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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
五章 力戦奮闘
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3人の天使と銀緑色の鉱石

 時刻は午前10時。

 領域に誰かが入ってきた。もしやと思い確認してみると、天蓋付きの馬車に騎士が数名。騎士の中には権天使のフェーデの姿も見える。あと一人、旅慣れしていそうな男性が居た。

 男性は布で頭部を隠し、大きな荷物を持っていたので冒険者なのだろう。


 馬車が『大聖堂』に到着した。それに合わせて俺も地上へと移動する。

 騎士の内1人が箱馬車の扉を開けると、白のドレスを来た女性が現れた。

 この人が座天使だろうか。神から話しは聞いている筈。戦闘にドレスは難しいと思うが・・・、いや、非接触系の権能なら一応は納得出来る。


 「エバノ様、ご無沙汰しております。こちら、ルーチェ・クルイロー様であります」

 「今日はよく来てくださいました。私はエバノ・シュヴァルツヴァルトと申します」

 「御丁寧にありがとうございます。紹介にあずかりましたルーチェ・クルイローです」


 フェーデの取り持ちで座天使と思われる女性との接触が行われた。

 彼女は20代後半位の年齢だろうか、この若さでよく教国を纏められるものだな。


 自己紹介もそこそこに、大聖堂にあるエレベーターへと向かう。騎士達からは感嘆の声が聞こえるが、冒険者風の男性は俺を凝視している。

 後ろを向いて確認したわけではないので相手に気取られる恐れはないが、俺になにか用が有るのだろうか。


 数名の護衛を残して『三階層』の会議室へと入る。そこでは、マーゲンが紅茶を入れており、タイミング、味ともにバッチリだ。ちなみに俺はコーヒーである。


 「では、話しを始めましょうか。えー、教皇様をどう呼んだものか」

 「ルーチェで構いません」

 「それではルーチェ様、建国に賛同頂きありがとうございました」

 「前置きは無くて大丈夫です」


 ・・・気が強いのか、ソリが合わないのか分からないがあんまり仲良くは出来そうにないかな。


 「貴方は智天使で合っていますか」

 「ええ」

 「話しは?」

 「聞いています」


 本人は座天使だと言っているが、念のため鑑定。


名前 : ルーチェ・クルイロー

種族 : 智天使

HP220

MP220


・証

グラキエス教国教皇

エデンの番人


・技能

意思の支配者[熟練度10.00]☆

聖火魔法[熟練度10.00]☆

神憑り

効率増加

知恵の樹

物理耐性増加

魔法耐性増加

身代わり


 技能が物騒だな。それに、○○増加ばかりだ。熟練度がマックスなのは年の・・・いや、何でもない。

 まぁ、智天使で違いない。


 「今の所、私の方から彼に対する具体的な対処法はありません」

 「私も同じです。そもそも情報が少ないのですからどうしようもありませんよ」


 俺もアバビムと直接戦闘を行った訳では無いので説明に困るが、フェイク達の事を端折りながら説明した。


 「彼はココより北の方角の山中を根城にしていると考えています。ただ、私と同じ様にダンジョンを創っているようなのです」

 「それはまた厄介ですね。ところで、ダンジョンマスターの技能とはどのような物があるのでしょうか」


 ・・・そこからか。いや、鑑定が無いのだから仕方ないのか。


 ダンジョンマスターの基本的な技能は、『支配域鑑定』、『支配域創造』、『守護者創造』の3つ。どれもが読んだままの効果を発揮する。


 「彼も似たような技能を使うと考えてもいいのですか?」

 「おそらくは」


 フェイクが言っていた、『神の領域』。アバビムの技能で創り出されたそれは、ダンジョンマスターか、それと似たような能力でなければ創り出せないだろう。それに、フェイクのステータス表示も守護者のものだった。

 それが疑惑を確信に変える。


 「『支配域創造』を警戒しなければいけないのですよね・・・」

 「はい、私達が中に居るのに構造を変えられてはひとたまりもありませんから」

 「エバノ様の技能で拮抗は出来ないのでしょうか。系統的には同じの筈ですが」

 「技能が同格であれば可能です」


 レイのように、技能が同格であれば一部を封じる事が出来るのかも知れないが、相手は神の手を離れたアバビムだ。

 神から技能の統合が行われたが、同格か、と聞かれると素直に頷けない。


 「その言い方だと神から力を貰ってないように聞こえます。神から力を受け取ったはずでは?」

 「確かに受け取りましたよ。ですが同格かどうかは分からないのです」

 「・・・エバノ様は少し勘違いをなさっているのでは?」

 「勘違い?」


 ルーチェが言うには、神から技能の統合が行われたが、アレは技能のステージを上げるためのものだったらしい。


 ステージと言うのは二つに分かれていて、神級と人級(じんきゅう)とがあるようだ。

 神が最初に創った楽園(エデン)のステージは神級だったが、アバビム、スワイヴの事件によりステージを人級へと落とされた。それにより神級の技能のキャパシティが足らなくなり幾つかに細分化した。

 ソレを再び統合する事で俺の技能は神級へと変化し、アバビムに対抗出来るようになったという。


 「神の手を離れたのに二つのステージに縛られているのでしょうか」

 「2つの果実を食べても神に等しくなるだけですから、知識は神と同等です。ならば神級の技能を使うと考えたのですが」

 「なるほど・・・。それならば納得出来ます。では、私の統合された技能は彼にも有効・・・・・・」


 それならば勝機はある。

 レイが体感した、ダンジョンの操作が出来ないというのが技能同士の拮抗によるものだとすれば活路は見い出せる。


 「私とフェーデも参加します。その為の技能も頂きましたので足は引っ張らないかと」

 「本当ですか?参戦してくださるでしたらまさに百人力ですね」


 ルーチェの智天使。俺の主天使。フェーデの権天使。

 三人寄れば文殊の知恵と言うように、3人の天使の力を合わせればアバビムを倒せるかもしれない。

 ルーチェとフェーデの戦い方、技能を参考に、それに適した守護者を俺が創ればスキは限りなく小さくなるだろう。


 「・・・そこで一つお願いしたいのですが」

 「どうかしましたか?」


 今度はルーチェが申し訳なさそうに声を掛けてきた。

 何か問題でもあったのか?


 「この場に来る途中で神から連絡を受けたものですから、教国に防具を置いたままなのです。ですので何か見繕って頂きたいのですが・・・」


 尻すぼみになっていく彼女の声。

 確かに、教皇ともあろうお方が他国の王に防具を見繕ってほしいとお願いするのはあまりないかもしれない。


 「フェーデ殿は持っていらっしゃるか」

 「護衛という立場なので持ち合わせております」

 「そうか、ではルーチェ様、普段つかわれている防具はどのような形状と材質を使われているのでしょうか・・・」


 ルーチェの話しを聞きながら防具の作製に取り掛かる。

 鎧の一部がどうやらこの星にしかない金属の様で、俺は知らない名前だった。

 金属の名前はヴェルジェンドと言って、鋼よりも強く、加工しやすい性質を持っているらしい。色は銀緑色(ぎんりょくしょく)をしている。


 ぶっちゃけた話し、未知の金属だろうと、伝説の金属であろうと性質が分かってしまえば何でも創れる。 どのようなものが良いのか分からないのでそう上手くはいかないが、『鍛冶術』がマックスのシュタールが居るので意見を聞けばいいだろう。


 厚めの白い服の上に、ヴェルジェンドで作ったチェインメイルを着る。

 チェインメイルは、ドーナツを連結させるようにして作るのだが、編み方が分からなかったのでフェーデに規則性を教えてもらった。

 継ぎ目も消してあるので強度は問題ないと思う。

 更にその上に服を着たあと、∞(むげん)を平たく潰した様な形の胸当てを着ける。


 チェインメイルの上に胸当てを付けるという俺からしたら重装備だが、ココでは普通にある事らしい。


 手甲は、袖口、手首、手の甲の3つの部品を手袋に(びょう)で留めて作った。

 関節部が問題なく動く様にするのに苦労したのと、剣を握るのに手袋が阻害しないように掌の部分を大幅に取り除き、掌の真ん中に引っ掛けを取り付けた。


 靴は、周囲に逆(ぶい)字のヴェルジェンド鉱を重ね合わせながら手甲と同じ要領で付けていく。足先は尖らせておくのが流行っていると教えてもらったので無理のない程度に尖らせておく。


 「フェーデ・・・私が使っていた鎧、・・・アレは何だったのでしょうか」

 「ゴミの事は忘れた方がよろしいかと」


 ヴェルジェンド鉱は値段が高くて所々ケチルそうなのだが俺には知ったこっちゃない。


 出来上がった靴をブーツの様にトップライン(靴の履き口のこと)を伸ばして、足首、脛当(すねあ)てとを手甲の様に(びょう)で留める。


 「あとは何が?武器は・・・使わなそうですね」


 鑑定で魔法を使うのは分かっているが、あえて素知らぬ顔で聞く。


 「そうですね盾を頂けますか?ラウンドシールドを一つ」

 「盾?まぁ、構いませんが」


 盾なんて持ってどうするつもりだ。それらしい技能は『身代わり』があったと思うが『盾術』は無かった。それはつまり使い慣れていないということだ。ついでだから頼んでしまえみたいな感じだろうか。

 教皇様も意外とがめついのかな?

verdeヴェルデ(緑の)+ argentoアルジェント(銀)→ ヴェルジェント

架空金属なので深く突っ込んではいけない。ミスリルを参考にしています。

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