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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
四章 魑魅魍魎
41/145

失楽園

 場所は変わり、俺のダンジョン『謁見の間』。

 デクレアが宙を舞い、少女、フェイクの瞳が濁る。ルードとラミとか言う奴等も同じ様な状態だ。

 彼女の話しには気になる点があった。神の存在だ。


名前 : フェイク

ジャンル[陸]

HP70

MP65


・技能

 偽りの楽園

 調和

 身体能力強化[熟練度10.00]☆

 火魔法[熟練度2.16]


 分かるだろうか。

 このステータスの表示の仕方は人間のものじゃない。

 種族 ではなく ジャンル と表示されているのが証拠だ。

 それに見たことの無い技能もある。『偽りの楽園』と『調和』だ。


・調和

見た事のある生物の一部を自らに取り入れる。

効果には時間制限がある。


 『偽りの楽園』は鑑定が通らなかった。熟練度マックスなのに通らないのは何故なのだろう。

 少女は『偽りの楽園』を神の劣化技能だと言っていた。貸し出されたわけでも無く、神の技能を自身で習得するのは不可能だと思うのだが・・・。

 俺の知ってる神と少女が知っている神とは違うのか?俺の技能が神の能力ならば、神が知らないものは表示出来ないだろう。


 「お前の神の名を言え」

 「『それ以上はいけない』」

 「・・・誰だ」


 俺は神の名を知らないが、フェイクの神には名前があるかもしれない。そう思い問いかけると、一変してその場の空気が変わった。

 少女の口から男の声が漏れたのだ。それには何処か寒気すら感じさせる何かがあった。


 だが、ココは俺の領域だ。四方から床が引っ張られるように動き、先端が少女の首筋へと宛てがわれる。

 デクレアが少女の頭部に止まり、ミストーカー=デスが少女の顔を覆う。フロントガードが『闇魔法』で視界を奪い、チルアーマーが少女の身体を凍らせる。


 ギフトやマインと言った、名持ちの守護者にはダンジョンの警戒を任せている。何かあっても対処出来る筈だ。

 ガブリエラは俺の傍で待機している。火の玉、岩の礫、氷の破片が群れをなして浮かんでおり、拳と脚には雷を纏っている。俺の周囲には旋風が舞い、何者も寄せ付けないという意思を感じる。


 そんな万全の状態にも関わらず、声の主の調子は変わらない。


 「『まさか、こうして会えるとは』」

 「誰だと聞いている」

 「『待て待て、俺に争う気は無いよ』」


 主は俺の問に答える気は無いようで、一人、語り出した。


 「『今回は済まなかった。まさか、送り出したフェイクが喧嘩を売ってるとは思わなかった』」

 「何が目的だ」

 「『目的?そんなものは無い。強いて言うなら、ある女性を探している』」


 女性?何のことだ。


 「『あー、すまない。話しがズレてしまったな。では、最後に私から一言。神よ、元気にしていますか?』」

 「待て!お前の名前は・・・」

 「『アバビム。ソレが私の名だよ。さようなら、主天使』」


 その言葉共に視界の外にいたルードとラミが俺に向かって走りよってきた。


 何故だ!デクレアの『催眠術』の効果中のはずだぞ!?


 「クッ・・・!!・・・・・・ぇ?」


 向かってくる2人に対して咄嗟に出来たことは『束縛の魔眼』による拘束。

 2人の身体から白い鎖が出てきて拘束するかに思えたソレは、淡く崩れ、光の粒子となって消えた。


 ガブリエラの魔法が2人に迫るが、ルードを守るようにラミが前に出た。

 彼女が何事か呟くと、ガブリエラが放った魔法群そのものが彼女の周囲に展開され、魔法を相殺し始めた。


 ルードは魔法戦が行われている場所を迂回して俺へと向かってくる。フロントガードの巧みな『光魔法』、『闇魔法』のコンボにも臆せず、ただひたすらに走る。


 魔法を床に放つことによりラミに競り勝ったガブリエラがルードを阻止しようと蹴りを放つが、身体を逸らして回避。

 土の魔法を待機させて追撃を狙うガブリエラだが、 ゴキュ! という音が響き、ルードの関節が有り得ない方向に曲がった。ブリッジをした状態で走ることにより魔法は不発に。


 動く度に鳴り響く、関節が悲鳴をあげる音。それが近づけばルードも近くに来る。ラミが放ったのだろう魔法が風の防壁を破り、ルードに道を造る。

 飛び上がって俺へと覆いかぶさるような姿勢で降下してくる彼の無機質な瞳には涙が浮かんでいた。


 視界には赤い閃光と、何度も見た瞳。


 □


 気が付けば自室のベットの上に居た。

 ・・・何が起こった。夢オチは有り得ないし、俺の耳が爆発の衝撃を物語っている。


 「大丈夫ですか、マスター」

 「ギフト?・・・おまえ、どうして」


 胸元から聞こえたギフトの声。

 彼女の方を見ると、両脚は千切れ飛び血の池が出来ていた。


 「待ってろよ!絶対助けてやるからな!!」


 爆発の瞬間に見た瞳はギフトのものだったのか。あの一瞬、彼女が俺を庇ってくれたのだろう。

 『束縛の魔眼』でギフトの時を止めて『謁見の間』へと移動する。

 そこには首が跳ねられたフェイクと、四肢が根元から破裂した様な損傷のラミ。ルードのものと思われる部位が転がっていた。


 デクレア!どこに居る!?

 いや、デクレアじゃ、回復が追いつかない。熟練度が低過ぎる。

 『回復魔法』が使えるデクレアを探すが、回復が間に合わないかと思い直し、新しく守護者を創る。


・ジャンル選択[陸]変更不可

・造形『兎』変更不可

・細部設定 技能『回復魔法(ブースト+100)』『魔法効果増加』『MP増加』

 消費MP137


・創造しますか?

«はい» «いいえ»


・名称『スペクルム』


 くそっ・・・ジャンルと造形が固定されてる。ダンジョンの自我には今まで助けてもらったが、こんな時に遊んでるんじゃないぞ!!


 仕方が無いのでコレで創造。方陣から出てきたのは月の色をした兎。

 ひょこ、ひょこ と俺の胸の中で止まっているギフトに近づくと、意味ありげにコチラを見た。


 あぁ、そうだ!『束縛の魔眼』が掛かってるんだった!何をやってるんだ。気が動転してる。


 魔眼を解除すると、スペクルムがギフトの傷口に鼻先を当てた。


 「うっ・・・」

 「ギフト!?しっかりしろよ!!今治してやるからな!」

 「・・・そんな泣きそうな、顔をしないでくださいよ。レイ様が見たら泣いてしまいますよ・・・?」


 俺がそんな顔をしているもんか!

 スペクルムを見ると片方の脚は治し終わっており、もう一方に取り掛かっていた。


 「すまない・・・ごめんなぁ、ギフト・・・・・・俺のせいでお前の脚は、もう」


 回復魔法がカンストしていても部位の欠損は治せなかった。元の部位が有れば違うのかもしれない。でも、今のこの結果は変わらない。


 ギフトは、両脚を失った。

 砦での戦いは何だったのか。俺の独断のせいだ。

 ミストーカー=デスだけでなく、ギフトの両脚も無くなってしまった。


 「マスター、貴方は慢心(まんしん)する癖が抜けませんね」

 「直すさッ!何があっても必ず・・・!」


 アバビム・・・お前のこの名は必ず忘れないだろう。

 俺の慟哭どうこくが『謁見の間』に響いた。

MP4422(-137)→4285

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