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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
九章 有言実行
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ダンジョンマスターの友

 パナーシアが住む場所は、ダンジョン内でも城でもなく、市街地になった。理由としては、もし住人が怪我をしても直ぐに対処できるからだ。

 『回復魔法』が使える守護者は数が少ない。ギフトの脚を治療したウサギ、スぺクルムはデクレアと協力して市街地の見回りを鎧たちと行っているようだが、ダンジョン内を空にすることも出来ないのであまりうまくはいっていないようだ。メラニーもメイドとして俺の周囲に居るので別の場所に行かせる訳にはいかない。

 そんな理由もあって彼女には市街地に居てもらう事になった。


 メラニーに立ち位置を奪われたガブリエナだが、自身を鍛え直すとか言ってブリッツの元で訓練を積んでいる。いつかは側近の位置に戻って来て欲しいな。見た目が人間ではないので活躍の場は少ないかもしれないけど、彼女がダンジョン内の最高戦力であるのは変わらないので頑張ってほしい。


 人が増えるのなら医療所、病院も作った方がいいよな。怪我をするような事態になれば概念によって死者が出るのは必須。事件の元凶が酒に酔っているとかじゃなければ死人が大量発生するだろう。まぁでもそうならないように鎧が居るわけで。

 怪我はポーションで治してもらうとして、問題は病気だ。技能と施設がいくらあっても治せないモノは治せない。言い方が悪いが、死ぬときは死ぬ。ましてや地球とは違う星。どんな病気があるか分かったものではない。

 『生命の樹』の実の成分を抽出して、それを希釈したものを使えばどうにかなるかもしれない。しかし、人間の寿命が延びてしまう恐れがあるのでこの手は使えない。

 魔法を広範囲に使えるように技能を付ければ少しでも人手は少なくだきるだろう。

 ・・・作るのはレイと相談してからだな。


 さて、午後からは何をしようか。

 昨日創造した守護者、100人は既に店舗の準備を始めている。『金酉宮きんちょうきゅう』は3つに分かれているので、1つにつき33人に分かれて作業が行われているはずだ。この様子だと最低でも300人は必要になりそうだ。

 1つの施設に100人計算か・・・。1人頭150人だとしても名前を付けているダンジョンの負担が多いな。今のうちにゴマを擦っておくべきだろうか。


 「それで私のところに?」


 助言を求めて俺が訪ねたのはギフト。彼女ならダンジョンマスターを任せたこともあるし何か分かるかもしれない。


 「何かないか?俺が動いているのはバレバレなのは分かってるんだが、素直に聞くわけにもいかないしな」

 「そうですね・・・、結構簡単だと思いますけど」


 ギフトが言うには、鎧を作ればいいとのこと。鎧以外で言えば、人形だろうか。

 要は人の姿を取っていて、意思疎通が出来れば何でもいいのだ。


 「守護者ではなく、置物として作ってくださいよ」

 「あー、なんとなくわかった。アレだろ?憑依とかそんな感じの」

 「そうですね。気が向けば向こうから動いてくれるんじゃないですか?」

 「そんなもんか。すまん、助かった」


 ギフトに感謝の言葉を言い自室に戻った。

 人形を作ったとして本当にダンジョンが憑依してくれるのか。そんなことが可能なのか。そのところは分からない。でも、今出来る行動としてはこれぐらいしかないので、すがるしかないのも事実。

 ダンジョンが俺の為に動いてくれているのは分かっている。それに俺も甘えてきたりもした。しかし今回は頼り過ぎたかもしれない。何か日頃のお礼をしないとな。


 ・・・・・・作業を始めたものの、なかなか上手くいかない。

 鎧なら幾らか創り慣れてきたんだがなぁ。人形は全く駄目だ。

 自分でもよく分からない未知の素材ですら創れるというのに球体関節は格好悪い。そこにこだわっているので時間がかかっているのは分かっている。分かってはいるものの、労をねぎらうための人形なので妥協するわけにはいかない。

 骨格、肉、表皮。主な部分はこの3つ。臓器が無いから簡単、というわけではない。その他にも色々問題がある。例えば、肉の量。動かない、動いても少ししたら崩れる。そんなの当たり前だ。この辺も微調整しなくてはいけない。自分の力だけで創るのがこんなに難しいとは思わなかった。

 店で売っているような子供向けの人形でも憑依してくれるとは思うのだが、人形そこに魂が宿ると思うと、どうしても本格的になってしまう。


 今は普通の人形で我慢してもうしかないが、いつかは完成させてやるからな!


 □


 時間は少し戻り、場所はグラキエス教国とノーマリー王国の国境。

 そこを一台の馬車が走っていた。馬車の帆には鹿によく似た動物の姿が描かれており、その馬車がノーマリー王国のものであると周囲に知らせている。


 ノーマリー王国一行の、グラキエス教国で行われた会議の帰り道であった。

 国同士で何らかの話しを行う場合、護衛の数は10人までと決まっている。この数は『10人の天使』から取られたものであり、騎士にとって、10人に選ばれるのは名誉である。

 しかし、いくら護衛が強かろうと、予測できない事態というのは起こるものである。盗賊、山賊の類は魔物のせいで居ないのだが、その魔物に襲われるのだ。10人ではどうしても対処出来ない規模の群れが来れば詰んでしまう。そこで事前に間引きを行う事で対処している。

 今回の間引きは上手くいったようで、周囲に魔物の姿は見られることは無かった。そんな静かな筈の帰り道、馬車の中では怒号が響いていた。


 「アマンダをアイツに預けるだと!?遂に耄碌もうろくしたか!!」


 声の主はスタージュ・プリンケプス・ミニマ・ノーマリー。ノーマリー王国、国王アルトの息子。そして、王子である。

 スタージュが怒っているのは、王位継承が行われる期間中に、アルトの娘であるアマンダをエバノに預けると聞いたからである。この話しはエバノにも通してある。父であるアルトが言うには、彼の長女、アマンダはヤンチャであるとか。


 「お前がさっさと継承を終わらせば直ぐに戻ってくる」

 「そう言う事じゃないだろ!?要は人質を渡すって事だぞ!何を考えてやがる!!」

 「んなことは分かっとる。コレは今後の王国にとって必要な儀式だ」


 アルトだって人質を送るのはあまりよく思っていない。しかしそれは、送るのが自分の娘であるからだ。父ではなく王として動くならば、送っといて損はない。以前人質として囚われていたヴェデッテが無傷で返還されたのを見るに、この星の人間に比べて、それなりにエバノが頭が回るのも直ぐに分かる事であった。

 スタージュも父の言っていることが分からないわけではない。王族なのであるから、責務を果たすのは当然である。そう強く思っている。なのにここまで反発するのはなぜか。勿論、理由がある。

 エバノとスタージュが初めて顔を合わせたのは、不発に終わった戦争での事。アバビム戦で疲れていたが為に、エバノが雑な対応をしたのが彼のかんに障ったのだ。スタージュクの近くに居たクレイドルに、事情をルーチェと共に話しているのだが、彼の頭にはクレイドルの声は聞こえていなかったが為に悪いイメージしか持っていない。

 それが、反発する理由である。

 第一王子として大事に育てられてきた彼にとって、同じ年代に見えるエバノの態度は決して許せるものでは無い。


 「あんな意味の分からないガキにアマンダを預けたら何されるか分かったもんじゃないぞ!!」

 「言葉を慎め。彼はお前より年上だぞ? 見た目に騙されるなど、貴様それでも王族か!!」


 アルトはエバノが見た目以上の年齢であると分かっていた。分かるまでに幾らか時間は掛かったものの、直接顔を合わせていないのならばそのようなものであろう。そもそも、エバノはヴェデッテに自分が不老不死に近いと伝えている。

 それに合わせて、ヴェデッテ、クレイドル、数多くの騎士達。そこからの情報とエバノとのふみの内容を考えれば、答えに辿り着くのは簡単である。実際、アルトはエバノに会ってその若さに驚いた。

 訓練という名目で騎士を送っては少しずつ情報を集め、ダンジョンマスターの能力の危険性と有用性とを理解した。そこで、エバノの話しを聞きつつ、上手く娘を送り込むことが出来た。正妻は既に居るが、第2夫人を狙ってみるのもいいかもしれない。

 言わば、アルトの国王としての最後の仕事。まだどこも手を付けていない今しかチャンスは無い。スタージュなんかの意見を聞くわけにはいかず、最後は怒鳴り散らしてしまった。

 その様子を見て何を言っても無駄だと悟ったのか、スタージュが黙る事で馬車の中は静かになった。内心では酷い罵声の言葉を吐き続けていたのだが、誰もソレを知る余地はない。

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