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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
一章 虚々実々
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紙と監視塔

 美味しさに驚くヴェーデを眺めながら食事を終えた。

 今にも倒れそうだが、人前で倒れるわけには行かないので玉座に戻るまでは耐えるしかない。

 ヴェーデの部屋をどうするかで悩んだが、ギフトの観察の元、『一階層』に居てもらう事になった。ダンジョンの温度は変化しないし風邪は引かないだろう。


 (寝るから、後は任した)

 (おやすみさいませ、マスター)


 後はギフトに頼んで玉座に腰掛ける。

 直ぐに眠気に襲われ、意識は闇へと沈んだ。


 □


 目を覚ますと、玉座の前ににギフトが片膝を付いているのを見つけた。


 (・・・なにやってるんだ)

 (・・・・・・)


 寝ているのかギフトからの返答は無い。

 よくこの様な態勢で眠れるな。


 彼女に近付き、俺も膝を付いて頭を撫でる。

 肩で揃えられた黒髪はサラサラで、俺の指が風にでもなったかの様な感覚を与えてくれる。


 「ありがとう、ギフト。もう少し寝ているといい」


 起こしてしまうかもしれないが、取り敢えず玉座に座らしておこう。

 ・・・軽いな。ココも俺の思考が反映されているのか。それにしても軽いが。


名前 : ギフト

種族 : [陸]

HP74

MP74


・技能

暗殺術[熟練度0.01]

隠密[熟練度0.01]

剣術[熟練度0.01]


 寝ているギフトを鑑定してみた。

 特に何も無い。俺が創った通りのステータスだな。


 だがやはり俺のステータスと比べるとHP、MPの面で見劣りしてしまう。

 後から技能を追加出来たら良いのだが、どうしたものか。


 何か役職を与えてみてはどうだろうか。

 出来るかは怪しいが、ダンジョンマスター(おれ)ダンジョン(ココ)の法律なのでどうにかしてみよう。


 「ダンジョン全域に法律を発令する。これより、私、畔木(くろき) (かもめ)を頂点とした階級制度を設ける。

 私は階級の枠外であり、全てにおいて最高指揮権を有するものとする。

 階級については五等爵(ごとうしゃく)を使用し、爵位は私の認証が無ければ得る事は出来ない。

 ダンジョン内で自身より上位の階級の者に敵対してはならない。判断が難しい場合は、私か私に準ずる者が対応する。

 爵位を持たないものは順列では最下位だが、その者を蔑ろにすることを禁ずる」


 下地はこんなものか。

 五等爵(ごとうしゃく)と言うのは、公・侯・伯・子・男の五つの爵位の総称の事だ。

 俺は爵位を授ける立場なので、爵位は無いが、ソレについては言及しているので問題は無い。


 「守護者ギフトを公爵、『第一階層統括公位』に任命する。『一階層』に所属している他の守護者はギフト卿の指示に従うように」


 これで何かが追加されていれば良いんだが。


名前 ギフト

HP74(+45)→119

MP74(+45)→119


・証

公爵『第一階層統括公位』


・技能

暗殺術[熟練度0.01]

隠密[熟練度0.01]

剣術[熟練度0.01]

指揮[熟練度--]制限

人宮一体[熟練度--]制限


 色々増えてるな。

 確認してみよう。


・公爵『第一階層統括公位』

『一階層』の統括者。

ダンジョンマスターには及ばないが、『一階層』に関する権限を持つ。

『一階層』に存在する守護者一体につき、HP、MPが5追加される。

技能『指揮』の付与。ダンジョンマスターの技能を一つ付与(付与不可能な物もある)。

付与された能力は成長せず、制限が掛かる。


・指揮

集団を統括しやすくする。


 『指揮』の説明文が短すぎるんですけど・・・。

 HP、MPが上がったのはマナフライ九匹分か。

 そういえば『人宮一体』は俺も持っているが確認していなかったな。この際に見ておこう


・人宮一体

技能の持ち主はダンジョンと共にある。

ダンジョンとの間に共感覚を得る。


 共感覚は確か、音に色を感じたり、文字に色を感じたりと、通常感じる刺激+αの感覚を生じさせる物だったか。侵入者が現れた時に、アラームの様な音が鳴ったのがいい例だろう。

 ダンジョンと共にあるというのは『地図情報』や『映像情報』の事か。

 思ったよりもかなり便利な能力だ。


 ふむ。公爵一人だけだと寂しいので、他の守護者を創って何か役職を与えるべきだろうか。

 コレはギフトが起きてからだな。


 現在の時間が分からないが、朝食としておこう。

 『一階層』に上がって、マナフライを引き連れ、ヴェーデがいる部屋を目指す。

 『人宮一体』が侵入者が居なくても能力が発動するのを確認したので、ヴェーデが起きていることも知っている。悪いがプライバシーは無い。


 ヴェーデが居る部屋の扉をノックして開ける。


 「おはようございます」

 「おはよう。朝食を摂るから付いてきてくれ」


 彼女と食堂へ行く途中に試してみたのだが、『人宮一体』の『映像情報』から鑑定が出来るのに気づいた。

 『支配域鑑定』はダンジョン内で、自身の目に映っていれば鑑定が通るようだ。


名前 ヴェデッテ・カルタ

種族 : ヒト

HP95

MP80


・証

伯爵『カルタ家三女』


・技能

剣術[熟練度1.05]

速筆術[熟練度5.01]

測量術[熟練度4.32]

馬術[熟練度3.89]


 伯爵のカルタ家?・・・貴族か。

 聞いてみるか。


 「ヴェーデの家は有名なのか?」

 「・・・何故そう思われるのでしょうか」

 「立ち振る舞いで何となく、な」


 警戒されただろうか。弁解しておこう。


 「ヴェーデも無事に話を済ませられれば国に帰るんだ、ココにお前の家の誰かが交渉に来る事もあるんじゃないか?」

 「それは、そうですけど・・・」

 「無理にとは言わないさ。悪かったな」


 そう簡単に情報は渡してくれないか。

 まぁ、カルタ家が交渉に参加出来るほどの力を持っているのは分かったし、もういいだろう。


 ダンジョンの構造を覚えられないようにグルグル回りながら歩いていると、どうしても時間が掛かってしまう。

 歩いているだけなのが退屈なのか、今度はヴェーデが話し掛けてきた。


 「気になっていたんですけど、貴方様の名前を聞いてもいいでしょうか」

 「名前か、そうだな。・・・エバノと呼んでくれ」

 「もう少し分かりにくく偽名を使って下さい」

 「それは無理な相談だな」


 もうそろそろ良いだろうか。食堂に向かうとしよう。


 (ギフト、起きてくれ)

 (・・・・・・おはようございます)


 眠たげな声でギフトが応えた。

 ギフトには食堂前で待機する様に伝えておく。


 そろそろ階段に着くかというところでヴェーデの方を向き、口を開く。


 「畔木(くろき)だ」

 「え?」

 「本名は畔木 鴎。畔木が苗字だ」


 俺の本名を聞いてヴェーデは嬉しそうな表情をした。

 落として、上げる。よく聞く方法だが、コレで俺に対する印象が良くなれば交渉も有利になるんじゃないだろうか。

 彼女は人質である前に客だ。

 ダンジョンいる間は少しでも楽しんでほしい。録におもてなしも出来ないから尚更そう思う。


 そんな事を考えていると食堂に着いた。


 「おはようございます」

 「おはよう」

 「おはようございます」


 挨拶を交わして食堂に入る。

 何を食べようか。俺の感覚では朝だからあまり重たいものは遠慮したい。


 「ヴェーデ、外の時間帯はどのくらいか分かるか?」

 「ダンジョンに到着したのが夜だったので、朝頃かと思いますが」

 「そうか。分かった」


 朝食はサンドイッチでいいだろう。

 足らなければ、また創ればいい。


 「このパンは柔らかくて食べやすいですね」

 「俺の国では一般に売っていたものだ。既に国には帰れなくなったがな」

 「無遠慮な質問をしてしまい申し訳ありません」

 「いや、これは俺が悪いだろう。我が国のかつての繁栄が懐かしくてな」


 しんみりとした空気になってしまったが、俺の狙い通りである。

 嘘は言っていないが、誤解してくれればそれでいい。

 幸い、ダンジョンは城の内装の様な造りだ。

 俺の仕草と嘘とを織り混ぜれば何とでもなる。


 俺はかつての王であり、国は滅んだがダンジョンという形で復興していこう。と、いう感じで話を進めていきたい。


 国を創ろうとしている基礎に、上手く入り込めれば自国にとって有利な国に誘導する事も可能だろう。

 ダンジョンという未知の場所が怖ければ、早期の段階で人質諸共も潰されるかも知れない。


 しかし、どちらも対処をキチンとしておけば問題は無いので、結局は俺次第という事だ。


 「あぁ、そうだ。ギフト、変化に気付いたか?」

 「変化、ですか?」


 そうか、マナフライ九匹が二階層に来ているので能力が素の状態なのか。ちなみに、マナフライは俺の隣で砂糖水を飲んでいる。

 丁度いいのでこのままヴェーデに話を聞いてもらっておこう。


 「かつての爵位を返しておいた」

 「それは・・・。お力の方はよろしいのですか?」

 「無理はしていない」


 ギフトの方も合わせてくれた様だ。ありがたい。


 「では、食事は終わりだ。ヴェーデはギフトに送って貰ってくれ」


 (送った後、『謁見の間』に来てくれ)

 (かしこまりました)


 ヴェーデはギフトに任せて、俺はこれからの行動を考えておこう。

 俺が求める流れに引き込めれば最高だ。


 □


 「何の御用でしょうか」

 「守護者を創ろうと思うのだがどうだろうか。ギフトも一人では朝の様に睡眠の時間が取れないだろうしな」

 「では、私が起きた時に玉座に居たのは・・・」

 「俺が運んだ。あんな体勢では体を壊すぞ?部屋が無いのが悪いんだが」


 ギフトの顔が赤くなって動かなくなったので、放置して一階層の大広間へと向かう。


 ヴェーデが居る部屋の前を足音を立てて通る。

 彼女は扉を開けて俺の後ろ姿を確認した後、ゆっくりと後を付いてきている様だった。


 わざとだったのだが、付いてきてくれて良かった。


 今回は、力とMPを使ってフラフラの俺を見せるだけだが、人の弱い面をみると優しくしたくなる(さが)を利用させてもらう。

 失敗すれば、俺の力と弱点を知られてしまうが、その為の守護者なのでリスクはそんなに無いだろう。

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