五階層』に移動するとしようかね。



 レイの階層である『五階層』。そこで待っていたのは、レイと2体の守護者。

 土で出来たゴーレムが氷の鎧を纏い、鎌を持っているのが1体。

 もう1体は、流体金属で作られたマネキンの様な姿をしている。


 「ごめん、待たせたな」

 「いえ、大丈夫でしたよ」


 挨拶も程々に、本題に入ったのはレイの方からだった。


 「今回の作戦に彼等を連れて行って欲しいんです」


 彼等とはレイと一緒に居る2体の守護者の事だろう。

 マネキンの方は流体金属なのでディアと同じ運営方法だと思うのだが、ゴーレムの方はどうしたらいいのか分からない。


 「鎌持ってる奴はどうやって連れていけばいいんだ?無駄な数は連れていけないのは話したと思うんだが」

 「ええ。その心配は要りません」


 俺が疑問を口にすると、彼女はゴーレムの手から鎌を受け取った。

 すると、どうした事か氷の鎧は砕け散り、中に詰まっていた土は泥となって地面へと落ちていった。


 「見ての通り鎌が本体ですから場所にはさほど困らないと思いますよ」

 「なるほど、そう言う事か。普通の武器では届かないだろうしありがたく受け取っておくよ」


 鎌の縦の長さは180㎝程。内向きに円を描くような刃も角度を調整できるようなので場所には困らないだろう。


 場所が場所なのでフランメは使えず、武器もアイリードや日緋色金の剣だと射程が遠すぎる。それをレイの守護者で代用できるのは助かった。

 基本的に人型の守護者しかいない俺とは違い、レイの守護者の上位陣はモンスター感が強い者が殆んど。それがこんな形で手助けをしてもらえるとは。

 俺も、もしレイが行く事になったらディアも行かせるように言っただろうし、これからも持ちつ持たれつの関係で居たいものだ。



 レイから守護者2体を借り受けた後、レイから仮面を受け取った。リィムが付けているのと同じ物かと思ったが、光に当てると薄っすらとシュヴァルツヴァルトの国旗が見えた。特殊な塗料が塗られているのか、白い光を反射する、折れたバラを咥えたかもめ

 顔を全て覆うような大きさの仮面は、後頭部で紐を結んで止めるようになっている。仮面を着けてみても息苦しさを感じる事は無い。そういう機能を持ったダンジョン産の仮面なのだろう。

 コレに合わせて、『隠密』が付いたローブを被れば身バレ防止は完璧。更にアクルと作った魔道具であるマントを着れば準備は完了だ。ローブの上からマントと言う、変な恰好だが、自覚しているので何も言わないでほしい。アクルにはもの凄い笑われたが。


 ディアと流体金属の鎧の上からローブにマント。顔には仮面を付け、自分の身長よりも大きい鎌を持つ。

 ・・・完全に死神ですわ。


 さて、これで準備は整った。

 後は現地で創る事になるだろう。


 俺の顔を持ったリィムに仕事を放り投げ、アサルトに乗って北の地を目指す。

 『最古のダンジョン』にはどんな守護者が居るのだろうか。ぜひ俺の参考にしたい。


 □


 一方、とあるダンジョンマスターは水の壁に囲まれた部屋で己の守護者からの念話を聞いていた。

 光源は何処にも見えないが、決して暗くは無く、明るくも無かった。そう、ここはダンジョンマスターが必ず持つ始まりの場所。例えば『謁見の間』であったり、『水と柱の部屋』であったりとダンジョンの主によって姿を変える。彼の場合は『水の牢獄』とでも呼ぶことにしよう。


 その『水の牢獄』に声が響いた。


 「・・・まいったね」


 水によって吸収される事無く響いた声は、大変若い物だった。

 彼の見た目の年齢は18歳ほど。それは彼がダンジョンマスターであるという証明の1つでもあった。


 彼の名前はデピエミック。彼がDMOに所属してからもう少しで5か月が経つ。

 時期的に言えば、かもめがこの星に来る数日前だ。

 デピエミックもまた鴎と同じ様にDMOに仕方なく入った口であり、もちろん不満もあった。そこに声を掛けたのが神。彼のダンジョンの特性をいち早く理解し、天使に接触させた。接触の理由は簡単だ。手紙をダンジョンに投げ入れる。ただそれだけ。

 信じるか信じないかは自由。信じないのであれば、他の適任者のダンジョンに手紙を投げ入れるまでの事。

 だが、彼は神を信じた。知っていたのだ。自分のダンジョンがいつかは攻略される事を。


 「状態異常無効とか聞いてないな・・・」


 彼のダンジョンが攻略される理由、それは『状態異常無効』の技能持ちだと彼のダンジョンはちょっと手のかかる場所でしかなくなるかだ。

 最初に鴎が覗いていたDMOのモンスターリスト。その内容を覚えているだろうか。


・蚊[3/デピエミック]

・ネズミ[3/デピエミック]

・ハエ[3/デピエミック]

・毒小蜘蛛[4/デピエミック]

・蛭[5/デピエミック]

・大ネズミ[7/デピエミック]


 1回出たモンスターリストが上に書かれている物になる。

 低コストばかりの守護者。力の無い守護者。そうやって他のダンジョンマスターから笑われてきたが、彼は諦めることなく数を揃えていった。気絶と覚醒を繰り返す日々。強い守護者を創りたいのを堪え、唯々数を創る。

 そうして彼のダンジョンがようやく完成したのだ。ジャイアントキリングを実現できるダンジョンが。


 それからはMPを貯め、強い守護者を少しずつ増やしていった。そのどれもが『毒』や『麻痺』を持つ者ばかりであり、今のこの状況を招いた原因である。


 神からの号令の元、DMOを脱退し他のダンジョンを攻略して行った。途中までは順調だったのだが、相性の悪いダンジョンに当たってからはジリ貧だ。

 守護者のジャンルが[死]で埋め尽くされたダンジョンがそれにあたる。『状態異常無効』が無くても状態異常にかかる事は無く、まさに天敵。

 数で押され、撤退するしか他になくなった。撤退後は『最古のダンジョン』に匿って貰える事になっている。自分はよくやったと心で何度か唱え、デピエミックは『水の牢獄』から姿を消した。


 こうして『水浸しのダンジョン』はDMO傘下のダンジョンマスターの手に渡った。

 しかし、デピエミックが守護者の殆んどを潰したダンジョンの数は10。短時間でこの数は称賛をあげるべきであろう。

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