ニェーバの街の熊
この話は短いので、二話同時投稿です。
お気お付けください。
「アルトゥーロ様。ギルドマスターがお呼びです」
ギルドホームに着くといきなりギルドマスターに呼ばれた。
ココは冒険ギルド。
街の爺さん婆さん達の話し相手から、血なまぐさい仕事まで幅広く請け負う人間が集まる場所だ。
そんな仕事を斡旋する組織の頭からのお呼び出し。嫌な予感しかしない。
だがまぁ、行かないという選択肢は無いのだが。
「新しく出来たダンジョンの調査を頼みたい」
あ、ダメなヤツだ。
「因みに拒否権は?」
「一応は、な。危ない仕事というのは俺も分かってるから無理にとは言わん」
ダンジョンはココ最近で危険度が増している。
ダンジョンで使用した武器の対抗策が他のダンジョンで確立されていた。と言うのもよく聞くようになった。
冒険者ギルドもダンジョン側が組織的な動きを見せているのを警戒している。
「行ってもらうのはつい先程出来たダンジョンとのことだ。ギルドの調査員も同行する」
以上の理由から危険度が増しているダンジョンだが、出来たばかりのダンジョンと言うのは総じて弱いものである。
今回の調査は出来たばかりのダンジョンという事だから、強すぎると言う事はあるまい。
「俺が選ばれた理由を聞かせてもらおうか」
「お前のクランは、この街のクランの中でも一番の実力を持ってるからな。選ばれて当然、って感じだな」
「次に報酬」
「言い値で払ってやるぞ。今回は王国から報奨金をガッポリとブンどってやったし余裕だぞ」
なるほど。命を掛ける価値はあるというわけか。
俺のクラン。俺が創ったクランはこの街では実力派として名を馳せている。妥当な判断をしているので文句がつけにくい。報酬も申し分ないしな。
「報酬額はクラン三年分の経営費用だ」
「こちらは構わんぞ。調査員は一人。ダンジョンまでの距離は馬で一日掛からないそうだ。馬はコチラで用意しようか?」
「そうしてくれ。それなら俺が死んでもウチのクランは損しないしな」
報酬で賄えると思えるが、慣れ親しんだものの方がいいに決まっている。
ギルドが用意してくれる馬だ。上物なのは分かってるから働きに期待だ。
「今から発てるか?」
「クランメンバーに挨拶だけさせてくれ。時間はあるんだろ?」
「まぁ、早めにな。門の辺りで待たせておくから」
「はいよ」
ダンジョン用の装備を整えないとな。
そう考えつつ、冒険者ギルドを後にした。
□
クランハウスに戻ってきた。
今朝は俺が依頼を取ってくる予定だったのでクランメンバーが集まってくる。
「あら、遅かったのね」
「今日は何やるんだ?」
「それなんだが少し事情が変わった」
俺の雰囲気の違いにメンバー達は気を引き締める。
コイツらと組んで長くなる。本当に頼りになる奴らだ。
「ギルドマスターからの依頼だ」
「ギルドから?何かあったか?そう言う話は聞かないが」
「ダンジョンに行ってくる」
『ッ!』
メンバーが止めてくれるが、もう決めた事だと言うと何も言わなくなった。
「今から出発だ」
「お前は決めたら変えないが、今回ばかりは話が違う」
「そうですわ。ダンジョンの調査が目的とは言え、何が起こるかは分からないのがダンジョンというものです」
「ダンジョンまでは何が何でもついて行くから覚悟しろよ」
今度はコチラが押し黙る番だった。
決めたら変えないって、俺だけじゃなくてお前らもだろ。
結局、ダンジョン前までと言う約束で同行を許した。
□
ダンジョンまでの道中で簡単な挨拶はすました。
ギルドの調査員の名前はヴェデッテ。女性だ。
簡単な戦闘の心得も持ち合わせているとのこと。
ダンジョン前までやってきたはいいが既に夜だ。ダンジョン内部は光源がある場合が多いが松明は必要だろう。
クランメンバーはココで待機。俺が戻らなければ街に引き返す様に頼んである。
ダンジョンの入口はダンジョン内部に影響される。
このダンジョンの入口は、地下へと伸びる石造りの階段だった。という事はこのダンジョンは迷宮に近い造りになっている可能性が高い。
「それじゃあ行ってくる」
「帰ってこいよ」
「当たり前だろ。何言ってんだ」
仲間と挨拶を交わし、階段を降りていく。