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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
五章 力戦奮闘
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教皇は打たれ弱い

 盾もヴェルジェンド鉱で作った。

 半球状の形をしており、適当に溝を彫ってヴェルジェンド鉱単体の単調さを隠している。


 やはり何か装飾をつけた方が良いだろうか。銀緑色だけでは少し目に悪い。

 胸当て、手甲、脚甲(きゃっこう)の裏地に白色のカーボンを新しく付け加え、防具の(ふち)まで覆わせる。

 なんか物足りないので葡萄(ぶどう)の蔦をイメージした装飾を加えた。


 「これが量産されれば国中の鎧が廃棄されるわね・・・」

 「防具の値段が暴落するのは確かですね」


 ルーチェとフェーデが話しているが俺にコレを量産するつもりは無い。

 ワカメを被った男に10年間戦争を続けられると言われても、頬に傷のある男から連邦軍を壊滅に追いやれると言われても量産はしない。

 理由は、星のバランスが崩れるからだ。


 ヴェルジェンド鉱石は高価だと聞いた。それだけでなく、カーボンも使われている。

 カーボンなんざこの星には無いだろう。それでは神のバランスが崩れてしまう。

 神のために戦っているのにバランスを崩してしまっては本末転倒だ。


 「今回は特別ですが、その鎧は今後使わないでくださいね。もし使えば地の果てまでも追いかけて破壊しますから」

 「勿体無いですが仕方ないですね」


 分かってくれてなによりだ。もしごねるようだったら一悶着あったかもしれない。



 「では、私の技能は説明したと思いますので2人の技能と戦い方を教えていただけますか?」

 「マスター、先に昼食に致しませんか?」

 「ん?そんな時間か、分かった。では、食堂に参りましょうか。鎧は置いておいていいですよ」


 マーゲンの案内で食堂へと向かう。

 ・・・「マスター」と聞くとギフトを思い浮かべてしまうのは悪い癖だな。


 □


 昼休みを挟んで『四階層』、リェースの階層にやって来た。


 魔法を試すかもしれないので障害物が比較的少ないココを選んだわけだ。


名前 : フェーデ・クレデンテ

種族 : 権天使

HP150

MP200


・技能

神聖魔法[熟練度8.12]

神懸かり

看破

MP増加


 フェーデは『光魔法』が『神聖魔法』に変わっており、熟練度も以前より上がっている。


 「私の権天使は人間の指導者の監視をする役職です」

 「ルーチェ様は人間ではないが」

 「教皇という立場上、各国の指導者と会う機会も多くありますから私の役割は果たされています」

 「そんなものか」


 色々と理由を付けているが、彼は彼女の事が好きなんだろう。

 まぁ、頑張ってくれ。歳が少し離れているがいいんじゃないか?


 「・・・エバノ様、何か失礼な事を思っていませんか?」

 「気のせいですよ」


 勘のいい天使は嫌いだよ。


 「ルーチェとは座天使とのことですが」

 「神の戦車を運ぶ者、生命の樹の番人。他の天使の監督者、意思の支配者。このような感じでしょうか」


 またズラズラと出てきたな。最後のヤツ以外は予想がつくが。確か、技能にも同じ名前のものがあった。


 「『催眠術』、『精神支配』、『誘導』が『意思の支配者』に。『火魔法』、『光魔法』が『聖火魔法』になりましたね。これも神のお陰です」

 「なるほど。確かに『意思の支配者』と呼ぶに相応しい技能かと」

 「既に見ているのかと思いましたが?」

 「ハハハッ、ルーチェ様には勝てる気がしませんよ」


 もしかしたらこの俺の返答も技能によって誘導されていたのかもしれないな。


 「では聞きますが、『身代わり』の効果を教えていただきたい。貴方に防具は必要ないように思います」

 「口で説明するより実演した方が早いですね。フェーデの腹部を思いっきり殴ってみてください」


 ルーチェの思惑は分からないが、フェーデに確認をとると頷いたので遠慮なく殴らせてもらう。

 「ふっ!」軽く息を吐き、下からすくい上げるように鳩尾(みぞおち)を狙う。

 あと少しで当たる、という所で俺の拳と平行に波紋が空間に広がり、威力の無くなった拳がフェーデを叩いた。


 「?・・・手応えは確に感じたのですが・・・・・・」


 フェーデに何も起こらなかった事に内心ガッカリしつつ、ルーチェを振り返ると、そこには腹部を両手で押さえて(うずくま)る彼女の姿が。


 「あのー、大丈夫ですか?」

 「・・・ナイスパンチ、でした。思ったより、重くて、・・・ウッ」

 「吐かないでくださいね」


 神が言っていたが、天使の階級はルーチェが俺の一つ上だ。種族の差もほとんど無く、身体能力も同じ程度だろう。普通の人間の身体能力では痛くなくても俺だと攻撃が通ったようだ。


 「ハッハッハッ、素晴らしい能力ですね!」


 『身代わり』の効果がまだ続いていると信じてフェーデの肩を叩きながらルーチェを見ると、肩の衝撃で吐き気がプッシュされたのか、右手を口元に当てて、左手をこちらにプルプルと伸ばしている。


 ・・・何このオモチャ、楽しィ。


 ほらフェーデ、今がチャンスだぞ。背中ぐらい擦ってやれ。

 彼は俺にいい笑顔を向けるとルーチェに向かって走って行った。


 □


 ヒロタカ・ナルタキside


 気が付いたら知らない場所にいた。何を言ってるか分からないと思うが、俺もわからねぇ。

 トラックに轢かれたわけでも、電車に轢かれたわけでも、雷に撃たれたわけでもなく、突然街の中に俺が出現した。


 ジーンズにトレーナーという私服姿で飛ばされた俺の手の中には、俺が良くやっていたゲームの武器が握られていた。

 どうやら言葉は通じる様なので、冒険者になる事にした。チートっぽい能力に冒険者ギルド、まさにテンプレですなぁ。


 冒険者ギルドの登録はすぐに済んだ。一文無しで登録出来ないとかは無くて一安心だ。

 初心者のうちはお試し期間みたいなもので、クエストをこなしていくうちに本登録となるみたいだな。


 テンプレ、テンプレだと思っていたが鑑定チートはないっぽい。鑑定が一番大切なスキルだと思うんだが。

 それでも俺が最初に持ってたゲームの武器がチートだったから問題はない。


 武器の種類は剣で、その剣の能力は、体力の回復と、あるモーションを取ると攻撃が多段化することだ。ゲームだと幾つか武器を持てて、それらを駆使して敵を倒せた。

 でも俺が使えるのはこの1本だけ。必殺技は使えるので今の所は問題なく倒せているが、強力な敵が現れたら倒せるかは分からない。


 少しずつ、武器の性能を隠しながらクエストをこなしていくうちにギルドに本登録された。受付嬢ともそれなりに仲良くなったし、先輩との中も良好だ。


 小さい街だったけど、俺は楽しく過ごせていた。

 花屋の娘は可愛いし、宿屋の娘は綺麗だし、受付嬢は世話焼きだし・・・。

 剣の大会ではアッサリと負けて、自分の剣の腕が武器だよりだったのを知り、鍛錬を積んだ。その結果、自分が鍛錬で使いまくった武器は、武器の種類別でゲームの能力がランダムに付くことも分かり、更に修行をした。

 なんやかんやで、一番充実した時間だった。


 ある日、仲間達と森に出かけた時の事だ。

 斥候が帝国の兵士の姿を見つけた。帝国は俺が居る国の下にある国で、俺が知ってる国の中では最強だ。

 グラキエス教国とその他周辺国家は同盟を組んでいるが、全ての国が戦力を尽くしても勝てるかは分からない。なんでも、特殊なスキルを持った兵がわんさか居るらしい。


 姿を目視しただけだが撤退する事にした。この森は国境なので、帝国兵が居るとすれば戦争が起こる可能性が高い。早く帰って報告しなくては惨事が起こる。

 ハンドサインで街への撤退を指示し、隠密行動を心掛けながら行動に移る。


 森での戦闘を予想していたため、俺の武器は比較的軽いものばかりだ。ヘイトを集められる様な武器があれば敵を釣れるのに。そう思いながら道無き道を街へと走る。


 ギルドに帰り、帝国兵の事を報告した。

 警備の強化や、市民が少しづつ王都に避難するなど、比較的速やかに行動は行われた。


 市民が王都に避難するなか、俺は冒険者ギルドの(おさ)に呼ばれていた。


 「密偵からの報告によると、帝都の物価が上がっているそうだ。物資を集めているのは確かだな。そこでだ、教国への連絡を君に頼みたい。王都からも兵が到着しているし、王からも教国へ使者を出すように頼まれている。もちろんディーレを飛ばしているが言葉の方が確実なのでな」

 「分かりました」


 ディーレは伝書鳩の役割を果たす鳥のことだ。

 この国は横に長い長方形の様な形をしている。この街は東に、王都は西にあり、教国へはここからの方が近い。

 ギルド長に挨拶をし、教国へと向かった。


 教国に到着したはいいが、教皇は国外に居ると言われた。代理人に報告をすませ、教皇を追う。

 教皇の強さは噂で流れるほどだ。そのせいで婚期が遅れていることも。


 武器の移動系能力を廻しながら寝ずに走り、教皇に追いついた。

 今すぐ教国に帰ってほしいと伝えると、少し迷った後に否定された。理由を問うと、帝国よりも恐ろしい相手が現れたらしく、それの対処の方が最優先だと言われてしまった。


 この時点で俺が街を出てから4日経っている。戦争が本当に始まるか分からないし、猶予は未だあるとは言え、まごまごしている訳にもいかない。

 それからは教皇についていき、恐ろしい相手とやらを倒す手伝いをすれば教国に早く帰れるだろうと思い、行動を共にするようになった。


 着いた先は新しく出来た国の様だ。シュヴァルツヴァルトなんて聞いたことがない。

 国と言っても、荘厳な聖堂が一つだけだった。俺が怪しみ始めたそのとき、聖堂から黒髪の男性が出てきた。

 黒髪はこの大陸には居ない。それは、この星で数年過ごして調べた情報だ。と言うことは、コイツも日本人である可能生が高い。

 ダンジョンと言っていたことから、ダンジョンマスター系のスキルを持っている筈だ。

 教皇とチート持ちだと思われる黒髪が強敵と呼ぶ相手とは一体どんな奴なのだろうか。

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