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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
五章 力戦奮闘
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再開太陽の神々の持ち物



 『四階層』に降りて内心で座天使を嘲笑ってた後に、ターバンを巻いた冒険者風の男性と話す機会があった。

 一心不乱に剣を振っていたので目に付いたのだ。


 「よお。騎士の中に一人だけ異質に見えたが何か理由があるのか?」


 声を掛けると彼は剣を振るうのを止め、俺に振り返った。


 「もうじき俺の国で戦争が起こる。だが、教皇はここに居る。だから俺も居る」

 「教皇に戻ってきて指揮をとって欲しいのか」

 「そうだ。そのためには強敵とやらを倒さなくてはいけない」


 この男、話しが早くて助かるな。

 それにどこか懐かしく感じる。何処かで会った訳もないので俺の気のせいだろうか。


 「お前、名前は?」

 「鳴滝(なるたき) 弘貴(ひろたか)。しがない冒険者だ」


 そう言ってターバンを外した男性は黒髪だった。男の瞳は茶色だが、俺だって茶色だ。

 もしかて日本人か?


 「今度はそっちの番だぜ」

 「畔木(くろき) (かもめ)だ。事態は最悪だが歓迎するよ、日本人(きょうだい)


名前 : 鳴滝 弘貴 (リアス)

種族 : 人間

HP125

MP105


・証

レクタングル王国 ユニックの街 冒険者


・技能

弓術[熟練度4.97]

剣術[熟練度6.40]

棍術[熟練度3.33]

槍術[熟練度6.01]

盾術[熟練度4.19]

武器能力付与[熟練度10.00]☆


 武器を手広く使うようだな。どれも一人前の熟練度だ。


・武器能力付与

武器に自身が体験した事のある武器の能力を付与する。

能力が付与された状態の武器は『武器能力付与』の技能を持っていないと能力を発揮できない。1本だけ武器の能力を自身に付与する。


 この技能は強いな。概念を武器に上乗せ出来るのだから、技能の中でも上位の部類にあたるのではないだろうか。


 「凄いな、どの技能も熟練度が高いぞ」

 「鑑定が使えるのか!?教えてくれないか!!今まで鑑定持ちに会った事がないんだ!」

 「お、おう」


 鑑定結果が書かれた紙を創り出し彼に渡す。

 ワクワクしていた彼の表情は、紙を見ると更に輝いた。


 「これってユニークスキルだよな!?よっしゃあ!!」


 俺が守護者に『武器能力付与』を付けようとしたが、下位の能力と思われる『付与魔法』ぐらいしか出てこなかった。

 ユニークスキルで間違いないだろう。スキルと言うより技能なのだがな。


 「間違いなくユニークだと思うぞ」

 「そうか、ほんとありがとな!いやー、やっぱり、成長を感じ取れてこその異世界だと思うんだよな」


 一理あるな。ゲームなんかでもパラメータが上がるのを見守っていくのは楽しいし、その気持ちは分かる。


 しかしヴェーデの時もそうだったが、人は魔法を除けば『○○術』という技能を多く持っている気がする。

 守護者だとそうでもないが、もしかして技能取得に制限が掛かっているのか?

 まぁ、考えてもしかたないか。


 「そういえば、1本だけ武器の能力を自身に付与できると思うんだが、それはどうなってるんだ?」

 「ん?あー、それは多分コレだと思うぜ」


 ナルセが右手首を一周回すと、1本の剣が出現した。

 うーん。自身に付与というか、体内に収納というか。でもこの剣ってアレだよな。


 「これ、リピードリーじゃないか?」


 リピードリーは、俺がやっていたゲームのものだ。

 両手で持っても余裕がありそうな柄に、160cm程の片刃の刀身で、刃の部分は湾曲を抑えたフランベルジュの様になっている。


 「良く分かったな。もしかしてやってたのか?」

 「エバノって名前でやってたな。本垢のワールドは14だ」

 「エバノか・・・どっかで聞いたことある名前だな」


 ワールドはゲームで言うサーバーのことだ。

 つまり、俺は14(さば)の住人になる。


 「お前のキャラ名は何て言うんだ?」

 「俺か?俺はリアスって名前だった。ワールドは同じだな」

 「俺、お前と同じクランに居たかも。『アトリビュート』って言うんだが」

 「何処かで聞いたと思ってたらお前だったのか。毎年実家のホタル見に行ってた」

 「そうそう」


 まさかの知り合いだった。

 ボッチでプレイしていた俺をリアスが誘ってくれて、そこからクランにも入った。

 もうやれないのが惜しいなぁ。

 ナルタキから、今後はリアスと呼ぶように言われたのでそうさせてもらう。俺もエバノと呼ぶように言っておいた。


 リアスとゲーム談義で話しが盛り上がり、「もう出来ないけどな」の一声で互いに落ち込んだ。

 その後は、俺が考えた守護者の案を聞いてもらい、欠点や美点を教えてくれた。俺よりも長くこの星に居るせいか、俺のゲームでのなんちゃって戦術とは違い、実用的なものが多かった。


 □


 砦への視察も行った。

 構造はそのままだが、外見は一新してある。それに合わせて城壁も作ってあるので、以前のようなボロい外見とは大違いだ。


 「アバビムの拠点はココから見えるあの山脈です。詳しい場所は分からりませんが、小さな滝の裏に洞窟があり、そこにダンジョンを創っているようです」

 「果てしない渓谷ですか・・・、また面倒な場所ですね」

 「そんな名前なのですか」


 果てしない渓谷。ノーマリー王国、グラキエス教国との間に存在し、それは帝国まで続いているらしい。

 南にノーマリー、北にグラキエス、西に帝国がある。

 『果てしない渓谷』のお陰でノーマリー王国は帝国への防御箇所が少なくなり身を守れ、グラキエス教国は帝国との直接的な接触を避けれている。それだけでなく、隣接する国々は自然の恩恵を受ける。


 全長もさることながら、果てのない自然の恩恵が『果てしない渓谷』の語源となったようだ。


 「この中を探すのは骨が折れるのでは?」

 「それは鳥を使おうかと思っている。大体の場所は把握してるから後は数で調べられる」


 フェーデの質問に答え、周囲の人間の顔を見ていく。質問があればこの場で答えようと思ったからだ。


 「砦に兵を置かないのか?」


 これはリアスからの質問だ。

 確かに守護者を何体か置いておいた方がいいかも知れないな。概念と崩れない壁で守られているが、実際に攻められると安全とは言い難い。


 「そうだな、何体かは置いておこう」

 「それと、堀と柵を作らないか?」

 「ちょっと待ってくれ。堀を作るのはいいが場所を整えないといけない。柵は直ぐにでも創れるぞ」


 現在、森の切れ目に壁を張ってあるだけで、遠回りすれば森の中には入れる。もし堀を作るとすれば森全体を囲わなくてはいけなくなるだろう。


 「森全てを覆う事は出来るが、生物が居るから難しいな」

 「それもそうだな・・・(やしな)えはするんだろ?」

 「環境は自由に変えられるから飢えることはないだろうが、増えすぎると困る。人を襲う魔物も居るんだ」


 こんな、俺とリアスのやり取りを横で聞いていたルーチェがとんでもない事を言い始めた。


 「全て殺してしまえばいいんじゃないですか?」

 「それは、倫理的にどうかと思うんですけど・・・」


 生物が邪魔なら殺してしまえばいいじゃない。

 ・・・発想が恐ろしい。コイツ、ホントに教皇であってるのか?俺が夢を見すぎているのだろうか?

 隣を確認するとリアスが口を開けて驚いていたので、俺の感性は普通らしい。


 「教皇様は頭のネジが飛んでるらしい」

 「言ってることは合理的なんだが・・・」


 日本人2人でコソコソと話し合っていると、今度はフェーデが口を開いた。


 「森全てを覆わなくてもいいのでは?森の中に防壁を建てると視界が悪くなりますが、エバノ様は領域に侵入者が来れば分かるのでしたよね」

 「それはいい考えかもしれない」


 流石だ。どこかのアホ天使とは大違いだな。

 ルーチェが何か言わないうちに壁を創ってしまおう。

 防壁で囲うのは北の森だけだが、南の森は殆ど手付かずなので構わないだろう。


 砦が円の上側にかかるようにして丸い防壁を創った。

 南の『大聖堂』方面にも砦を建てて、森の道から入れるようにする。ちなみに、二つの砦の構造は全く同じだ。

 防壁の中にいる生物は壁の外に押し出す事で無益な殺傷は避ける。

 森を出て人間を襲われても困るので、砦外の森を豊かにした。具体的には、木の実等を増やして生態系のピラミッドを維持出来るようにした。上手くいくかは分からないが、何もしないよりはマシだろう。


 さて、砦防衛の守護者だがどうしたものか。

 現在のMPは7075。ダンジョン創造初期以来のマナフライ総動員だ。

 夜の川であの光景を見たかった。今度、レイとリアスを誘って見に行こうか。ギフトにも見せてやりたいな。

 俺が一番好きな景色を。

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