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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
八章 変法自強
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選ばれし騎士達

「なぁ、アクル。お前さあ、ちゃんと訓練してるのか」

「あー・・・、うん。呼ばれたみたい!じゃね!」


アクルにルーンフェンサーよりも技能の伸びが負けている事を聞こうとしたんだが、あの様子だとやってないな。

そもそも今日は剣を使っての試合だ。アクルが呼ばれる事は無い。

あ、クローフィが急いで捕まえに行った・・・。観客として招かれている貴族連中からは笑い声が聞こえるし、ギャレット殿からは生暖かい視線を感じる。


(・・・頼むから大人しくしててくれ)

(・・・・・・ごめん)


クローフィに服の襟を掴まれて帰ってきたアクルは珍しくションボリしていた。

別に技能が育ってないからといって怒ろうだなんて思っていないのだ。ただ、自衛のために技能を育ててほしい。


「シュヴァルツヴァルト、ブリッツ様!」


「名誉挽回してきます」

「勝手に笑わせておけ。まぁ、無理のない程度にな」

「ありがとうございます」


ブリッツの名前が呼ばれた。ブリッツからすればアクルは姉に当たる存在になるだろうか。随分とダメな姉でも、ブリッツからすれば尊敬すべき人物だ。

そんな人物を笑われた事を気にしているみたいだが、笑いたい奴には笑わせておけばいいんだ。アクルを見る目が明日には変わるだろうしな。


グループ分けも終わり、それぞれの場所で1試合目が始まった。

守護者の中で試合をしているのは・・・、ダメだ、名前が思い出せない。

レイの守護者で、名前は確か、アン?


「ユェーですね」


全然違った。

うーん、顔が似てるんだよなぁ。

ユェーは武器にハルバードを使っている。ハルバードとは、槍の穂先の左右の根本辺りに三日月状の刃と鉤の様な部分が付いている武器だ。詳しくは知らないので見た目だけの説明とさせてもらう。


一試合目が当たっているのは彼女だけかな?

俺とは関わりが少ない守護者だが、応援をしない理由はない。頑張ってくれよ。


「皆様、準備はよろしいでしょうか!!第1グループ、1試合目はノーマリー王国のクレイドル殿とオーラルフット王国のマカド殿です!」


おっ、クレイドル殿の試合か。ユェーも気になるけど、こっちも気になるな。

ノーマリーの中では1番の実力者だ。実況をしている人物も盛り上がっている。


「第2グループ!シュヴァルツヴァルトからはユェー殿!珍しい女性の騎士です!対するお相手はルーマンドのピュイド殿!!」


「第3グループ--・・・」


選手紹介も終わり、試合が始まろうとしていた。

観客が注目しているのは、やはり第1グループのクレイドル殿だ。ココには居ないが、ブリッツも注目しているのだろう。


「では、1試合目始めて下さい!!」


歓声と共に剣を打ち合う音が聞こえ始める。

さて、クレイドル殿とユェーのどっちの試合を見ようか。

クレイドル殿の試合も気になるけど、ユェーがどうハルバードを扱うかも見てみたいんだよな。


悩んだ結果、クレイドル殿の試合を見ることにした。メラニーが言うには、クレイドル殿の相手は弱いらしいので直ぐに終わるだろうと思っての判断だ。


「クレイドル殿はノーマリー王国では有名な騎士の家庭のご出身だとか!これは期待が高まります!!」


そうだったのか。戦争の時に高い地位に居ることは分かっていたものの、そこまでは知らなかった。


クレイドル殿の相手、マカドと言ったか。剣を構えてはいるが、すっかりビビってしまってクレイドル殿の周囲を回っているだけだ。

観客から不満の声が出始めた頃、試合に動きがあった。

マカドが横に1歩踏み出した瞬間を狙ってクレイドル殿が仕掛けた。

慌てて剣を振りかぶるマカドに対してクレイドル殿は落ち着いて対処する。振り下ろされる剣の腹を自身の剣で突いて軌道を逸らし、そのまま相手の首筋へと剣を滑らせる。

そこで試合は終了した。

あまりにも一瞬の事で分からなかった者が殆どだろう。それでも、凄いというのは誰にでも分かるもので、遅れて歓声が湧く。


「素晴らしい剣技でした!!皆様、ご覧になられたでしょうか!私の目では急に剣が逸れた様に見えましたが、クレイドル殿が弾いたのでしょう!」


歳をとっていても衰えることを知らない動体視力に脱帽するしかない。動いている剣を横から突くなんて真似そうそう出来るものじゃない。


さて、ユェーはどうなっているのだろうか。

今は丁度、互いに距離をとったところみたいだな。

彼女のハルバードに対して相手はレイピア。リーチに差があるからなんとも言えないな。

相手はルーマンドから来ている人物だし、尖った耳からエルフだと分かる。彼も熟練度が高いのだろう。


右脚を後ろに引き、半身になる。ハルバードの羽の部分を下にし、鉤部を相手から見て左に向ける構えをとったユェー。

それに対してエルフの彼、ピュイドは逆に左脚を引き、半身となって左手を腰の後ろに隠し、右手で持ったレイピアをユェーへと向けている。


ユェーはピュイドの突きをハルバードを左に振ることで逸らし、鉤部を使って彼の右脚を引っ掛けて転がす事に成功した。

ハルバードを引き戻してそのままの勢いで突きを繰り出そうと姿勢を整えた所で審判から試合終了と言い渡され、立ち上がった彼と向かい合って一礼した。


「やるじゃないか。熟練度は幾つなんだ?」

「ピュイド殿が9の後半、ユェー殿も同じ様な感じでございますね」


互いに高いのな。

それにしてもレイはどれくらい熟練度にブーストをかけたんだ?流石に一ヶ月でマックス近く上げるには厳しい気がする。

いや、でも俺の守護者もそのくらいで1つは熟練度がマックスになってたような・・・。


「それでは、2戦目に移りましょう!」


考えている間に他の試合も終わったみたいだ。

この試合に出るのはウチからは3人。

1グループのルーンフェンサー

3グループのアン

6グループのイン


ルーンフェンサーは名前が長い上に不自然なので、ルーンという名前で登録してある。数いるルーンフェンサーの中から護衛の座を奪い取った猛者なので、このままルーンの名前をあげようかと思っている。名前が安直なのは仕方ない。


アンはモーニングスターを使う。持ち手と球形の打撃部とを鎖で繋いだ打撃武器で、打撃部には無数の突起が付いている。

鎖の部分は20cm程の長さで、打撃部も俺が知っているものより小さい気がする。打撃部を小さくした代わりに、もう1つモーニングスターを持てるようにしたみたいだな。


インは槍を持っている。穂先の横から鉤部が飛び出していて、使用用途はハルバードと似たような感じだと思う。

彼女の身長からすれば短槍サイズで、取り扱いやすそうだ。


レイの守護者の熟練度は高いので負ける心配はしなくて済みそうだ。

問題はルーンだ。『剣術』の熟練度は6.78と決して低くは無い。だが、他の守護者と比べるとどうしても見劣りしてしまう。魔法を使いながら戦うのを目的としているので、今回負けたって仕方ないだろう。


「2試合目、始めて下さい!」


レイの守護者が勝つのは分かっているので今回はルーンの応援だ。

ルーンの相手も彼 (?)と似たような熟練度らしく、接戦を演じている。魔法が使えたら楽勝なのになぁ。無いものを強請っても仕方ないのだが。


結局、ルーンは負けてしまった。まあ、よく頑張ってくれたよ。見ていて楽しかった。

そして以外にも、3グループのアンが負けた。なんでも、アンの相手はレクタングル王国の騎士団長だったとか。熟練度で言えばアンの方が高いのだが、長年の経験でソレを上回ったというわけだ。

6グループのインは普通に勝っていたので、アンは相手がわるかったとも言える。


3試合目で遂にブリッツの出番がやって来た。

相手はラフラインの兵士で、その姿は人型とは根本的に違う。どう戦うのか気になっていたが、試合自体は一瞬で終わってしまった。

相手の攻撃を避け、居合いで鎧の隙間に剣を宛てがう。

武器や体の接触も無く、静かに勝利を収めたブリッツ。実況者も見逃してしまったらしく、試合が終わっているのに気が付いて、慌てて状況確認をしていた。


レイの残りの守護者2名 (残念ながら名前が分からない)も3試合目に試合があったらしい。ブリッツを見ていた俺には彼女の勇姿が分からなかった。

武器は斧とハンマーを使っていたのは知ってる。気が付いたら試合が終わってるんだ、手の内を明かさないという意味では大したものだが、観客は盛り上がらないだろう。

因みに、2人とも勝てたらしい。


4試合目。ここからは既に試合に出ている選手にも試合が回ってくる。

7グループは5人なのでさっきの試合で2回目を戦った人が居るんだろう。


各グループに1人ぐらいは強い人物が居て、何処かでは客を盛り上げるように出来る限り順番をズラしているみたいだ。

今、気になっているのは、クレイドル殿、ジャンナ殿の妹、レクタングル王国の騎士団長、ルーマンドの兵士達かな。

最初の3人は普通に強い。熟練度の面でもそうだが、戦場での経験が数値以上の強さを引き出している。

ルーマンドの兵士達は全員の熟練度が高く、侮れない相手だ。少しの隙でも見せようものなら怒涛の攻撃を受けることになるだろう。


(鎧はどうだ)

(もう少し軽くして欲しいですね。下半身は下脚と靴以外要らないかもしません)

(後で直しておこう)


ブリッツに鎧の感想を聞いた。

やっぱり、西洋鎧で刀は使いにくいのか?関節部分の可動域が狭そうだし地道に改良していくしかないな。

確か、城に入った時にグラキエスの騎士団長とやらは皮の鎧を着ていたな。胸当てと鎖帷子(くさりかたびら)を外して、皮の鎧を着せれば少しは動きやすくなるか。

問題は強度・・・、定番だとドラゴンだとかモンスターの皮を用いた物が最終装備に落ち着くのが多い。

試してみる価値はあるか。

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